フットハットがゆく【234】「逃げ足」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【234】「逃げ足」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2013年5月1日号の掲載記事です。

逃げ足

先日、近所の小学生から「トカゲのシッポはなぜ切れるのか?」ということを聞かれたので、「敵から逃れるため」と答えました。
敵にシッポをつかまれても、そのシッポごと切れてしまえば、本体は引き続き逃走できます。
また、切れたシッポはクネクネと激しく動きますので、敵もそれに気をとられてしまい、本体を見失うわけです。
ちなみにトカゲのシッポが切れると、かなり間抜けな感じになりますが、しばらくするとまた生えてきて元通りになります。
僕のように子どもの頃トカゲを飼っていた者にすれば、トカゲのシッポが切れる理由はごく当たり前のように知っているのですが、その小学生はえらく感心していました。
ついでに、いろんな生き物の逃走劇を話しました。

タコ…逃げる時に黒い墨を吐きます。その墨は水中にぱぁっと広がり、敵は目の前に煙幕を張られた形になってタコを見失います。

イカ…イカも逃げる時にタコと同じように墨を吐きますが、墨の種類がタコとは違います。
イカ墨はタコ墨よりもアミノ酸が多く含まれており、粘性が強く、旨味も含みます。
イカを追いかける敵は、吐かれた墨が黒く細長く固まっているのでイカと見間違い、しかも口に入れると美味しくてイカを食った気になって本体を見逃す…という仕組みです。
タコ墨は料理にされないけど、イカ墨は旨味が強いから人間の料理にも使われる、というわけです。

イタチ…「イタチの最後っぺ」という言葉があるとおり、身に危険を感じたら強烈に臭いおならをして、敵をひるませて逃げます。
しかしまぁどういう進化の過程で、おならをして逃げる、という発想が生まれたのか、想像するとおかしいですね。
実際にはスカンクと同じで、おならではなく肛門から出す悪臭分泌液といわれます。

チドリ…肉食動物の目の前に、羽が折れたかのように傷ついたチドリがいたら、格好の餌食です。
しかし敵が近付くと、離れ、近付くと離れ、結局敵は傷ついたチドリをとらえることは出来ません。
なぜなら、これは擬傷というチドリの技なのです。
天敵が自分の巣に近付くと、卵やヒナは無防備…そこで親鳥はケガをしたフリをして敵の目の前に落ちます。
敵はケガをしたチドリをつかまえようとしますが、実際にはケガをしていないので、つかまえられず、どんどん巣から引き離されていきます。
子を守る親の知恵が生んだ誘導逃走というわけです。

さぁ最後に、「この地球上で一番逃げ足の速いのはどの動物か?」と考えますところ、地上最速がチーターとされているので、チーターから逃げ得るのが最速の逃げ足、となります。
チーターの狩りの成功率は意外に低く、50%を切るといわれるので、主に標的にされるインパラやガゼルの逃げ足は相当なものです。
でもまぁチーターにもライオンやハイエナといった天敵がいるわけで、チーターが逃げる時が一番速い、という結論になりますね。
時速100㎞で獲物を追うチーターの映像はよく見ますが、時速100㎞で逃げるチーターの映像も見てみたいものです。

 

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