山の一家*葉根舎「葉根たより」【66】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2022年6月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
風薫る新緑の山々、五月のはじめ、山藤の葡萄のような甘い香りに誘われ、山を登ってゆきました。
すると、少し開けた場に大きな山藤の木々、たくさんの花が咲き誇り、蜂たちの羽音が響いていました。
「蚯蚓出(みみずいずる)」
「竹笋生(たけのこしょうず)」
土の中で眠っていたミミズが地上に出てくる頃。
他の虫たちは春先に目覚めますが、マイペースなミミズは夏から活動を始めます。
土を肥やし、豊かにしてくれるありがたい存在です。
そして、初夏の味覚の竹の子も出てくる頃。土から出るか出ないかぐらいが食べ頃です。
今年は豊作で、猪たちが食べてもまだ掘ることができてありがたいです。たくさん獲れたら薄く切り、天日干しをして保存食にもしています。
<ゆっくりすくすくと>
今年も種籾を脱芒機にかけ、唐箕にかけ、温湯消毒をし、浸水し、二十日ほどで根が出ました。
そして、苗箱に播き、畦塗りをして整えた苗代へ並べました。
小さな芽が出たのは五日目頃。苗の成長を見守りながら、田んぼの荒起こしを小さなトラクターで。
畔切り、畦塗りは鍬一本で。田植え前が一年で最も忙しく、気の抜けない季節です。
畑では、子供たちとじゃがいも植え。
自家採取の種から育てている、夏野菜の苗も可愛らしく大きくなってきました。
でもビニールハウスのない畑では、まだまだ野菜の少ない季節。ミツバやセリ、フキ、タケノコ、ノビル、ノカンゾウ、アサツキなどの野草、山菜たちに助けられ、食卓を彩る日々です。
<移り変わる日々>
雪解けと共に山へ入り、チェンソーで伐倒、我が家の奥の広場へと何往復も運び、玉切りし、斧で割っていく薪作り。
その工程の音は、毎年雪が解けると響き始めるので、春の始まりの音に感じます。
ですが、割り終わるのはまだまだ。
長男つくしが家を出たので、次男すぎなと割り、三男かやは割った薪を積んでいきます。
薪を割る側で、山桜、山藤と季節と共に、移り変わってゆく景色。毎年同じようで、少しずつ毎年深く見つめられるようになることが嬉しく感じます。
<音の秘密>
山は静かだけれど、耳を澄ますとたくさんの音に溢れています。
様々な鳥のさえずり、岩の隙間から響くタゴカエルの唄、水や風の流れ、葉のさざめき、蜂たちの羽音…そう、蜂たちは花々の開花と共に忙しく飛び回っています。
そして、今年も美しい色と香りの山桜の蜂蜜を分けていただきました。
今は山藤の蜜が蜂箱に詰まっているようです。
蜂蜜の酵素など素晴らしい成分をきちんとお届けできるよう、加熱せず、蜂たちが羽ばたきで水分を飛ばしてくれることをしっかり待ってから収穫しています。
研究者の方にも多様性にとても飛んでいるとおっしゃっていただいたこの土地の花々の蜂蜜、ご興味ありましたらホームページをご覧になってみて下さい。
<からだのーと>
6月21日は、太陽エネルギーの最も高い夏至。プチ断食をし、太陽エネルギーをたっぷり充電しましょう。
そして、夏至の前後二十日間は梅雨期となります。防腐・殺菌効果のある梅干し、梅酢を活用し、食中毒などを防ぐように心がけて。
切り干し大根などの乾物は、湿度の高い時期に身体の水分調整をしてくれるのでお勧めです。
<展示案内>
2022年7月1日から11日は、宝塚文化芸術センターで開催される「未生空間ism展」へ参加します。
日本人の自然観から生まれる絵画空間をテーマにした展覧会です。
手塚治虫記念館の向かいにあります。ぜひ合わせて涼みにお越し下さい。
暑くなってゆく季節ですが、よき風が吹き向ける日々となりますように。
(2022年5月10日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
MK新聞について
「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。
ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。
MK新聞への「あ~す農場」の連載記事
1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)