山の一家*葉根舎「葉根たより」【59】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【59】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2021年11月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

 

葉根たより

リリリリ…ジージーコロコロ…スズムシ、キリギリス、マツムシ、コオロギ…秋深まり、月を愛で、虫の音に耳を傾ける季節、山の葉も少しづつ色づいてきました。

「菊花開(きくのはなひらく)」「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」菊の花が咲き始め、戸口で秋の虫が鳴く頃。
旧暦の重陽の節句は今年、十月十四日。新暦ではなく、旧暦の頃にやはり菊科のお花が満開になりますね。菊茶や菊酒、そして今年こそは菊の着綿をしてみたいと思います。

秋の様々な紫に染まる花々、その線の細い様に響き合うような虫の音、鮮明な夕焼け、この季節の移り変わりを少しでもしっかりと感じていたい毎日です。

<瑞々しい旬>

今年も実り、収穫させていただけること、ありがたいかぎりです。
九月中旬から十月下旬にかけ、品種に合わせたタイミングで稲刈りをしていきます。よく実りましたが、その分、野ウサギにかじられたり…毎年違うところが自然相手の醍醐味ですね。

畑は子供たちと二〇〇株の白菜の定植、その虫取り、大根の間引き(瑞々しい間引き菜の美味しいこと!)ニンニク植え、マコモタケ、里芋、新生姜、人参の収穫をしています。
その根菜類を土鍋でじっくり煮て、茹でた間引き菜をさっと和えると、美しい色合い、身体に染み渡る旬の味に細胞がふるえるようです。

 

<子どもたちの手>

秋の子供たちは、稲刈りや村のお宮さんの草刈りで大活躍です。

稲刈りでは、三男かやが上手にどんどん刈り、次男すぎなは重たい米袋を一輪車で軽トラまで運んでくれます。
長男つくしは草刈機で田の周りの草刈り、村のお宮さんの草刈りでも草刈機をまわしてくれ、大助かりでした。
八軒の小さな村、お年寄りが多いので、草刈りに来れるのは五名の年配の方、わが家五名、春から地域おこし協力隊で越してきてくれた家族五名の計十五名。
六名が子供なので、子供たちの手も貴重な力なのです。

うちの子は巣立ってゆく年に近づいてきたので、これからどうなるか…そんな想像をする歳にもうなるなんて、子育ては大変で長いようで早いものとは本当ですね。

 

<山と星と波>

ある朝、夫げんが蜂の様子を見に行くと、分蜂していました(巣に新しい女王蜂が生まれると、古い女王蜂が巣にいる働き蜂を連れて引っ越ししてしまうこと)。
山の少し上の方にいるのを見つけ、蜂の箱を携え、背丈ほどのススキ原をかき分け、なんとか蜂が群がっている木のもとへ到着。
蜂箱へ女王蜂と大体の蜂を入れ込み、元の場所へ。翌日も蜂箱の中にちゃんといたので一安心。幼虫を襲いにスズメバチがやってくることもあり、毎日の点検は欠かせないのです。

私は、秋の風景から目が離せない毎日。秋の一年の中でも最も移り変わりが早い季節に感じます。
日々の美しき変化をしっかり見つめ、聴いていたい。
最近は、うちの藤袴にアサギマダラが十数匹、毎日やってきています。たくさんの蝶が舞う光景は、まるで桃源郷。
藤袴の周りには、ミゾソバ、タデ、ゲンノウショウコ、ミズヒキソウなど、秋の草花が波のように星のように揺れて輝いています。

そして、日に日に紅葉してゆく草木の葉。傾いてゆく陽射し。できることならば、ただただ見つめ、描いていたいです。

 

<からだのーと>

寒くなると腎臓と膀胱の機能が低下します。腎臓の働きを悪くし、身体を冷やす果物、生野菜、甘いものや膀胱に負担をかける動物性食品はなるべく控え、身体を温めるゴボウや蓮根、人参、生姜、自然薯などの根菜類をじっくり火に通して頂きましょう。
腎臓の働きをよくする海藻、腎臓の形に似ている小豆もおすすめです。

冬に向けて、身体を整えてゆく季節。気持ちも内面へ向かいやすい時期なので、じっくりと身体を対話して過ごしてみましょう。

(2021年10月10日記)

 

葉根舎

haneya8011@gmail.com

HP:https://www.yamano-haneya.com

 

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

 

葉根たよりのバックナンバー

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