山の一家*葉根舎「葉根たより」【7】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【7】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年7月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

すっかり緑濃くなり、虫や鳥たちも元気に動きまわる、いのちの力をいっぱいに感じる季節になりましたね。
「蟷螂生」、「腐草為蛍」、かまきり、蛍も出てきて、「梅子黄」、「乃東枯」、「菖蒲華」、梅の実色づき、うつぼ草枯れ、あやめが咲き始める。
太陽と雨の力をいっぱい受けてぐんぐん伸びる草たち。
草刈が一番大変な時期です。
家周りや田畑の草刈りをしつつ、田植えの準備。うちの田植えは六月十日頃。
植える前の代掻きをゆっくり丁寧にすると草が生えてこないのですが、これが結構大変です。
普段は農作業しても服を上手に汚さない夫のげんも、この時ばかりは泥をつけて帰ってきます。
畑には、やっと大根や蕪ができてきましたが、人参は虫に食われてしまったりとなかなかです。
食卓には少しの野菜と野草、乾物で子供たちが飽きないよう、一ひねりしながらのお料理です。
夏野菜やヤーコン、里芋の苗は元気に育ち、定植をし、大豆も蒔きました。

<梅雨と夏至>

六月といえば、梅仕事です。
六月二十一日の夏至の前後二十日が梅雨季になるので、防腐効果、殺菌効果のある梅干しや梅酢をいただくと食中毒などを防げます。
梅酢はおむすびの手水や酢飯、ドレッシングに使うとおいしいです。
今年も梅干をたっぷり仕込んで、三年寝かせます。

そして、腎臓などの泌尿器や肺などの呼吸器に負担がかかりやすい季節なので、つゆ草や小豆をいただいたり、大股で歩いて呼吸を深くすることも大切です。
切り干し大根や高野豆腐、海藻などの乾物はお日様の力がたっぷり入っているので、陰の強い梅雨を乗りきるのにぴったりです。
保存食が傷みやすい季節でもあるので、作りためておいた保存食を食べきるのにも一石二鳥。
しかも我が家はまだ畑のお野菜が豊富ではないので、乾物利用は一石三鳥です!

そして、「夏至」の日は北半球で昼の時間が最も長く、太陽の力も一番強まる日。
プチ断食をするとその力を充電できるそうです。
大きな節目なので、身体も心も身の回りもスッキリさせて、新たな始まりにしたいですね。

<ひとまわり大きくなった子供たち>

中二の長男つくしは、職業体験が一週間ありました。
同級生は自宅から近い事業所を選ぶなか、遠くて人気のないごみの分別・リサイクルの事業所を「ふるさとをきれいにしたい」と言って、選んだつくし。
朝五時半に起きて、六時半のバスで中学校まで行き、そこから自転車で通いました。
山の下の町中で自転車に乗ることも初めてだったつくし、疲れながらも生き生きと過ごした一週間でした。
学年で一番小柄なのではじめは心配もされたようですが、働きっぷりに事業所の方々から褒められ、先生方からも学校では見えない一面に驚かれたようでした。
その後にあった町のクリーン作戦でも頑張ってくれて、村のみんなに喜んでもらえました。
いい自信につながったようでうれしいです。

小五の次男すぎなは同じ週に四泊五日の自然学校。
初めての家族と離れたお泊りに緊張したと思いますが、山登りや生き物調査、カヌーなど満喫し、お友達も増え、少したくましくなって帰ってきました。
兄弟の中で一番きっちりしているので、真剣に準備する様子がかわいらしかったです(笑)。

小1の三男かやは、ひらがなに苦戦中!でも、やる気満々で早く覚えたいようです。
意外と真面目なことが学校に行ってみてわかりました。

そして、お休みの日は兄弟で遊びもいっぱいするけれど、お手伝いもいっぱいしてくれます。
田植え前は畑や養蜂の仕事も重なり、一番忙しい季節。
そんなときの子供たちの手は本当にありがたいものです。ヤーコンと里芋の定植を二百本ほど、お父さんと頑張ってくれました。
でも、さすがに疲れてくると動きが止まってきます。
そんな時は、お小遣いアップ! プラス百円で途端に動きが速くなります。
お金で釣るわけではないけれど、ちょっとおまけがあったほうが楽しくできて、農作業がいい印象で残る、と言うげん。
子供の頃から農作業をして育ったげんの知恵です。(げんはお小遣いを全くもらえずに育ちましたが…)
その時その時、子供の雰囲気を見ながらご褒美を決めて、楽しくゆるやかに仕事の楽しさを知っていって欲しいと思っています。

こんな忙しい季節に私はといえば、七月の個展に向けて、山の野草をテーマにした絵の制作の日々です。
少し前までは私も農作業をしていましたが、絵の仕事が増えるにつれて、農作業が私抜きでもまわるようになったので不思議なものです。
「大森梨紗子展 ―めぐり めぐり いのち まう―」七月二十三日から三十一日まで、ギャラリー風(大阪市中央区北浜二―一―二十三 日本文化会館九階)にて開催いたします。
ぜひお越しください!

(2017年6月12日記)

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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