南天と千両と万両はどう違う?冬を彩る縁起の良い赤い実
目次
花の少ない冬場に赤い実で彩りを添える南天、千両、万両。
いずれもお正月飾りとしても使われる縁起の良い植物です。
しかし、どれが南天でどれが千両でどれが万両かわからないという声もよく聞きます。
この3種は、実は冬に赤い実をつけるという共通点があるだけで、実は芽のレベルで異なるかなり遠縁の植物です。
ちょっとしたコツさえわかれば、簡単に識別可能です。
どこに実がついているのかを確認することがポイントです。
南天と千両と万両はどんな植物か
まずは、南天、千両、万両の概要を簡単に説明します。
南天(ナンテン)とは
南天について
南天は、キンポウゲ目メギ科ナンテン属の植物です。
メギ(目木)とはあまり聞きませんが、日本では京都を含めて東北南部から九州までに分布する植物です。
南天と同じく、熟すと赤くなる小さな実をつけます。
メギ科には、他にイカリソウなど15属570種が含まれます。
南天は東アジアに広く分布していますが、もともと中国原産という説もあります。
古くに栽培用として中国から持ち込まれた南天が、自生化したのかもしれません。
赤い実が美しい南天には、白い実の白南天もあります。
実がブドウの房のように垂れ下がるのが特徴です。
南天の葉や実は漢方薬としても利用されます。
750年ほど前の「明月記」という本の中にも南天が登場します。
その頃から大切にされてきた理由は、よく知られている鬼門の厄除けだけではありません。
その実が薬用として、せき止め・口内炎・うがい薬などに使用されたり、薬は防腐・殺菌効果があるので腐敗止めや厄除けとしてお赤飯の上に乗せられたり、また口に入れ噛むと乗り物の酔い止めにもなったりと、置き薬のような役割をしていたからのようです。
他にもナンテンには、手洗いの横には必ず植えられていて、水がない時には手を清めるために葉が使われた、また昔の手洗いは外にあり転ぶことも多かったため咄嗟に木を掴んで難を逃れた、といった話もあります。
京都では鞍馬寺のお祭りにナンテンが使われる習わしもあります。
ナンテンは常緑低木で、中国・日本を原産地とし、耐寒性のある強い植物です。
赤い実をよく見かけますが、他にも白実や細葉で色づいた葉の錦糸ナンテン、小葉で紅葉が美しい姫ナンテン、丸葉で赤葉のおたふくナンテンなどがあります。
初夏の頃、白い花を咲かせます。雨が多い季節のため花粉が流れ結実しにくくなるので、傘・ビニールなどで雨よけをするとよいでしょう。
ナンテンの英名は「聖なる竹」「天国の竹」で、西洋での花言葉に「私の愛は増すばかり」「福をなす」「良い家庭」などがあり、贈答品としても使われているようです。
南天が縁起物である理由
冬には珍しい南天の赤い実が縁起物として好まれています。
加えて、ナンテンが「難を転ずる」に通じるため、お正月の縁起物として特に親しまれています。
千両(センリョウ)とは
千両について
千両は、センリョウ目センリョウ科センリョウ属の植物です。
同じセンリョウ科には、ヒトリシズカやフタリシズカなど75種が属しています。
センリョウは東南アジアを中心とした亜熱帯・温帯に広く分布する50~90cmの常緑小低木で、日本では中部以西の暖地山林の樹下に自生・群生しています。
記録では、江戸時代中期頃より庭木として栽培され、明治中期頃より葉姿の美しさから切り花として用いられ、現在は季節の生花として欠かせないものになっています。
万両は古くから多くの園芸品種が作出されましたが、千両はほとんどなく、赤実・黄実・小葉・大葉ぐらいで全て天然、人工的に作出されていません。
しかし、両者とも縁起物として重宝されているのは同じです。
植え込み場所としては、明るい半日陰(常緑樹などの下)で、暖地性のため、寒風の当たらないような所とします。
植え込む時は、できるだけ大きな穴を掘り、掘り上げた土に堆肥や腐葉土などを混ぜ、深植えにならないようにしましょう。
実が黄色の黄実の千両(キミノセンリョウ)もあります。
実が上向きに付くのが特徴です。
千両が縁起物である理由
千両は、もともと仙寥(せんりょう)と書かれていました。
江戸時代に赤い実が縁起物として好まれるようになり、千両の字があてられるようになりました。
万両(マンリョウ)とは
万両について
万両は、ツツジ目サクラソウ科ヤブコウジ属の植物です。
同じサクラソウ科には、サクラソウやシクラメン、ヤブコウジなど観賞植物としても人気の植物を含めて2,600種が属しています。
万両は東アジアから南アジアにかけて広く分布し、日本では関東以西に自生しています。
実が白や黄色をした園芸品種もあります。
サクランボのように2つセットで垂れ下がるのが特徴です。
万両が縁起物である理由
千両よりも多くの赤い実をつけることが万両という名前の由来です。
赤い実が縁起物として好まれてきました。
十両について
十両とも呼ばれるヤブコウジや百両とも呼ばれるカラタチバナも万両と同属です。
十両は、北海道から九州、東アジアの木陰に分布する常緑小低木で樹高は20cm前後、実は葉の下に着け群生します。
万葉集などにはヤマタチバナ、ヤブタチバナの名称で見られるヤブコウジ。
江戸時代、葉に斑が入った物が人気となり多くの品種が作られ、明治の頃には投機の対象にもなって、1鉢が家1軒分ほどの価格になったこともあるようです。現在では40種類ほどが受け継がれています。
十両の栽培方法としては、場所は半日陰の戸外で、土は水もちが良く、水はけの良いものとし、地植え時は堆肥や腐葉土を入れて適湿を保てるようにします。
肥料は春と秋に施しますが、多肥にならないように注意しましょう。
繁殖は、種まきを熟した実で春に、さし木を梅雨の頃に、株分けを春と初秋に行います。水は土が乾ききらないように与えましょう。
十両の薬効として、秋に根を採取し乾燥させたものが、利尿・咳止め・解毒作用があるともいわれています。
京都の上賀茂神社では、お正月に厄除けとして「卯杖」を飾る習わしがありますが、その材料の中の一つにヤブコウジが使われています。
南天と千両と万両の違い
前述のとおり、南天(キンポウゲ目)と千両(センリョウ目)と万両(ツツジ目)は、目の単位で異なります。
被子植物の双子葉類であることは共通ですが、例えるなら同じ哺乳類でもヒト(霊長目)とゾウ(長鼻目)とライオン(食肉目)くらいの大きな違いがあります。
一致しているのは、赤い実をつけるという点だけなので、識別は非常に簡単です。
実の付き方が違う
赤い実の付き方は、以下の違いがあります。
- 南天 幹の先端にブドウの房状に付く
- 千両 葉の上に固まって付く
- 万両 葉の下にサクランボのように2つセットで垂れ下がるように付く
思い切って簡潔にまとめると、「南天=ブドウ」「万両=サクランボ」「千両=実が上向き」です。
それでも千両と万両のどっちがどっちかわからなくなるという方には、このように覚えてください。
- 千両より万両の方が多い。だから軽い千両の実は上に付き、重い万両の実は下に垂れ下がる
- 万両→1万→10,000→0が偶数個→サクランボの連想
葉も違う
実の付き方で一目瞭然ではあるのですが、念のために葉の違いも説明しておきます。
- 南天 流線型の赤から緑色の薄い葉
- 千両 縁がノコギリ状の大き目の緑色の葉
- 万両 縁がウェーブした小さ目の深緑色の葉
実よりもわかりにくい説明ですが、特に覚える必要はありません。
実を見たらわかります。
南天と千両と万両の違いの練習問題
南天と千両と万両のすべてが同じところに植えられていることは珍しくありません。
以下の写真の①,②,③は南天か千両か万両です。
どれがどれだかわかりますよね?
南天と千両と万両の違いの練習問題正解は、次のとおりです。
① 南天
手前右にあるブドウの房状の赤い実がぶら下がっているのが「南天」です。
② 万両
中央の葉の下にサクランボのような実がぶらさがっているのが「万両」です。
③ 千両
奥やや下の実が葉の上についているのが「千両」です。
正解できましたか?
もうばっちりですね。
おわりに
草花の少ない冬が見ごろの南天、千両、万両。
いつも観光客であふれる京都も冬はすいています。
人が少ない京都を堪能するなら、冬がおすすめです。
MKの観光タクシーなら、四季に応じたおすすめ観光スポットをご案内できます。
春秋とはうって変わって静寂な庭園や、冬ならではの雪景色など、冬にこそ楽しめる観光スポットも京都ではたくさんあります。
ぜひ、MKタクシーで冬の京都を堪能してください。