エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【204】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【204】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2007年7月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

「ブック検索」の日本語版サービスが開始された。インターネットの検索サイトとして、革新的な利便性を備えたサービスを次々と提供してきたグーグルが立ち上げた「夢のような」プロジェクトだ。
計画の「究極の目標」を簡単に言えば、古今東西、これまでに世界中で出版されたすべての本の中から、任意の文字列を瞬時に検索することができるというもの。本の題名や目次、あらかじめ登録されたキーワードだけではない。全文からの検索が可能で、検索文字列を含むページを画像でコンピューター画面に表示してくれる。

つまり、人類の知の遺産とも言うべきあらゆる書物の中から、人知れず埋もれていた、あるいは物理的には合理的にアクセスが困難であった情報が「それを必要とする誰か」によって発見、活用される可能性を開いたというわけだ。現在発売中の出版物も含め、誰もが簡単に目的の情報のありかを探し当てることができる。しかも、無料で。
もっとも、先に「究極の目標」「夢のような」と言ったのは、計画が始まったばかりで、そうなるのはかなり先の話、もしくは、そうなったらいいなとは思うけれど現実にはそこまでいかないかもしれない、という意味を含んでいる。

実際、少しだけ試してみたが、まだ情報の蓄積が少ないのだろう、こちらが検索したい語句ではなく、いかにもヒットしそうな語句を入力しなければあまりヒットしない。また、リストアップされても、定評のある基本的な文献ではなく、自費出版がめだつ。例えば「あなたの本が全国の提携書店に並ぶ」との謳い文句で急成長し、先頃「書店に並べられた様子がない」と著者から詐欺だと訴えられたS社の本とか……。

なるほど、自費出版の著者にとっては自分の本が誰かの目にとまる可能性が生まれるだろう。ただ、データベースに登録される本の数が増えてくれば、インターネットのサイトと同様、「誰かに見てもらえる可能性があると言えば確かにあるのだが、情報量が膨大なので結局、誰の目にもとまらない」ように、やがてはなるのかもしれない。しかし、その「可能性」こそが重要なのだ。
いずれにせよ、踏み出さなければ、夢には一歩も近づけないし、解決すべき問題点すら生まれない。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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