フットハットがゆく【244】「空しきスポーツ①」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【244】「空しきスポーツ①」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2014年3月1日号の掲載記事です。

 

空しきスポーツ①

スポーツというのは筋書きのないドラマですから、観戦に行って、いい試合に当たればいいですが、そうでないときもあるわけで、今回は空しかった思い出を書きます。

ボクシングで思い出すのは、長谷川穂積選手が連続KOで世界王者を防衛していた頃、これは是が非でも生でKOパンチを見たいと思い、3万円くらいのリングサイドのチケットを買って、仕事もその日のために無理して調整して、超ワクワクドキドキで試合を観戦しました。
そして期待通り、長谷川選手のKOパンチが飛び出したのですが、僕の席からはレフェリーの背中がジャマで見えなかったという…。
「どこ突っ立っとんねんボケ!」と思いました。
僕は3万円出してレフェリーの汗ジミのついたシャツの後ろ姿を観(み)に行ったわけで、とても空しかったです。

プロ野球で思い出すのは、昔、京都の西京極に阪神タイガースの試合を観に行ったときのこと。
当時のエース星野投手のスローカーブに敵のヤクルトの選手が気持ちいいくらいバッタバッタと三振に沈んでいきました。
ただし味方も点が入らずスコアボードに0が並びました。
試合観戦のときはビールをよく飲みますから、7回くらいにガマンできなくなってヤクルトの攻撃のときにトイレに行きましたら、歓声がわ〜とわきまして、席に戻って聞くと、古田捕手のソロホームラン。
結局、0対1で阪神の負け。
「打つなら打つで先に言えボケ!」と思いました。
敵のホームランとはいえ唯一の点を見損ねた空しさといったら…。

もう何年も前ですが、中学校の頃はイギリスに住んでいて、いとこのお兄ちゃんがうちに居候していたので、ウィンブルドン・テニスの決勝を観に行こうということになりました。
当時の決勝はビヨン・ボルグ対ジョン・マッケンローという屈指の好カードでした。
中学生の僕と大学生のいとこの感覚では、当日券が2千円くらいで売っていると思っていたのですが、会場に行くと決勝戦のチケットなど半年くらい前に完売、当日はダフ屋が30万円くらいでチケットを売っているということがわかりました。
しようがないので会場の周りをうろうろしてキーホールダーを買って帰ってきたときは空しかったです。
「テレビで見とけ、ボケ!」と自分に思いました。

大阪に世界陸上が来たとき、このときも3万円くらいのいい席のチケットを買いました。
真夏でうだるような熱さだったのを覚えています。
3万円の席だから、少しは大きな座席なのかと思いきやぜんぜん普通で、ただ中央の前の方というだけの小さなイス。
そして僕の横に座ったのが、「こいつ絶対、元砲丸投げの選手やろ!」というようなごつい人。
酷暑とその人の圧迫感と汗臭さでぜんぜん陸上に集中できませんでした。
ボルトとかも目の前を走ったはずなのですが、リレーで大勢が走ってきて、ものすごいスピードで団子のように通り過ぎたので、ボルトがどこを走っているのかほとんどわかりませんでした。
「もっと見えるようにゆっくり走れ! ボケ!」と思いました。
3万円も出して空しかったです。(つづく)

 

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