えっこれが朝顔?京都府立植物園の夏の風物詩「朝顔展」の変化朝顔
目次
京都府立植物園の夏の風物詩である「朝顔展」が、2023年も7月28日(金)から8月1日(火)まで開催されます。
びっくりするような大きな花を咲かせる「大輪朝顔」や、とても朝顔には見えない花や葉をした「変化(へんか)朝顔」がたくさん展示されます。
朝顔展たった5日間だけの午前中のみ開催なのでお見逃しなく。
取材日は2017年7月28日と2021年7月30日。
2024年は8月1日(木)~5日(月)に朝顔展が開催されます。
朝顔展とは
京都府立植物園について
1924年に開園した日本を代表する植物園です。
京都府民の休日のお出かけ定番スポット。
広い敷地をぶらぶら歩けば、植物が約12,000種。
桜や梅、つばき、花しょうぶ、あじさいなど昔から親しまれてきた植物のほか、バラ園など左右対称の造形美が楽しめる洋風庭園など変化に富んでいます。
早朝開園
京都府立植物園では、7~8月にかけての計1ヶ月間弱ほど、早朝開園が行われます。
早朝開園では、朝顔だけでなく蓮やスイレンなど、朝のうちが最も美しい植物の姿をゆっくりと楽しむことができます。
朝顔展期間の5日間は7:00開園、その他の期間は7:30開園です。
夏の暑さで知られる京都だけあって、日中は暑くてつらいですが、早朝なら涼しいうちにお出かけを楽しむことができます。
京都府立植物園の早朝開園はおすすめです。
入園情報
休園日 | 12月28日~1月4日 |
入園時間 | 9:00~17:00(受付終了は16:00) 朝顔展期間中は7:00開園 |
入園料 | 一般 :200円 高校生 :150円 中学生以下:無料 朝顔展も入園料が必要 |
TEL | 075-701-0141 |
住所 | 京都市左京区下鴨半木町 |
アクセス | 地下鉄「北山」よりすぐ |
朝顔展情報
開催期間 | 2024年8月1日(木)~5日(月) |
開催時間 | 7:00~12:00 |
会場 | 植物展示場(北山門付近) |
夏の早朝開園
京都府立植物園は朝9時開園ですが、以下の期間は早朝開園が行われます。
2024年7月5日(金)~7日(日)、20日(土)~21日(日)、26日(金)~28日(日)、8月10日(土)~11日(日) | 朝7:30開園 |
2024年8月1日(木)~5日(月) | 朝7:00開園 |
公式ホームページ:京都府立植物園 Kyoto Botanical Gardens/京都府ホームページ
朝顔展について
2024年で65回目となる歴史ある京都府立植物園の朝顔展。
早朝に開花し、お昼にはしぼんでしまうはかない朝顔の花は、古くから日本人に愛されてきました。
朝顔のもっとも美しい時間に楽しめるように、朝顔展の期間中は京都府立植物園は早朝7時から開園され、正午まで様々な朝顔が展示されます。
朝顔展の会場は北山門近くの「植物展示場」です。
毎日朝顔が植えられた鉢の入れ替わりがあり、金曜日から火曜日までの5日間で延べ1,000鉢の朝顔が展示されます。
朝顔展レポート
京都府立植物園の北側にある北山門を入って150mほど南へ進んだところにある「植物展示場」が朝顔展の会場です。
北大路側の正門からは400mほどあります。
京都府立植物園で特別展のほとんどが行われる正門近くの「植物園会館」とは異なるところで朝顔展は行われますのでご注意を。
朝顔について
まずは植物園らしく、朝顔について学びます。
朝顔の原産地はどこか
もともと日本には分布していなかった朝顔は、奈良時代ごろに中国から薬として渡来し、種が下剤として使われていました。
京都府立植物園での説明によると、朝顔の原産地は中南米とされています。
ここでまず大きな疑問が。アメリカ大陸との交流が始まったのは、1492年のコロンブス以降です。
10世紀にはバイキングが北アメリカに到達していたとはいえ、さらに前の8世紀になぜ中南米原産の朝顔が日本に存在したのでしょうか。
調べてみると、朝顔の原産地は中国からヒマラヤという説と、中南米という説が有力です。
もともとは前者が有力でしたが、近年は近縁のソライロアサガオなどが自生する後者が有力視されているそうです。
京都府立植物園でも、近年有力視されている中南米原産地説を採用しているのでしょう。
では、いったい朝顔はどうやって奈良時代の日本へとやってきたのでしょうか。
もっとも有力な説は、南米から太平洋を越えてポリネシア経由で中国、日本へと渡来したという説です。
実際、南米からポリネシアへと渡来した植物として、サツマイモが挙げられます。南米原産のサツマイモは、先史時代から太平洋にちらばる島々で栽培されてきました。
南米とポリネシアに古くから人的な交流があったのかどうかは、諸説あって今も明らかにはなっていません。
人が人為的に運んだという可能性もありますが、海流によって運ばれてきたあるいは海鳥が運んできたという説も有力とされています。
アサガオも同様のルートで太平洋の島々を経てアジアへと到達したのかもしれません。
ただし、ポリネシア経由説も考古学的に実証されているわけではなく、そうとしか考えられないという程度の仮説です。
いったい朝顔がどこからどうやって日本へとやってきたのか、それだけでも大きなロマンがあります。
江戸時代に園芸植物として花開いた朝顔
京都府立植物園の朝顔展では、奈良時代に中国から日本へと伝わったという原種に近い朝顔の「北京天壇」も展示されています。北京郊外にある天壇公園でコムギの遺伝研究で知られる木原均氏が採取した朝顔です。
日本に渡来した当初の朝顔は、青色のみでした。
奈良時代に日本へと渡った朝顔は、長らく漢方薬として利用されていました。
江戸時代になって園芸ブームが起こったときに、朝顔の美しさに注目が集まりました。
美しさと品種改良の容易さによって、観賞用の園芸植物として朝顔が盛んに栽培されるようになりました。
品種改良により、青色に加えて様々な色は作り出され、形も多彩な日本独自のたくさんの朝顔の品種が生まれました。
1759年に描かれた伊藤若冲の動植綵絵「向日葵雄鶏図」でもヒマワリとともに絞り咲きの朝顔の姿が見られます。
変化朝顔が大ブームに
特に19世紀前半に朝顔は黄金時代を迎え、京都、江戸、大阪で盛んに栽培され、多くの変化朝顔が作出されました。
大規模な品評会も行われ、大関、関脇といった朝顔の番付表も作られるほど人気でした。
明治維新後は園芸ブームの収束により、多くの朝顔の品種が失われてしまいました。
記録にだけ残っており、今も再現できていない変化朝顔も多数あります。
明治半ばには再び朝顔に脚光があたり、大輪朝顔が生み出されました。
変化朝顔に代わって、現代にいたるまで大輪朝顔が人気を集めています。
戦争中には多くの朝顔の品種が失われましたが、戦後には朝顔愛好家らによって朝顔の品種の保存が行われています。
近年は朝顔の人気が高まりつつあり、新たな品種も作り出されています。
手前(北側)に大輪朝顔、奥(南側)に変化朝顔が展示されています。
植物展示場は、屋根こそあるものの壁はありません。
真夏の屋外ですので、朝一番の涼しい時間がお勧めです。
大輪朝顔 (たいりんあさがお)
まず、現代において全盛を迎えている「大輪朝顔」の展示です。
大輪朝顔は、黄葉種(きばしゅ)と青葉種(あおばしゅ)にわかれます。朝顔展では、黄葉種から順に並んでいます。
青葉種ほど大きくは咲かない黄葉種の大輪朝顔は、大きさよりも朝顔の花の色と模様を楽しみます。
「盆養作り」と「数咲き作り」という仕立て方をされます。
つるを伸ばさないように仕立てられた盆養作りの朝顔は、花の色と模様の鮮明さ、端麗な容姿を楽しみます。
朝顔展開催期間中は、毎朝7時の開門直後に「銘花」の選定が行われます。
並べられた朝顔たちをひとつひとつチェックしながら選定します。
色や形までひとつひとつ詳細にチェックが行われます。
「秀逸」に選ばれた数咲き作りの大輪朝顔(黄葉種) 京都府立植物園 2017年7月28日 撮影:MKタクシー花の美しさや数、大きさ、バランスなどを総合的に判断します。
数咲き作りの朝顔は、多くの花を咲かせ、花の配置のバランスと花色の鮮やかさを楽しみます。
多くの朝顔の花を同時に開花させることは難しく、開花のタイミングをあわせるところが腕の見せ所とのことです。
花が少なくとも5つは最低なければなりません。
大輪朝顔の場合は大きさが重要で、ひとつひとつサイズを測定します。
いずれも共通して、花に裂け目が入っていないかどうかなども細かくチェックされます。
ああでもないこうでもないという話しを近くで聞いているだけでも楽しいものです。
朝顔の花は半日でしおれるので、毎日「本日の銘花」は変わります。
朝顔展開催中は毎朝銘花の選定が行われます。
もうひとつの青葉種の朝顔は、大輪の名の通り、巨大な花が特徴で、大きなものだと直径20cmを超えるといいます。
とにかく1mmでも大きく咲かせるのがポイントなので、朝顔の花の色や模様はそれほど問われません。
しかし、いかに朝顔の花が大きくても花弁に切れ込みが入ると観賞価値が大きく下がるため、とても繊細な管理が必要になります。
2021年7月28日の「本日の銘花」に選ばれた朝顔は、18.5cmもの大きさです。
「秀逸」に選ばれた朝顔の花も17.5cmもあります。
京都府立植物園では朝顔の作品を毎日入れ替えるため、タイミングによっては本当に20cmを超えるという大輪の朝顔に出会えるかもしれません。
銘花に選ばれた朝顔以外にも、色とりどりの大輪朝顔が並びます。
変化朝顔(へんかあさがお)
いよいよ、本記事の主役である変化朝顔の登場です。
「へんげ」ではなく「へんか」です。
「へんか」は、物の状態や性質が変わることを意味し、「へんげ」は神や霊、魔物などが姿形を変えることを意味します。
今では大輪朝顔に一歩譲るものの、18世紀前半に大流行したのが変化朝顔です。
「変わり咲き朝顔」とも言います。
一般的な朝顔とも大輪朝顔とも異なる、とても朝顔とは思えない姿形が魅力です。
変化朝顔は、突然変異により得意な形状の花や葉をした朝顔を掛けあわせ、長い時間をかけて作り出されました。
生存競争上は不利な変異であることが多く、朝顔の品種の維持はとても大変な作業です。
メンデルの法則が発見される前のことですが、経験上優性遺伝子や劣性遺伝子などを理解し、様々な掛け合わせによって多彩な品種がつくられました。
種ができないほど変化した変化朝顔は、見た目が正常に育った兄弟を掛け合わせることで、4分の1や16分の1の確率で変化朝顔が出現するのです。
江戸時代に作出された多くの変化朝顔のうち、既に失われてしまったものも少なくありません。江戸時代には黄色い朝顔があったという記録もあります。黄色い朝顔は現代でもまだ完全には再現できていない幻の朝顔です。
しかし、多くの変化朝顔は、愛好家の手により何とか維持されてきました。
采咲き系(さいざきけい)
様々な系統に分けられており、まずは「采咲き系」の変化朝顔。
花弁がナデシコの花のように細く切れ、武将の使う采配に似ていることがその名の由来です。
葉も縮緬(ちりめん)状に変異しています。
確かにナデシコみたいな花を咲かせる朝顔です。
変化朝顔の中では、まだかろうじて朝顔の面影を残しています。
車咲き系(くるまざきけい)
花の中央が噴き上げ風車のようになることが「車咲き系」という名前の由来です。
この花を見て朝顔だとはとても思えないでしょう。
そして、葉もほとんど針状になっています。
これでは満足に光合成もできないでしょうから、車咲き系の朝顔をここまで育て上げるのはさぞかし大変でしょう。
獅子咲き系(ししざきけい)
そして究極が、この「獅子咲き系」の朝顔です。
もはや花のどこがどうなっているのかも分かりません。
不規則に裂け、細長い管のようになっているのが、獅子のたてがみに見立てられているとのこと。
そして、葉の形状は「龍の爪」と表現されます。
正木物(まさきもの)
ここまで出てきた変化朝顔はもはや種ができないくらい変化した「出物(でもの)」といわれる変化朝顔です。
あの獅子咲きの朝顔の花が正常に受粉できるとはとても思えないので、当然でしょう。
一方、ここからはきちんと種ができる「正木物」といわれる変化朝顔です。
出物ほど劇的な変化はありませんが、普通の朝顔とはかなり見た目が異なります。
朝顔の花だけではなく、葉も観賞のポイントになります。
正木物は、品種名ではなく個体の特徴を一定のルールで列挙する方法で区別します。
例えば、「青水晶斑入孔雀葉石化粟生紫浅切咲」という変化朝顔は、
青 ― 葉の色
水晶斑入 ― 斑の状態
孔雀葉 ― 葉の形状
石化 ― つるの性質
青紫 ― 花の色
浅切咲 ― 花の咲き方
という特徴を表しています。
花よりも葉が先に来ることからも、葉の重要性がよくわかります。
撫子(なでしこ)のような切れ込みが入った花を咲かせます。
竜田葉という葉の形状です。形がモミジに似ているため、モミジの名所である竜田川に由来した名前です。
南天葉という葉の形状です。それほど似てはいませんが、南天の葉のようなことが由来です。
正木物の朝顔は、花だけでなく、葉も注目です。
変化朝顔は花以上に葉もすごい変化を見せてくれます。
枝垂れ(しだれ)
花も葉も普通の朝顔と変わりはありませんが、枝振りが異なる変化朝顔もあります。
「枝垂れ」は、茎が巻き付く性質を失って枝垂れる朝顔です。
昭和初めに東京で発見され、広がっていきました。
茎が帯のように平べったくなる変異を帯化といいます。
朝顔の茎とは信じられないような不思議な茎です。
花よりも茎が見どころという変化朝顔です。
おわりに
小学生の自然観察日記の定番で、ほとんどの人が一度は育てた経験があるだろう朝顔。
赤や紫、ピンク、白など多彩な花を咲かせることは誰でも知っているでしょうが、実は朝顔はとても奥が深い花なんです。
日本人にとって最も馴染みが深い花といっても過言ではない朝顔について、改めて学ぶことができる京都府立植物園の「朝顔展」は、一度は行ってみる価値があります。
変化朝顔は何度見ても朝顔には見えません。毎日展示替えがあるので、1日だけではなく、毎日訪れても飽きないでしょう。
夏の京都府立植物園で見られる花々
朝顔展のころに京都府立植物園で見られる花を紹介します。
桔梗(キキョウ) 見頃:6月下旬~10月上旬
蓮(ハス) 見頃:7月中旬~8月中旬
百日紅(サルスベリ) 見頃:7月下旬~9月上旬
木槿(ムクゲ) 見頃:7月~8月
芙蓉(フヨウ) 見頃:8月下旬~9月下旬
早朝アクセスについて
京都府立植物園の朝顔展は、7時から12時までの実施ですが、朝顔が最も美しいのは朝7時の開門直後です。
終了直前の12時近くだと、かなりの花が既にしぼんでしまっています。
開催期間は毎年、1年で最も暑い時期なので、気温の面からも涼しい早朝がおすすめです。
早朝7時に京都府立植物園まで行くのは大変だという方は、24時間営業のMKタクシーが便利です。
MKタクシーなら迎車料金も不要です。
MKタクシーのご予約は075-778-4141まで
便利な配車アプリも是非ご利用ください! → MKスマホ配車
京都観光には観光貸切タクシーもおすすめです。
京都の夏の花おすすめスポット記事
紫陽花(アジサイ)<見頃:6月中旬~7月上旬>
桔梗(キキョウ)<見頃:6月下旬~10月上旬>
蓮(ハス)<見頃:7月中旬~8月中旬>
百日紅(サルスベリ)<見頃:7月下旬~9月上旬>
木槿(ムクゲ)<見頃:7月~8月>
芙蓉(フヨウ)<見頃:8月下旬~9月下旬>