エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【306】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【306】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2013年10月1日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

NHK総合テレビで現在、平日23時30分から放送しているニュースで、視聴者がインターネットを通じて投稿したコメントを画面の下部に次々と表示しているのを鬱陶しいと感じている人は多いことだろう。
私は以前、この時間帯のニュースはNHKを見ていたが、2012年4月にこの趣向を始めた前身のニュース番組から、一切見ていない。
それどころか、テレビをつけた時にちょうどその番組をやっていたり、チャンネルを変えている途中にほんの一秒でも目に入りかけたら、反射的に視線を画面の上半分にそらしてコメントを見ないようにしている。

決して大げさに言ってるわけではない。
このことについて私は、自分から誰かに話題をもちかけたことはない。
本当に見たくないからそうしているだけで、私が見なければそれで済むからだ。
それに、世間一般でも不評に違いないから、いずれやめるだろう。
ただ、メンツもあるだろうから、ちょうど一年やって、年度末の改編で番組ごと終了ということにするのではないか、おそらくそうなる、と期待していた。

実際、NHKが公表した報告書では、昨年四月の一か月間のこの番組に対する反響332件の内、「好評意見」は25件、「厳しい意見」は229件で、ネット投稿に関して「賛否両論」があったとしている。
つうか、ほとんど「否」じゃね?(ネット投稿風に言えば)。

ところが、今年の春の番組改編では、別番組として名称や放送時間は変更したものの、ネット投稿を画面下に表示する形式は継承された。
そう言えば報告書では、「厳しい意見」が「当初は」多く寄せられが、投稿の内容から分析して、二週目以降は番組のスタイルに「慣れてきた様子がうかがえます」と、上から目線と巧みなレトリックで正当化していた。
今になってこの話を書こうと考えたのは、友人と雑談していた時、たまたまその女性が、「うちの母は、テレビの端に紙を貼って見ている」と言ったのを聴いて可笑しかったからだ。
地デジ化の際、「双方向機能」と大層に導入したものの、たいして活用されていない四色ボタンより、件のような表示をボタンでオフできるようにしてくれたほうが、よっぽどありがたかった。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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