日本一!春の京都府立植物園で170品種の美しい桜をじっくり楽しもう
目次
京都府立植物園は、植物保有数が日本一1、公立の植物園としては入園者数が日本一です。
桜も日本でも有数の品種数を誇り、年々増えています。
早咲きから遅咲きまで様々な桜が咲き誇り、桜について学ぶには最適で、
難しいことを考えず、ただぶらぶらと桜を眺めながら歩くだけでも楽しめる場所です。
2024年3月には京都府立植物園のサクラ180品種が「ナショナルコレクション」に認定されました。
京都府立植物園の多彩な桜
見頃は3月中旬~4月下旬
- 3月中旬~下旬が見頃の河津桜など
- 3月下旬~4月上旬が見頃の大枝垂桜と
- 4月上旬が見頃のソメイヨシノ
- 4月上旬~下旬が見頃のサトザクラ
秋咲きや早咲きの品種が続々開花
130品種もの桜が順次開花する京都府立植物園では、秋から十月桜(ジュウガツザクラ)、冬桜(フユザクラ)、四季桜(シキザクラ)、アーコレード、子福桜(コブクザクラ)、不断桜(フダンザクラ)、エレガンスみゆき、ヒマラヤ桜などの秋冬咲きの桜が開花しています。
これらは、桜林の中にる秋咲きの桜コーナーにまとまって植えられています。
春になると、3月上旬ごろから早咲きの寒桜(カンザクラ)、椿寒桜(ツバキカンザクラ)、寒緋桜(カンヒザクラ)、河津桜(カワヅザクラ)、唐実桜(カラミザクラ)、啓翁桜(ケイオウザクラ)などが開花します。
3月中旬ごろには続いてオカメ桜、大寒桜(オオカンザクラ)、修善寺寒桜(シュゼンジカンザクラ)、細井桜(ホソイザクラ)が開花します。
これらは、主に園内北西部の桜林付近で見られます。
植物園の春の顔は「大枝垂桜」
続いて、3月末頃から見頃を迎えるのが、春の京都府立植物園の主役「大枝垂桜」です。
高さ14m、幅20mにも及ぶ大きな枝垂桜です。
有名な祇園枝垂桜の姪っ子にあたる樹齢約50年の桜です。
つまり、初代の祇園枝垂桜の孫にあたるということです。
園内中央の花菖蒲園で開花しています。
4月上旬にはお花見客で大賑わい
4月上旬になると、京都府立植物園でも最も本数の多いソメイヨシノが見頃を迎えるので
植物園内はたくさんのお花見客が訪れ、各所でゴザやビニールシートを敷いてお花見が行われています。
京都市民にとって定番お花見スポットのひとつです。
アルコールは禁止されていますのでご注意を。
南側にある正門から入ると、真っ正面に見えるチューリップと桜が定番の景色です。
桜シーズンのピーク時には1日2万人を超える入園者数があります。
ソメイヨシノは、温室前から桜林にかけてまとまって植えられていて、
ソメイヨシノの見頃にあわせて夜間ライトアップが行われます。
夜空に桜が美しく照らし出される光景は圧巻です。
2023年は3月25日(土)~4月9日(日)に開催されました。
ソメイヨシノの満開が史上最速の3月24日だったので、ライトアップ期間の前半がメインとなりました。
桜好きなら必見の「サトザクラ展」
4月中旬になると、ソメイヨシノや枝垂桜は散りはじめますが、かわってサトザクラや八重紅枝垂桜が見頃を迎えます。
八重紅枝垂桜は、桜林の東部で咲き乱れます。
そして、4月中旬に行われる京都府立植物園のおすすめイベントが「サトザクラ展」です。
2023年は4月14日(金)~16日(日)に開催されました。
京都府立植物園の正門付近にある植物園会館内で、園内にあるサトザクラを中心とした桜の切り枝が展示されます。
2023年は、驚きの200点もの桜が展示されると告知されています。
サトザクラ展のキャッチフレーズは「あなたの見たことのない桜、あります!」というフレーズで
200点もの桜が一同に会するというのは、全国でも京都府立植物園だけではないでしょうか。
サトザクラ展にあわせて行われる「桜散歩」もおすすめです。
京都府立植物園の職員が、1時間にわたって園内を回りながら、桜についていろんなお話しをしてくれます。
園内各所で咲く100種類もの桜を見ることができます。
参加費は無料ですが、各回30名の先着順になります。
桜に関するいろんな楽しいお話しや、植物園ならではの裏話まで、実物の桜を見ながら説明してくれます。
言葉の端々に、京都府立植物園の矜持を感じとれ、
桜についての素人から、それなりに詳しい方まで、みんな楽しめるのが「桜散歩」です。
桜について学ぶには、最適の機会なのでオススメです。
毎年、京都府立植物園のサトザクラ展の開催を楽しみにしています。
謎の桜の正体が判明
京都府立植物園では、様々な品種を未来に伝えていくために、様々な研究活動も行われています。
京都府立植物園に古くから伝わる「大原渚桜」という品種があり、
どこから来たのか、名前の由来は何なのかなど、謎につつまれていました。
それが最新の遺伝子調査により、大原の寂光院(じゃっこういん)に伝わる桜と同じものであることが判明しました。
いち早く珍しい新品種を導入
北山門付近には、桜品種見本園があり、その名のとおり多くの品種が植えられています。
品種の数も年々増えており、2019年には新たに「園里黄桜(ソノサトキザクラ)」が植えられました。
桜が好きな方だと、緑や黄色の桜として、御衣黄(ギョイコウ)や欝金(ウコン)は聞いたことがあると思います。
最近は須磨浦普賢象(スマウラフゲンゾウ)も増えてきました。
この園里黄桜は、第4の緑の桜として、2006年に品種登録されたばかりという新しい品種です。
京都でも京都府立植物園でしか見られないはずの珍種です。
5月はじめで長かった桜シーズンが終了
4月も下旬になると、世間ではもう桜の季節はすっかり終わった扱いになります。
しかし、京都府立植物園ではまだ桜が開花しています。
最後を飾るのは、梅護寺数珠掛桜(バイゴジジュズカケザクラ)や六高菊桜(ロッコウキクザクラ)といった花弁が数百枚ある菊咲きの桜と、カスミザクラ(霞桜)系のサトザクラである奈良の八重桜(ナラノヤエザクラ)です。
桜品種見本園では、5月に入ってもまだまだ咲いている姿を楽しむことができます。
ゴールデンウィークが終わるころには、京都府立植物園の桜シーズンもいよいよ終わりを迎えます。
10月に秋咲きの桜が開花するまではしばらくお休みです。
2023年の桜散歩
2023年の桜散歩は、4月14日(金)、15日(土)、16日(日)の各13時から行われました。
いちおう定員は各回30名で当日受付となっていますが、実際は制限はありません。
概ね30名分くらいの配布資料を準備しているというだけで、参加も離脱も自由です。
参加費は無料ですが、入園料は必要です。
桜散歩で説明いただいた内容を、かなり端折りながら紹介します。
植物園会館に集合
桜散歩の集合は、サトザクラ展が行われている植物会館前です。
前日の15日(土)は雨にたたられましたが、16日(日)は好天に恵まれました。
概ね定員どおりの30名程度が桜散歩に集まっています。
前述のとおり、定員はあってないようなものです。
受付も配布資料を受け取るだけで、配布資料も桜散歩中はほとんど使わないので、受け取らなくても支障はありません。
まもなく100年周年を迎える京都府立植物園
1924年に開園した京都府立植物園は、日本最古の公立植物園です。来年には100周年を迎えます。
植物園において歴史が長いということは、植栽されている植物の樹齢が長いということを意味しています。
開園当初に植えられた木々の樹齢は100年を超えています。
100年の間には、戦争やいろんなことがありましたが、今も苦難を乗り越えてきた100年超の木々がたくさんあり、
この木々たちが、他では決して真似できない京都府立植物園の宝です。
京都府立植物園の顔のひとつであるくすのき並木も開園当初に植えられたもので、樹齢100年を超えます。
常緑樹ですが葉の寿命が1年のくすのきは、ちょうど今が葉の入れ替わり期で、たくさんの落ち葉が落ちています。
桜を鑑賞するのは日本独自の文化ですが、海外でもワシントンのポトマックの桜並木はよく知られています。
日米親善のために日本から贈られた桜です。
このとき、桜の返礼としてアメリカから日本にハナミズキが贈られました。
植物園会館前にあるこの大きなハナミズキは、そのときに贈られた木であると言われています。
決して短命ではないソメイヨシノ
日本の桜の代表と言えば、ソメイヨシノでしょう。
江戸時代後期に作出されたソメイヨシノは、全ての個体が原木から接ぎ木などの栄養生殖で増えたクローンです。
全ての個体が同じ遺伝子を持っているため、同時期に一斉に開花します。
日本列島を南から北へと進む桜全線も、一部の例外を除いてソメイヨシノが基準になっています。
京都のソメイヨシノの標準木は、二条城にあります。京都府立植物園でも、独自に標準木を定めて経年観測しています。
2023年のソメイヨシノの開花日は3月17日でしたが、京都府立植物園の標準木は3日遅れた3月20日に開花しました。
例年、だいたい二条城から1日遅れて開花しますが、今年はやや間隔が空きました。
過去には、同日に開花したり京都府立植物園の標準木の方が早く咲いたなんてこともありました。
戦前戦中から、特に戦後にかけて日本中でソメイヨシノが植えられました。
その理由は花が美しいのと、成長が早い点が人気だったためです。
近年、戦後植えられたソメイヨシノは樹齢70年を超え、寿命を迎えたと思われて次々と伐採されています。
幹の腐朽が進んで倒壊の危険があるとして、全国で桜並木が一斉に伐採されています。
桜という植物は、腐朽菌に弱いという特徴があります。中でもソメイヨシノは特にそうです。
このように、樹齢何十年もたつと幹に入り込んだ腐朽菌によって幹の内部は空洞になってしまいます。
一見すると、幹がなくなり枯れる寸前のように見えるかもしれませんが、実はそうではありません。
もともと幹の中心部は死んだ細胞であり、生きた細胞は樹皮の近くにいます。このソメイヨシノはまだまだ元気です。
桜がこのような姿になると、倒壊の危険性があるとして伐採すべきという声が上がるようになります。
管理者としても万が一の責任回避のために、まだ元気なソメイヨシノを伐採してしまうのです。
桜は幹の内部が腐ると、腐った部分を土壌にして新たな根が生えてきます。
根はどんどんと大きく育ち、このソメイヨシノの腕の太さくらいの根は地面にまで到達しています。
この根はやがて幹となり、どんどん大きくなっていくことでしょう。
死にかけているどころか、まだまだぐんぐん育とうとしているのです。
人間がきちんと世話をしてやれば、ソメイヨシノは決して短命ではありません。
そのためには、土壌をふかふかにしたり肥料をやったりの手間もかかります。
このソメイヨシノも100年どころかもっと長く生きるかもしれません。
ソメイヨシノは種ができないという話を聞いたことはありませんか?
実際はそんなことはなく、ソメイヨシノにもこのように種ができます。
桜には、自家不和合性という性質があり、自家受精はできません。
全てのソメイヨシノはクローン増殖したものなので、ソメイヨシノ同士では種はできませんが
植物園のようにいろんな種類の桜がある環境では、ソメイヨシノにも種ができます。
様々な桜のもととなったオオシマザクラ
ソメイヨシノは、江戸時代後期に生まれた桜の園芸品種です。
エドヒガンとオオシマザクラを両親として生まれた桜です。
エドヒガンには、葉が出る前に花が咲くという特徴があります。
このオオシマザクラには、大きくて華やかな花が咲くという特徴があります。
両親のいいところを受け継いだソメイヨシノは、葉が出る前に大きくて華やかな花が咲くことから人気となりました。
オオシマザクラには、おしべが弁化しやすいという特徴もあり、さまざまな桜の園芸品種のもととなりました。
花の花びら(花弁)は、もともとおしべが変化したものです。桜の花弁は5枚ですが、オオシマザクラはさらに多くのおしべが花弁化する「弁化」が起こり、八重桜になりやすいのです。
花弁化しやすい特徴から、この福禄寿をはじめとする多くの園芸品種が生まれました。
オオシマザクラの葉をちょっとこすってみたらわかりますが、独特の匂いがあります。
桜餅の香りです。オオシマザクラの葉は、塩漬けにして桜餅に使われます。
花弁数が5枚を超える桜を八重桜と言いますが、中には花弁数が100枚を超える桜もあります。
この「菊桜」は100~180枚もの花弁があります。
一般に、花弁が多いほど開花は遅くなります。たくさんの花弁を造るのに時間がかかるからです。
例年の桜散歩では菊桜はまだつぼみですが、2023年はすでにかなり咲いています。
新しく導入された「法輪寺」
この「法輪寺」という桜は、今年植えられた桜です。すでに花は終わりかけていますが、京都府立植物園で初めて開花しました。
法輪寺の原木は、嵯峨の法輪寺にあります。法輪寺という桜は各地にありますが、中には原木とは異なる桜もあります。
もともと別の桜だったのが、法輪寺と混同されてしまったのかもしれません。
桜の品種というのはややこしくて、同じ遺伝子を持った桜が別の名前で呼ばれていたり、別の遺伝子を持った桜が同じ名前で呼ばれている例などが多数あります。
それらを調査研究するのも植物園の大切な役割です。
ただし、調査の結果同じ遺伝子を持った桜がいろんな名前で呼ばれていることが判明したからと言って、ひとつの名前に統一するのが正しいというわけではありません。
自然科学的には同じ桜であっても、人文科学的には別の桜なのです。
佐野藤右衛門ゆかりの桜
京都府立植物園には、「桜守」として知られる佐野藤右衛門氏ゆかりの桜もあります。
当代の16代目佐野藤右衛門氏はすでに90代半ばですが、今も精力的に活動しています。
山越にある自宅近隣のヤマザクラの種をたくさん集めてまき、美しい花が咲く桜を探すという作業を今も続けています。
すでに花は終わっていますが、この萌紅桜もそうやって発見され、京都府立植物園に移って来たばかりの桜です。
「萌紅」と書いて「めぐ」と読みます。
佐野藤右衛門さんのお孫さんの名前に由来するそうです。
他にも、今は京産大で研究者をしている三笠宮の彬子さんに由来する「彬姫」という品種もあります。
桜品種見本園の桜
日本の桜の品種の多くは、江戸時代に誕生しました。
園芸文化が盛んだった江戸では、桜に限らず多くの園芸品種が作り出され、
江戸で生まれた珍しい桜の多くは、武家屋敷やお寺に植えられていました。
明治維新で武士階級がなくなり、廃仏毀釈により寺院が大打撃を受けたことにより、多くの桜が失われようとしました。
桜のピンチを救ったのが、清水謙吾と高木孫右衛門という2人の人物です。
彼らは荒廃する庭園から多くの桜を荒川の堤防へと移植することで、桜を救いました。
20世紀初めには植物学者の三好学が荒川堤の桜と江戸時代の桜図譜を照合することで、多くの桜の品種を学術的に同定することに成功しました。
今も江戸時代からの品種が見られるのは、彼らの活躍のおかげです。
その後、震災や戦災、河川改修などで荒川堤の桜は失われましたが、多くの桜が荒川堤から移植されて再び全国へと広がったのです。
京都府立植物園も、荒川堤から桜が移植されたところのひとつで、
1924年に京都府立植物園の前身が開園したときには、荒川堤からも多くの桜が移植されました。
江戸時代には、江戸だけではなく京都でも多くの桜の品種が生み出されました。
しかし、京都では多くの品種が残るものの、江戸時代の文献に現れる桜との関係が明瞭ではない桜も多くあります。
京都府立植物園にも、由来のはっきりしない桜の品種が多くあります。それらの桜の正体を突き止めることも、植物園としての役割です。
京都府立植物園には、約170品種の桜が展示されており、バックヤードを含めると200を超えます。
公的な研究機関の中には、さらに多くの桜を所持している研究所もありますが、植物園のような一般公開施設としては京都府立植物園が日本一です。
有名な大阪造幣局でも品種数は約140品種です。
桜の園芸品種の多くは、人の手がなければ生きてはゆけません。
八重咲きの品種は種ができないため、接ぎ木などをしないと子孫を残してはいけません。
これらの多くの品種を守っていくことが植物園の大切な役割です。
最後にたくさんの桜の品種が植えられている桜品種見本園をご案内いただき、予定の1時間を30分近く経過して桜散歩は終了しました。
京都府立植物園について
2024年には開園100周年を迎える京都府立植物園は、年間入園者数が80万人を超える日本を代表する植物園です。
12,000種もの植物が広大な敷地に植えられており、桜や梅、つばき、花しょうぶ、あじさいなど四季折々の花々を楽しめます。
熱帯の植物が見られる温室もあります(別途入館料が必要です)。
戦前から全国の桜の品種が収集され、1939年には56種・品種の桜があったことが記録に残されています。
しかし、戦後に進駐軍が接収中に次々と伐採され、1957年に返還されたときには、ソメイヨシノ、ヤマザクラ、枝垂桜のほか、サトザクラ10本しか残されていませんでした。
入園情報
休園日 | 12月28日~1月4日 |
入園時間 | 9:00~17:00(受付終了は16:00) |
入園料 | 一般 :200円 高校生 :150円 中学生以下:無料 |
TEL | 075-701-0141 |
住所 | 京都市左京区下鴨半木町 |
アクセス | 地下鉄「北山」よりすぐ |
公式ホームページ:京都府立植物園
桜ライトアップ
開催期間 | 2023年3月25日(土)~4月9日(日) |
開催時間 | 日没~21:00(受付終了は20:00) |
会場 | 桜林ほか |
サトザクラ展
開催期間 | 2023年4月14日(金)~16日(日) |
開催時間 | 9:00~17:00 最終日は16:00まで |
会場 | 植物園会館 |
おわりに
桜について詳しく知りたいのであれば、京都府立植物園が最適です。
植物園らしく、ほとんどの桜に品種名や説明文が付けられています。
ここまで丁寧に書いてくれている桜スポットは京都でも他にはありません。
京都府立植物園以外の桜スポットでも、MKタクシーの観光ドライバーであれば、代表的な桜の品種であれば、おおむね把握しています。
MKの観光貸切タクシーなら、京都の春を心行くまで楽しむことができます。
観光・おもてなしのプロといっしょに一味ちがう京都旅行を体験してみませんか?
京都府立植物園の関連記事
- 京都府立植物園の桜守である中井貞氏の「京都府立植物園におけるサクラのエアースコップを用いた土壌改良作業」に、「植物保有数日本一」との記載あり[↩]