エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【211】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2007年11月1日号の掲載記事です。
本だけ眺めてくらしたい
ブックオフで、ケータイ片手のセドラーをしばしば見かけるようになった。一年ほど前までは、たまにという感じだったが、最近は本当によく見かける。
セドラーとは、せどりをする人のことを今どきの軽薄な言い方で呼んだもの。「せどり」は元々、古書店業界人の用語で、相場より安く売られている古本を店頭で客として見つけ購入し、転売して利ざやを稼ぐ行為、またその人のこと。
ブックオフの登場で、素人のせどりが現われたが、膨大な古書の相場などが頭に入っていなければできないし、転売先が古書店しかなかったので利ざやも小さく、極めて限られた人しかやらなかった。
ところが、ネットオークションや、ネット書店アマゾンで古書を扱うマーケットプレイスの普及で、誰でも古書を購入者に直接売れるようになり、せどりが増えた。そしてついに、ケータイに本のISBNコードを入力すればマーケットプレイスで付いている価格をリアルタイムで検索できるサービスを提供する業者のサイトが現われるに至って、本なんて日頃ほとんど読まない若者まで、せどりをするようになった。
百円均一コーナーでケータイ片手に手当たり次第にコードを入力すればいいのだから知識不要。千円で売れる本を見つければ差額の九百円が粗利ということになる(実際は手数料などが引かれるが)。
ただ、アマゾンに出品してもすぐに売れなければ在庫を抱えることになるし、出品者が競合すれば値崩れする。それでも、うまくやればちょっとした小遣い稼ぎになるのだろうが、やはりリスクはつきまとう。
そこで考えだされたのが予約注文リストの活用。出品者がいない本に、逆に買う側が並んでいるのを示したデータで、リストアップされている本をブックオフや古書店で見つけて仕入れることが出来れば、購入希望者が提示している金額で即、売れる。ほぼ確実に儲かるというわけだ。
この予約注文リストを検索出来るケータイ・サイトもある。リストは、マーケットプレイスの大口出品者としてアマゾンに登録(月間4,900円)した業者に提供されるもので、このデータを二次利用してサイトを運営、ユーザーから料金を得て商売にしている。
世に金儲けの種は尽きまじ。説明だけで紙幅が尽きた。続きは次回。
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)