自給自足の山里から【154】「ブラクだからどうした!」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【154】「ブラクだからどうした!」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2011年12月1日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

ブラクだからどうした!

平家ホタルのエサがいっぱいの田んぼ

晩秋の山村は、赤い夕焼けもあっという間にすっと暮れゆき、さみしい。稲刈り済み、水が張られ、赤く映えていた田んぼもひっそり。フクシマ原発事故から8ヵ月過ぎても、未だ、放射能が全国全世界にばらまかれて、私らは世界の厄介者と思うと気が重い。
高校で生物を教えている上田さんが、我が不耕起の田んぼの生き物を調べてくれる。「ここは、本来の田んぼの姿がある。田にしかない平家ホタルのエサがたくさんいる。ヤゴやゲンゴロウやガムシなどいろいろいる」と教えてくれる。
アメンボならぬ逆アメンボ(丁度アメンボを水面でひっくり返した姿で、水中でコウモリのように水面にひっついている)にはびっくり。つくし(7歳)と母親のりさ子らは「すごい!」と感嘆の声をあげる。来春は、全ての原発が廃炉されているなかで、カエルの大合唱が聞かれ、ホタルの乱舞が見たいものである。

選挙で“橋下はブラク”と

夕暮れのなか、電話が鳴る。「もう秋じまいしたか。米のできはどう」と、大阪の友人である。「鹿猪にやられず、いろんな生き物と元気に育った。うちのお米はおいしい」と言うと、「楽しみにしているよ。そうそう、大阪は選挙や。“橋下はブラク”と週刊誌(新潮・文春)に書かれているが、読んだか」と。「市の図書館で読んだ。すでに“ブラクで暮らしていた”と議会で発言しているし、今更なんで」の思いである。
友は、「橋下の教育政策らには反対。だけど原発批判の姿勢が、財・官・学らの原子力村の尻尾を踏んだからといって、マスコミを使って選挙を有利にするためブラクを利用するのは許せない」と言う。
人のいのちを何とも思わない原子力村の連中は、平然とサベツする。
橋下は、“ブラクだからどうした!”と返している。この姿勢は若者たちの共感・支持を得ているという。

そりゃ、大森がブラクだからよ

2歳の子をかかえた知人の若夫婦が、放射能を逃れて、我が村に自給自足の暮らしがしたいと移住。また、友人が、来春には家を建て移り住む。
息子のケンタ・げんは結婚し、同じ村で自給自足の百姓。6人の孫がいる。そして、この2軒が加わって、「村が活性化してうれしい」と元住民は言う。
25年前、幼い子連れて家族で移住してきた時、古老は「私が死んでもこの村は残る。あんなにうれしかったことはない」の言葉が忘れられない。市は、人口が増えると歓迎・支援する。
ところが、村に残る者から「大森の知人友人らの移住には、市がどう言おうと、村として反対」なんて言う。移住して四半世紀が過ぎたが、未だよそ者差別かの思い。
だが、「そりゃ、お前がブラクだからよ。ブラクの者の影響が強くなることを嫌ってのことよ。許してはならん。若者たちのためにも、しっかりせよ」と友は厳しい。

山村にあっても、大地から離れて

新聞で、この村は「近いうちに廃村になる」と伝えられる。山国日本の源・山村を、廃村にすることなく、縄文百姓の手で再生したいと移住。25年前のこと。
村人の署名もあり、閉校されていた山の分校が、ケンタひとりで再開。その後、知り合いの3軒が移住する。村として拒むなんてことなかった。私は本・テレビなど(注)で、ブラク出身を明らかにしている。
当時、村人の多くが米作りしていた。「にわか百姓は大変やなあ」といわれたもの。畦でひと休みしながら、ワイワイ話して、色々教えてもらった。だが残る9軒の誰も米作りしていない。
「それじゃ。自然豊かな山村でも、大地から廃れてしまったら、金・金の都会感覚になってしまうなあ」と、都会で野菜作りしている知人は言う。
いま、村に残る者の平均年齢は76歳くらい。1軒を除き、子どもは帰ってこない。このままでは、元住民はほとんどいなくなる。

平家落人伝承とブラク

我が村には、平家落人伝承がある。室町期に、熊野比丘尼の高野聖・巫女などの宗教者(天候・病気などみる生活技術者でもある)によって、平家落人伝説が伝えられ、村を維持する精神的柱とされていく。農耕社会化するなか、山の文化を守らんとするものでもあった。そして、今も自分らは、平家という貴族・武士の子孫だと信じている人たちがいる。
かの友は「自分らは、貴い者の子孫で、ブラクの者は賤しいという蔑視サベツ感を持つ連中は、大森が子や孫、友人知人らと楽しく暮らすのが疎ましいんや。今時、こんなことまかりとおると思わん。あわてんときちんと糺していくことや」と励ましてくれる。
サベツは自分の利益・立場・思いなどが問われ、崩れゆく時にあらわになる。

注:
「六人の子どもと山村に生きる」(麦秋社)
「自給自足の山里から(北斗出版)
フジテレビ「我ら百姓家族」①~⑤

 

あ~す農場

〒669-5238

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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