エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【171】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【171】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2006年3月1日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

京都BAL5階から8階にジュンク堂書店がオープンした。丸善とブックファースト京宝店が閉店して、河原町商店街の路面の大型書店がなくなり行き場がなくなっていただけに、正直ほっとしている。
大型書店だけではない。これまでに、河原町周辺の書店がいくつ消えていったことか。駸々堂はもちろん、学生時代によく行った京都書院、小さいながら個性的な品揃えだった文祥堂書店(地下に入る前)、能楽の本が充実していた河原書房、山の本なら河原町四条を少し東に行った海南堂(寺町商店街に文庫本専門のレクラム海南堂があったっけ)、河原町六角に並んでいたサワヤ書店とミレー書房(この二軒の棚も味があった)、その近くに駸々堂の漫画専門店があったのを憶えている人もいるだろう(河原町三条上がるに移転したが、それもなくなった)。河原町三条から新京極へ入ってすぐの右手にも二、三軒あったなあ。ひとことずつコメントをつけて、すべての書店を挙げてゆきたいが紙幅が足りない。

その昔、休日は散歩でこれらの本屋をすべてまわっていた。大げさでなく本当に。本を探すのが目的ではない。散歩をするのが目的で、仮の目的地として書店を通過ポイントにしていたのだ。もちろん本も買う。インターネットの出現なんて考えもしなかったあの時代、店頭での偶然の出会いが本との出会いだった。散歩は河原町通りの書店だけではなかった。北は寺町二条上ルの三月書房から南下して、メディアショップをまわり、四条通りのジュンク堂書店、ブックストア談へ。新刊書店は肩慣らしに過ぎない。そう、これにプラス古本屋。寺町通りの古書店も減ってしまった。

読書離れ、コンビニエンスストアの増加、大型書店の進出など、理由はいろいろあるだろうが、ともかく小型書店がまず消えていった。そして今や大型書店すら市内中心部から次々と退場しようとしている。映画館もそう。土地の値段が高い場所は、短期的な流行にあわせて商品、業種、業態を変えれば、もっと儲かる商売がある、ということなのだろう。繁華街という資源から、より高い価値を産み出さなければ社会的な損失というわけだ。でも価値って何?

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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