「鞍馬の火祭り」燃え盛る炎が織りなす勇壮な奇祭とおすすめの見学方法

毎年10月22日、京都の奥座敷である鞍馬では「鞍馬の火祭り」が催されます。夜間に繰り広げられる勇壮な祭りの熱狂と神秘性は京都に数ある祭りのなかでも随一といってよいでしょう。
燃え盛る炎と男たちの熱気がぶつかり合う、鞍馬の火祭りの概要を紹介します。あわせて初心者にはなかなか難しい鞍馬の火祭りのおすすめ見学方法も紹介します。
鞍馬の火祭りとは?~由緒と概要~
由岐神社の例祭である鞍馬の火祭り
鞍馬寺の鎮守社である由岐神社
鞍馬の火祭りは、有名な鞍馬寺の祭礼ではなく由岐神社の例祭です。由岐神社は鞍馬寺の仁王門から金堂へといたる急な坂道の中ほどに位置します。由岐神社は明治の神仏分離までは鞍馬寺の一部であり、鞍馬の火祭りも鞍馬寺の祭礼として行われていました。

鞍馬の里を巡る松明 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
由岐神社の創建時を再現した鞍馬の火祭り
由岐神社は平安京の内裏で祀られていた由岐明神(靫明神)を遷座し、天慶3年(940年)に鞍馬寺の鎮守社として遷座して創建されました。
遷座の際に里人たちは手に手に松明を灯し、夜道を照らしながら資材を運び込みました。このまるで燃え盛る炎の列である松明行列が鞍馬の火祭りの原型となったとされています。ただし、今のような形の鞍馬の火祭りが記録に残るのは江戸時代以降のことです。
一説には、深夜に神輿が急坂の上り下りするには灯りが必要であり、そのための松明が次第に大きく派手になり、今の鞍馬の火祭りへと発展したとも言われています。

由岐神社から下ってくる神輿 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
なぜ10月22日に行われるのか
時代祭は平安遷都にちなんで10月22日
鞍馬の火祭りが行われるのは、時代祭と同じ10月22日です。日中に時代祭を鑑賞し、夜は鞍馬の火祭りを見学するという強者もたくさんいます。
日中は華麗な時代装束をまとった行列が京の街を練り歩き、対照的に夜は勇壮な火の祭りが鞍馬で行われます。
時代祭が10月22日に開催されるのは、桓武天皇が延暦13年(794年)10月22日に長岡京から平安京へと入ったことを記念して1895年に始まったものです。

鞍馬の里を巡る松明 2024年10月22日 撮影:MKタクシー
かつて旧暦9月9日に行われていた鞍馬の火祭り
一方、鞍馬の火祭りはかつては旧暦の9月9日に行われていました。これは由岐明神の遷座が天慶3年(940年)9月9日の夜に行われたためです。
旧暦9月9日に行われていた鞍馬の火祭りが新暦10月22日に行われるようになったのは、1873年ごろからです。時代祭が始まる22年前です。
なぜ10月22日と定められたかの詳細は不明ですが、旧暦9月9日がおおむね新暦だと10月22日前後となるからだと思われます。

鞍馬寺の石段を下る神輿 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
時代祭は旧暦を新暦換算しなかった結果10月22日になったのであり、鞍馬の火祭りはおそらくは旧暦を新暦換算した結果10月22日になりました。
時代祭と鞍馬の火祭りが同日に行われるようになったのは、偶然ということです。

松明とともに鞍馬の里を巡る神輿 2024年10月22日 撮影:MKタクシー
時代を超えて受け継がれる伝統
平安時代から数えると千年以上、おおむね今の形となった江戸時代からでも数百年にわたって、鞍馬の火祭りは鞍馬の里人たちによって守り伝えられてきました。
戦後は氏子の山林業から会社員への生業の変化等に伴い、1959年に一時中断されましたが1963年に復活し、今も継続して開催されています。復活にあたっては、翌朝まで行われていた祭礼が深夜には終了するなど、負担軽減の変更が加えられました。
このように、時代の変遷とともに祭りの形態は変化してきましたが、その根底にある信仰心と地域への愛着は変わることはありません。

松明に点火 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
火祭りは、鞍馬の人々にとって、単なる娯楽ではなく、自分たちのルーツを確認し、地域との絆を深めるための大切な機会なのです。祭りの準備から当日の運営まで、すべて里人たちの手によって行われるのも、そのためです。
鞍馬の火祭りは、地域住民が主体となって行われる祭であり、地域文化の継承に大きく貢献しています。また、観光客にとっても、日本の伝統文化に触れる貴重な機会となっています。
燃え盛る炎の中に、千年の歴史と人々の祈りを感じてください。

トックリ松明を担ぐ子供たち 2022年10月22日 撮影:MKタクシー
鞍馬の火祭りの見どころ~炎と男たちの熱狂~
男たちが担ぐ巨大な松明
神幸祭と還幸祭からなる鞍馬の火祭り

鞍馬の里を松明が巡る 2022年10月22日 撮影:MKタクシー
鞍馬の火祭りは午前9時の例祭から始まります。由岐神社の本殿前で神事が行われ、由岐大明神と八所大明神の二柱のご祭神がそれぞれ御神輿へと遷ります。
2基の神輿が由岐神社から出て氏子地域を巡り、御旅所へと移動する「神幸祭」と、翌日御旅所から由岐神社へと戻る「還幸祭」が鞍馬の火祭りの基本的な形です。
一般的には松明の祭礼が行われる神幸祭のみを鞍馬の火祭りと呼んでいます。

鞍馬の里を松明が巡る 2022年10月22日 撮影:MKタクシー
神事触れとともに松明に点火
夜も暮れ始めた18時から神幸祭がはじまります。
最初に鞍馬の里では「神事触れ」が行われ、触れ歩き役の「神事にまいらっしゃーれ」の合図とともに鞍馬の各家で準備された篝(えじ)と呼ばれる松明に点火されます。
20時ごろから「サイレイ、サイリョウ」という掛け声とともに諸礼と呼ばれる儀礼を行いながら、あちこちから松明を持った若者が由岐神社の御旅所へと集まってきます。

トックリ松明を担ぐ子供たち 2022年10月22日 撮影:MKタクシー
最初は小さな子供たちがトックリ松明と言われる小ぶりな松明を運び、やがて若者たちが3人がかりで担ぎ上げる巨大な「甲斐性松明」と言われる大松明を背負って歩きます。
最大で100kgを超えるといわれ、かつては一人で担いでいたそうです。
たくさんの松明が御旅所へと集結
御旅所には10本程度の大松明をはじめ大小あわせて500本ほどの松明が集まります。御旅所は多くの若者でひしめき合い、たくさんの火の粉が舞い上がります。
太鼓の合図とともに神輿を迎える「注連縄切りの儀」が行われます。御旅所に張られた注連縄が「おー」の掛け声とともに切られます。

鞍馬の里を巡る松明 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
急坂を下る神輿と「チョッペンの儀」
火の粉が舞う中で石段に並ぶ松明
続いて松明は鞍馬寺の山門前へと移動します。山門前の石段にたくさんの松明が並ぶハイライトのひとつです。
山門前はたくさんの松明による熱気と火の粉で覆われます。

鞍馬寺の山門前に並ぶ大松明 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
続いて山門前へと神輿を迎えるための注連縄切が行われ、神輿渡御が始まります。
由岐神社から2基の神輿が急な参道を下ってきます。神輿には鎧武者が乗り、神輿の後方には2本の綱が付けられて転げおちないように引っ張りながら石段を下りてきます。
この綱を引くのは女性たちで、綱を引くことで安産の御利益があります。祭りへの女性の参加が多い点も鞍馬の火祭りの特徴です。

由岐神社の神輿とチョッペンの儀 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
神輿で逆さ大の字になる「チョッペンの儀」
このとき神輿の担い棒の先端に2名の若者が逆さ大の字の形でつかまります。「チョッペンの儀」といい、成人儀式のひとつです。
急坂を降りた神輿は氏子地域を巡行し、御旅所へと渡御します。御旅所でお神楽が奉納され、鞍馬の火祭りは松明が燃え尽きるおおむね24時ごろに終了となります。
翌日には神輿が御旅所から由岐神社へと戻る還幸祭が行われます。

由岐神社の御旅所に安置される神輿と叡電の「きらら」 2024年10月23日 撮影:MKタクシー
おすすめの鞍馬の火祭り見学方法
初心者には見学が難しい鞍馬の火祭り
鞍馬へと行くのも変えるのも大変
魅力満載の鞍馬の火祭りですが、大きな問題は初心者には見学が難しいという点です。
まず鞍馬へのアクセスが大変です。鞍馬へと向かう叡山電鉄は大混雑で自家用車も進入が制限されています。
鞍馬の火祭りが終了するのは24時過ぎですが、叡山電鉄の終電は23:25で鞍馬から市内へと戻る術はありません。
終電に間に合わせるには見学を途中で切り上げる必要もありますし、叡山電鉄も超満員です。

鞍馬の里を巡る剣鉾と松明 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
いつどこで何が行われるか
鞍馬へのアクセスが確保されていたとしても、初心者にはハードルが高いのが鞍馬の火祭りです。
まず、どこでどのタイミングで何が行われているかはしっかり把握している必要があります。
鞍馬の火祭りは鞍馬街道沿いの鞍馬の里の全域で行われますが、なかでも鞍馬寺山門前や御旅所などがメインの見どころになります。
年によって観光客の交通規制の範囲や制限も異なり、事前の下調べは必須です。

鞍馬の里を巡る松明 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
最後は運次第
そこまで準備していたとしても、狭い山間部で行われる鞍馬の火祭りは見学も運に左右されます。鞍馬の火祭りは基本的に場所取り等はできません。
警備員や関係者らの誘導に従って動く必要があり、自分の思うタイミングで思うところにいるということは簡単ではありません。
運がよければハイライトシーンを目の前で見られるかもしれませんが、運が悪いとせっかく鞍馬まで行っても何も見られないまま帰ることもありえます。
祇園祭や時代祭、葵祭などが有料観覧席を確保したり、早くから場所取りさえしていればハイライトシーンを見ることができるのとは大違いです。

鞍馬寺の山門前に並ぶ大松明 2023年10月22日 撮影:MKタクシー
MKトラベルの「鞍馬の火祭り×くらま温泉」ツアーがおすすめ
注:2025年10月14日現在、本ツアーは満席です。キャンセル待ちは可能です。
2025年のMKトラベルでは、鞍馬の火祭りの特別ツアーを催行します。
くらま温泉に拠点を置き、鞍馬の火祭りの自由見学や一般では見ることができないくらま温泉敷地内での神輿巡業の見学ができる特別ツアーです。
もちろん、「美肌の湯」として知られるくらま温泉での入浴も可能で夕食付きです。鞍馬の火祭り終了後の深夜には、京都市内数箇所へのタクシー送迎も付いています。
ぜひMKトラベルの「鞍馬の火祭り×くらま温泉」ツアーをご利用ください。
MKトラベルのツアーのおすすめポイント
- タクシーでの送迎付き
鞍馬街道の貴船口~かじか橋間は22日15時から車両通行止めとなります。
MKトラベルの特別ツアーでは、京都駅八条口に集合後タクシーに分乗し、通行止め区間を迂回して北側から大回りしてくらま温泉へと向かいます。
往路は通行止めが解除される24時以降にタクシーで京都市内各所へとお送りします。送り先はあらかじめ13箇所設定していますが、要相談なのでご自宅や宿泊場所までお送りできる場合もあります。
- くらま温泉に入浴可能
秋も深まり始めた鞍馬の火祭りの時期は夜になるとかなりの冷え込みとなります。
鞍馬の火祭りが終わりを迎える10月22日の24時ごろは、京都市内でも20度を下回るのが普通です。2005年には10度という低温だったこともあります。
しかも鞍馬は京都の避暑地として知られる貴船とほぼ同じ位置にあり、市内より5度は低いのが当たり前です。
MKトラベルのツアーでは、冷えた体にぴったりのくらま温泉への入浴もついています。
露天風呂は21時まで、内風呂は24時まで入り放題です。
松明の火の粉をたくさん浴びて炭くさくなってしまった体を洗い流すのにもぴったりです。
- 神輿巡幸を関係者のみ立ち入り可能なところから見学
鞍馬の火祭りの祭事としての中心は、由岐神社の神輿が氏子地域を練り歩くことにあります。
MKトラベルのツアーでは、くらま温泉の敷地内で神輿の見学が可能です。
鞍馬寺方面からやってきた2基の神輿は、くらま温泉内で小休止をとって再び鞍馬寺方面へと向かいます。
間近から神輿を見学することができます。
- くらま温泉でゆっくり過ごすことも
MKトラベルのツアーでは、くらま温泉を拠点として鞍馬の火祭りを見学できます。
貴重品や不要なものは全部ロッカーに預けて最低限の手回り品のみ携行して鞍馬の火祭りを楽しむことができます。
温泉だけではなく休憩スペースも利用できるので、歩き疲れたらくらま温泉でゆっくりリフレッシュすることもできます。
もちろんツアーにはお食事もついており、くらま温泉自慢の「一人鍋御膳」をご用意しています。
MKトラベルの多彩なツアー
MKトラベルでは、鞍馬の火祭り以外にも多彩なツアーをご用意しています。
特にタクシーの機動力を活用した各種日帰りツアーや、巡礼に特化した西国巡礼ツアーなどが人気です。
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MKタクシーのオウンドメディアであるMKメディアの編集部。京都検定マイスターや自動車整備士、車載広報誌のMK新聞編集者、公式SNS担当者、などが所属。京都大好き!旅行大好き!歴史大好き!タクシー大好きです。