エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【170】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【170】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2006年2月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

ライブドア・ショックと呼ばれている、起こるべくして起こった事件。誰が何に驚いたのかは知らないが、大騒ぎである。
当初から「風説の流布」にしてはニュースの扱いが大きすぎた。粉飾決算やインサイダー取引など追加の容疑、あるいは幹部の「自殺」やホリエモンの逮捕をうけ、扱いの大きさに事件が後から追いついた。
で、“正々堂々”のホリエモンたたき。これでは、彼を持ち上げて大騒ぎしたころの単なる裏返しではないか。下手をすれば、逆にミセシメとの印象を与えてしまう。何も彼を擁護する必要はない。法を犯したなら裁かれる。ただ、それだけのことだ。

テレビでは連日、M&Aや株式分割で急成長したライブドアの「錬金術」を、まるで今回発覚した事件の解明のように視聴者に説いていた。もちろん、M&Aや株式分割そのものは犯罪ではないし、事件発覚以前に開示されていた情報だ。「法の抜け穴」「犯罪すれすれ」(つまり、犯罪ではない)などの(しかし、限りなく黒に近い)言葉を遣い、イメージを巧みに操るマスメディア。

こういうことを言うと「法に触れなかったら何をしてもいいのか!」と声高に言う人がある。が、そのセリフを言われるべきはホリエモンではなく、彼の尻馬に乗ってオイシイ思いをしようとしたマスメディアであり、政治家であり、ライブドア関連株でひと儲けしようとした投資家であろう。儲かればホリエモンは新世代の英雄で、損をすれば「自分たちは被害者」では虫がいいにも程がある。
たとえ法に触れなくても、他人様に顔をしかめられるような行ないをすれば、結果的にいい思いをすることが出来ない社会であるかどうかは、そのような行為をする人以外の人々の反応、行ないにかかっていると言えるのではないか。

ホリエモンは、「出る杭は打たれる」この社会で、あのようなやり方を選んだのだ。自らリスクを背負って。そして、結果として負けた。その姿勢は一部の人々の共感を得ることはできたが、それ以外の「非常に強い力を持つ」敵も作ったのだろう。法にも触れていたらしい。そして、打たれた。人は言う。「出る杭だから打たれたのではない、法に触れたからだ」と。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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