エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【218】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【218】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2008年2月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

ねずみ構や利殖話による詐欺の被害者が再度狙われるという事件をニュースで耳にすることがある。「お金を取り戻すことが出来るんですよ。ついては、経費が必要……」などと、やるわけだ。
過去に騙された履歴のある人の、つまり「ふるいにかけられた確度の高い」名簿ということで、裏の世界では高値で売買されているのだろう。そういう人たちは、新たな別の儲け話に対しても、「今度こそ」は間違いないと考えるのかも知れない。
そもそも悪いのは巧妙に騙した犯罪者の方なのに、世間では「安易な投資話に乗る方も乗る方だ」と言う人が少なくない。それが、同じ人が二度ともなると「一度痛い目に合ったのに、懲りずにまた騙されるなんて、理解できない」という反応になる。

犯罪は別にしても、この「今度こそ」は曲者で、一度や二度で挫けないという信念、ポジティブな用い方がある一方で、ギャンブルなど、もう意志でやっているのか依存しているのかわからない人たちがこの言葉を口にしたりする。あるいは、本屋に行けば「今度こそ」が溢れている。
『片づけられない女のためのこんどこそ!片づける技術』とか『今度こそ本気で英語をモノにしたい人の最短学習法』とか『今度こそ成功するダイアリー式ダイエット』とか。そう言われてみれば、あるある!と思われる人も多いのではないだろうか。
もっとも、検索してみると、タイトルに「今度こそ/こんどこそ」が入っているのは意外に多くないが(それでも数十冊はある)、本の腰巻(帯)やジャケット(カバー)の折り返しの売り文句、「はじめに」や「あとがき」に「今度こそ……と思っているあなたへ」などという文章が含まれる本を含めると、かなりあるに違いない。

みるみる痩せる、聞くだけで身につく英会話、大儲けできる資産運用、挫折しない整理術、サルでもわかるパソコンなど、おなじみのテーマが並ぶ。ようするに、うまい話に繰り返し乗ってしまうのは他人事じゃないということか。
みなさん「今度こそ」にはくれぐれも御用心。というより、そう、みんな「今度こそ」が大好きなんだ。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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