フットハットがゆく【145】「ああ罪、清し」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【145】「ああ罪、清し」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2007年11月16日号の掲載記事です。

ああ罪、清し

僕は昭和44年(1969)生まれで、現在38歳である。
昭和44年というと、映画『男はつらいよ』が始まった年である。
全48作あり、最長映画シリーズとしてギネスブックにも載っている。
主人公はもちろん、渥美清演じる「寅さん」こと車(くるま)寅(とら)次(じ)郎(ろう)。

僕はとにかくこの「寅さん」シリーズが大好きである。
実は、僕が生まれて初めて観た映画もこのシリーズなのである。
それは昭和51年冬に封切られた第18作『寅次郎純情詩集』であった。
マドンナは京マチ子、壇ふみ。
この時僕は小学校2年生で、父親から「トラさんの映画を観に行く」といわれ、てっきり虎のキャラが出てくるアニメか何かだと思い、わくわくして映画館に行った。
しかし虎はいっこうに出て来ず、がっかりした思い出がある。
それから時を経て大学生になった頃、偶然テレビで寅さんシリーズに再会し、そこから一気にファンになり、レンタルビデオでシリーズ全作制覇したのである。

僕が寅さんシリーズに感情移入しやすい理由がもう一つある。
それは寅さんの甥っ子、諏訪満男の存在である。
ご存知寅さんの妹さくらの息子で、映画の設定上、僕と同い年になる。
このシリーズはだいたい年に2作品が公開され、時代背景もリアルタイムで進んでいく。
だから僕が大学受験で悩んでいる頃、満男も映画の中で同じように悩んでおり、僕が浪人すれば満男も浪人し、僕がせっかく受かった大学を中退して社会に飛び出していった頃、満男も大学がイヤになって長旅に出たのであった。

そんな、満男とともに青春を過ごしてきた僕も今は38歳。
そしてそれは、寅さんの第1作の頃の年齢なのである。
寅さんの映画上の年齢設定に関しては、様々な資料がありそれぞれに矛盾点がある。
昭和44年夏公開の第1作では、「16の時に家を飛び出し20年ぶりに柴又に帰ってきた…」とあるので、年齢は36歳だと推定できる。
しかし同じく昭和44年冬公開の第2作では「俺ア38年間このかた…」というセリフがあるので、寅さんは昭和44年の時点で38歳だったとも推定できる。
昭和15年の生まれという噂もあるが、当時の渥美清さんが40歳だったことも考えると、やはり寅さんは第1作公開当時30代後半の年齢設定だったと考えていい。
ということで、かつて満男と同世代だった僕は、今ついに寅さんと同世代になってしまったのである。

隠してもしょうがないので言うと、僕はこれまで恋した女性に振られ続け、独身のままここまできた。
しかも現在定職に就かず、かなりフラフラした生活を送っている、まさにフーテン状態。
ちなみに妹が2人いて、真面目にしっかりした家庭を作っている。

そんな僕が、将来のことが不安でたまらなくなり、不眠症やうつ気味になることも多々ある今日この頃。
そこで、もう一度寅さんシリーズを、今度は自分の身を車寅次郎に置き換えてみて、人生を勉強し直したいと思っている。
身内に心配ばかりかける罪な男なれど、寅さんのように清し人生を送りたい。

 

渥美清 1928〜1996 東京都出身。寅さんを演じ続けた俳優。1996年国民栄誉賞受賞。

渥美清 1928〜1996 東京都出身。寅さんを演じ続けた俳優。1996年国民栄誉賞受賞。

 

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