フットハットがゆく【137】「手向け」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【137】「手向け」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2007年7月16日号の掲載記事です。

手向け

先日、僕が飼っていたウーパールーパーが死んでしまった。
昔ブームになったので知っている人も多いと思うが、白いサンショウウオの一種で、エラが体外に出ていてとても愛らしい生物である。
一生を水中で過ごすので、水槽で飼う。
うちのウーパーはトリトンという名前だった。
かなり愛嬌のある奴で、いつも僕を癒してくれた。
だから死んだ時は号泣してしまった。
悲しみを紛らわすために深酒をし、翌日はむくんで目パンパン、顔パンパンという感じで、サンショウウオのような顔になってしまった。

僕がトリトンを飼い始めたのは3ヵ月ほど前で、ウーパールーパーを飼うのは初体験であった。
だから飼育上いろいろ分からないことがあり、トリトンを短命に終わらせてしまった自分が悔しくて情けない。
うまく飼えば5〜10年は生きるという生物だから、僕のせいでわずか数ヵ月しか生きられなかったトリトンが可哀想で仕方ない。
死んだ理由は、カビによる病気が原因であったと思う。
カビがエラに付着し、どんどんと浸食していった。
もともとはメキシコ原産で冷たい水を好むとされるので、日本の夏の30度近い水温で弱ったところを、カビにやられた。
いろいろとウェブで調べたり熱帯魚屋で対策を聞き、水槽に氷を入れたり、専用の小型扇風機を設置して、なんとか水温を下げようと努力した。
カビを取るために薬浴させたり、塩で殺菌もした。
しかしトリトンは日増しに弱り、エサもほとんど食べなくなった。

7月7日、七夕の日、例年なら「恋人出来ますように!」とか「ダイエット成功しますように!」と願ってきた僕であったが、今年は「トリトンの病気が治りますように!」と願った。
しかしその日のうちに、ついに彼は星になってしまったのである。
夏が過ぎたら、再びウーパーの飼育に挑戦したいと思っている。
もし今回の経験をプラスにすることができたら、トリトンも浮かばれるというものだ。

さて、これは最近知ったのだが、ウーパールーパーという名前は日本でしか通用しないらしい。
原産地メキシコでは「アホロートル」という名前だったが、商品名に「アホ」とつくのはイメージが悪いということで、ウーパールーパーという日本独自の可愛い名前が商標として付けられたのだそうだ。
現在メキシコの天然アホロートルは絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約により取引が禁止されている。
日本で売買されているものは、業者さんが日本で繁殖させたものということになる。

ところで皆さんは、「たむけん」ことたむらけんじをご存知だろうか?
サングラスをかけ、ふんどし一丁で獅子舞を舞うという変わったお笑い芸人である。
脈絡のないギャグをマジックでお腹に書いて登場するのだが、先日見た番組では、「ウーパールーパー飼いたい!」と書いてあった。
僕はたむけんに、「飼い始めるなら夏場は避けるように…」といってあげたい。
それにより1匹のウーパーの命が失われずに済むとしたならば、トリトンへの手向けともなろう。

 

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