MKタクシーの交通安全教育「警察官の安全運転講話」2009年度編
目次
MKタクシーでは、毎月全営業所で各2回前後「全員業務集会」を開催しています。
全ドライバーが、いずれかの会に出席しなければなりません。
全員業務集会では、様々な来賓を招いての講話を賜っています。
今回は、2009年度の全員業務集会で行われた警察署の交通課警察官による安全運転講話を紹介します。
慣れた道ほど気をつけるバイクと車の視線の違い
2009年7月21日 宇治城陽営業所
毎朝車で通っているT字の交差点。いつもは他の車もなく、横道から軽く減速して進入。一方、毎朝バイクを走らせている新聞配達員。こちらも他の車を見たことがなく、歩道から交差点に進入。次に起こったのは・・・出会い頭の事故です。いつも走っているからといって油断してはいけません。
また、よく起こる事故としてバイクと車の右直事故があります。なぜこのような事故が多いのでしょうか。要因の1つにバイクと車の視線の違いがあります。バイクは転倒の不安から、路面状況に集中して視線は前方に広くとりがち、右折してくる車に気が付きません。車は横に広く視線をとるため、バイクに気が付きますが、「止まってくれるだろう・・・」と思うのです。
危険はどこに潜んでいるか分かりません。夏、交通量が増える時期ですので、特に安全に意識して運転してください。
京都府宇治警察署 交通課 交通総務係長
高齢者と子供への注意と夏場の健康管理を
2009年7月22日 洛西営業所
京都府下の交通事故は昨年に比べ減少していますが、死亡事故は増加しています。宇治署管内においても、今年はすでに昨年1年間の死者数5名に並んでいます。高齢者やこれから夏休みに入り子供にまつわる事故が多く、裏通りや自宅から500m以内に気をつけるなど高齢者や子供の特徴を知って事故防止につなげてください。
運転では前方を広く浅く見て、ハンドルを持つ腕から肩をリラックスしてください。タクシー運転中は手を挙げる方を探して横を見たりしますが、前方と歩道、2つのことを同時にすることは本来難しく、急ぐと視野も狭くなります。雨天時にも視界は悪いので安全な速度で運転してください。
また、夏場は就寝時に寝汗で目が覚めたりと、健康面でも疲れがたまりやすくなります。仕事に疲れを残さないように気をつけてください。
京都府西京警察署 交通課長
運転に際しては管理をしっかりと
2009年7月23日 宇治城陽営業所
6月1日から飲酒運転に対する行政処分が大幅に強化されました。例えば酒酔い運転の場合、35点で即免許取消となります。私が注意してほしいのは「二日酔い」です。アルコール分解にかかる時間の表などがありますが、体調やアテによって変わってきます。「休んだから大丈夫」と思っていても、自覚がないだけということがあります。検知メーターを活用したり、家族に確認をしたりしましょう。
交通事故は誰も得しません。加害者にも被害者にも家族があり、絶対に涙を流す人がいるのです。以前、被害者の奥様が、交通事故でほぼ跡形もなく炎上した車両から主人のものがないかと必死で探されたことがありました。キーホルダーの鎖を見つけ、号泣したその姿は忘れられません。その事故は過労によるものでした。運行管理をする方もドライバーも体調管理をしっかり行ってください。
京都府宇治警察署 交通課長
追突・出会い頭・右折事故を防ぐには
2009年7月27日 山科営業所
昨年の事故を形態別に見ると、追突事故、出会い頭事故、右折事故が上位を占めていることが分かります。これらの事故を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
追突事故を防ぐには、速度を出しすぎず、十分な車間距離を保ち、そして交差点への進入では無理をしない、という気持ちが大切です。また、見通しの利かない交差点での出会い頭事故を防ぐには、交差点手前での停止、そして少し車の先端を交差点に出して他車に認知してもらえる状況をつくり、安全確認をしてから進行するよう心掛けてください。右直事故は、右折の判断間違いによって起こる事故です。対向車との距離感、車両の大きさによる目の錯覚に注意し、対向車の速度やデイライトを活用し、やはり無理に交差点に進入せず気長に待ちましょう。
安全運転についても気を抜くことなく、無事故の営業を継続してください。
京都府東山警察署 交通課 交通総務係長
一瞬のゆるみ・たるみが事故につながる
2009年7月28日 上賀茂営業所
京都府内の交通事故発生状況は、7月末日現在(概数)で発生件数・負傷者数とも前年比マイナスですが、死者数は58人と昨年対比プラス13人となっています。その中で女性が市バスに引きずられて死亡という事故が北警察署管内でありました。場所は西賀茂車庫前。全ての乗客を降ろし、目の前が車庫という状況で恐らく一瞬のゆるみ・たるみがあったのでしょう。注意していれば、見晴らしのいい運転席から横断歩道を渡る女性の姿が見えないはずはないと思いますが、10mも引きずってしまいました。
また、走行中の携帯電話も注意が散漫になるため危険です。前を見ていても、頭は話に集中してしまっています。運転できているというおごりや油断が事故につながってしまいます。
その他、始業前点検や予測運転をしないなど安全運転のための取り組みをお願いします。
京都府北警察署 交通課長
しっかり前を見て安全運転を
2009年7月31日 上賀茂営業所
過去に京都で連続で起きたタクシーによる死亡事故は3件。そのうち2件は深夜路上で寝転がっている人をはねたというものです。まさか道路に人が寝転がっているとは思わないでしょうが、しっかりと前を見て運転していれば避けることができる事故でした。
安全運転センターのとある有名なテストドライバーの運転する車に同乗した話を聞いたことがあります。その運転はつまらないほど基本に忠実で、安全確認に徹した運転だったそうです。「どんな鮮やかなドライビングテクニックを披露してくれるのかという期待は、まんまと裏切られました」と笑っておられました。
交通事故を避けるのに必要なのは、運転のうまい下手ではありません。しっかり前を見て安全確認を怠らない、当たり前のことを行うことが重要なのです。プロドライバーの皆さんも安全第一でお願いします。
京都府北警察署 交通課 交通総務係長
習慣が事故を防ぐ
2012年8月3日 伏見営業所
「至急! 至急! 現場に急行せよ」。私には夢に出てくる事故があります。駆け出しの頃、無線で呼び出されて急行した事故現場。交差点にはトラックと原付、そしてヘルメットが転がっていました。
事故の状況は、トラックが信号待ちをしていたところに後ろから来た原付が左前方で停車。トラック運転席からは死角になって、信号ばかり見ていた運転手はそのままトラックを走らせて原付に接触したうえに、後輪で乗り上げたのです。ちょっとした不注意が、若い女性の命を奪いました。
剣道では「残心」という言葉があります。打ち込んだ後も油断せずに相手の反撃に備えることが求められるのです。相手の車・バイクは、敵ではないけれど、いつどこから現われてくるか分からない、そういった心構えで事故を起こさない「防衛運転」の習慣を付けることが大切です。
京都府伏見警察署 交通課 総務係長
一秒間の判断が一生ついてくる
2009年8月4日 山科営業所
私は事故班として、実際の事故現場をたくさん見てきました。事故が起きるか起きないかは、ほんの1秒程度の間にする判断にかかっています。しかし、そこで起きたことは一生ついてきます。皆様は運転のプロですので充分安全運転に気をつかっていることと思いますが、実際、元タクシーの運転手の方が危険の少ない場所で事故を起こされたこともあります。
人間が一秒間に処理できる情報量というのは限られています。視界から入る情報量の多い都会では、一瞬で多くのものを見て判断しなければならない分、田舎に比べ事故が起きやすくなります。京都市内は特に自転車・バイクが多く、これらが関わる事故は、事故全体のうち半数以上にもなります。予測のしづらい事例も多々あるとは思いますが、1秒1秒気を抜かず、予測運転と確認を徹底してください。
京都府山科警察署 交通課 総務 警部補
三条通の「ナゼ?」“意識”が事故を防ぐ
2009年8月5日 西五条営業所
皆さんは日頃安全運転を心がけられていると思いますが、万が一交通事故を起こした時には、すぐに車を停め、まず負傷者の救護にあたってください。また、よくある事例として、小さな子にぶつけてしまった場合など、子供は「親に怒られるかも」と思って立ち去ってしまいます。そのような場合でも、後々のもめごとを防ぐため必ず警察に届け出てください。
右京区は古い街並みが多く、狭い道路が多いです。三条通は歩道もない上に自転車やバイクの往来も激しいですが、意外にも今年に入って人身事故は1件もありません。車も歩行者も危ないという認識を持って「意識」しているからでしょう。逆に一番事故が多いのが一見安全そうな丸太町通です。「大丈夫だろう」と思われる場所にこそ大きな危険が潜んでいます。標識を守り、リスクを低くする運転に努めてください。
京都府右京警察署 交通課長
目の特性を理解する
20098年8月10日 西五条営業所
運転に必要な情報の多くは「目」から入ってきます。しかし、人の目は一方に集中していると、もう一方は見えないという特性があります。一方しか見ないで判断してしまう「思い込み」は運転上危険です。目線を動かし必要な情報を早くキャッチすることが大切です。
目に関しては、錯覚にも注意が必要です。人の目は、大きいものは近くに、小さい物は遠くに見えます。大型トラックは近くに感じ、バイクが遠くに感じるのはそのためです。また、夜間のテールランプやヘッドランプの高さによっても錯覚が起こります。ライトが高い位置にあると遠くに感じます。特に注意すべきはバイクです。車体が小さく、ライトも車より高い位置にあることが多いので、遠くに見えても意外と近くに来ているのです。
目の特性を理解し、必要な情報を的確に得て、安全運転に努めてください。
京都府右京警察署 交通総務係長
自分で防げる違反はしない
2009年8月11日 伏見営業所
交通事故では、自分や周りの人たちが、今すぐにでも加害者・被害者となる可能性があります。事故を防ぐには、その場その場の的確な状況判断が必要です。例えば、見通しの悪い交差点では、少しずつ前に出て安全確認をすべきですし、道路状況によって、制限速度にこだわらず適切なスピードで運転すべきです。京都では朝・夕での高齢者の事故が多く発生しているので、この時間帯は特に注意するようにしてください
私は、片側2車線以上の大きな道路では、走行車線を走るようにしています。急な右折などの飛び出しがあった場合、走行車線を走っていれば事故を防げる可能性が高いからです。このように、自分で防げるような事故や違反はしないようにしてください。スピードの出し過ぎや、飲酒運転などは、自分が気をつけていれば起こることのない違反なのです。
京都府伏見警察署 交通課長