エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【230】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【230】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2008年8月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

『デザインのひきだし』という雑誌がある。いまのところ5号まで出ている。これが結構おもしろい。
「本」が好きな人なら興味のある話題が毎号取り上げられている。

いま「本」という字にカギ括弧をつけたのは、本を「読む」のが好き、その「内容」がポイントということではなく、ここでは本という「物」に着目しているからだ。
実はこの雑誌、その名の通り、本や雑誌、パンフレットやパッケージなどをデザインする職業の人(または、目指している人)を対象に、用紙や印刷、紙の加工などに関する技術的な現場の情報を扱っている。
でも、そういった類の話は、本を作る人だけでなく本(を読むの)が好きな人の中にも、興味のある人が多いのではないだろうか。実際の読者層はわからないが、プロとその予備軍以外の一般の人も案外いるのではないかと想像する。

私は麺類の「そば」を食べるのが好きだが、そば屋を営んでいる人や開店を考えている人向けの専門誌を買ったりする。
老舗の取材記事をはじめ、新メニューの開発のためのアイデア、調理器具の新製品や店舗のインテリア情報などを読むのは楽しい(藍染めの作務衣を着て鉢巻して、自分でそばを打ったりは絶対にしようとは思わないが)。

もちろん、本に関しても、書店を経営している人向けの本を読んだりするのはおもしろい。万引き防止マニュアルなんてのもある。
そう、『デザインのひきだし』。毎号特集があり、例えば「金銀ピカピカな印刷・紙・加工テクニック」「まだまだ現役!活版印刷」「折り/抜き/紙の加工でこんなことできる!」「凸凹な印刷・紙・加工テクニック」「表裏差のある紙にうっとり」など。それぞれ、印刷や用紙の実物見本が綴じ込まれているのがこの雑誌の目玉で、本当に楽しい(初版限定)。

連載の「装丁道場」は毎号、漱石の『吾輩は猫である』という同じ課題で、何人かのデザイナーがそれぞれ工夫を凝らした装丁を競作するというもの。
また、人気装丁家の祖父江慎が、こんな印刷はできるか?と、印刷会社の担当者と実験を試みるというコーナーもある(不定期)。連載は他に「欧文書体物語」など。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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