エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【184】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【184】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2006年9月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

「思わせる」という言葉が、書名に入っている本が何冊も出版されている。
例えば『「頭がいい」と思わせる文章術 仕事で結果を出す“稼ぐ書き方”』(竹内謙礼、PHP研究所)。「頭がいいと思わせる」なんて、そんなややこしいこと考えてないで、頭がいい人になれよ!と思うのだが、どうだろう。
あるいは、『たった1分でできると思わせる話し方』(樋口裕一、幻冬舎)。「できると思わせる」目的って、いったい何? 本当にできる人になろうとは思わないのだろうか。それともこれは「こちらができるということを相手にわからせる」という意味か。

『議論に絶対勝つ!最強の知的会話術――相手に「手ごわい」と思わせる鉄壁テクニック』(清水勤、日本文芸社)に至っては、「あなた、誰と戦っているんですか」という感じ。「手ごわい」と「思わせる」って、ねえ(笑)。しかも最強、鉄壁で、絶対に勝つ!……ですか。もしもそんな人が「相手」なら、それこそ「おぬし、『できる』な」ですな。
ともかく、実際には必ずしも「頭がいい」わけでなく、「できる」わけでなくても、そう「思わせる」ことによって何かの優位に立ちたい、物事を上手く運びたい、そんなことを密かに考えている人がこの世の中に増えているとしたら、何となく気味が悪い。

『「もう一度行きたい」と思わせる飲食店プロの接客!』(山田みどり、日本実業出版社)や『魅力的な営業マンになる技術――「あなたから買いたい!」と思わせる、モノを売るために絶対に必要なこと』(七田眞、総合法令出版)なら、理解できないこともない。というのは、相手に何らかの行動をさせるのが目的であり、文字通りそう「思わせる」ためのものだからだ。しかし、「頭がいい」「できる」は、こちらがそうであるかどうかの問題。相手にそう「思わせる」テクニックとは、ちょっと姑息な気がする。

その他に、『カリスマ男優の好きな相手をどうにも離れなくさせる心理戦術―必ず「もう一度!」と思わせる究極のテクニック』(加藤鷹、青春出版社)、『「やすらぎを与える女性」50のルール――“ずっと一緒にいたい”と思わせる魅力』(樺旦純、青春出版社)なんてのもある。もう、勝手にして!

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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