智積院の暁天講座2024「オーバーツーリズム時代のおもてなし」中村好明(日本インバウンド連合会)

観光
智積院の暁天講座2024「オーバーツーリズム時代のおもてなし」中村好明(日本インバウンド連合会)

京都にあるいくつかのお寺では、夏の暑い時期の早朝に「暁天講座」が行われます。
無料で予約なしに参加できる講演会です。

2024年8月1日(木)の智積院の暁天講座では、日本インバウンド連合会理事長を務める中村好明さんの講演「オーバーツーリズム時代の京都のおもてなしを考える~ツーリズムシップとシチズンシップを中心に~」が行われました。
講演終了後には、名勝庭園の無料公開も行われます。

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智積院の暁天講座

智積院の「暁天講座」について

智積院の暁天講座は日程は毎年固定の8月1日と2日の2日間にわたって開催されます。
2024年で第68回を迎える恒例行事です。
暁天講座が初めて開催されたのは、1951年です。暁天講座が行われる講堂の位置に、当時の本堂(現明王殿)が移築されたのを記念して開催されました。
以来、コロナ禍等で中止を挟むものの毎年開催されてきました。

智積院の暁天講座は、概ね2日間のどちらかが僧侶による法話、どちらかが観光関係者や学者や経営者などの講話になっています。
2024年は観光関係者等の枠で日本インバウンド連合会の理事長の学芸員が登場しました。

早朝の智積院 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

早朝の智積院 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

 

2024年の暁天講座

日程 2024年8月1日(木)~2日(金)6:30~7:30
テーマ

8月1日(木) 中村好明氏(日本インバウンド連合会理事長)
「オーバーツーリズム時代の京都のおもてなしを考える~ツーリストシップとシチズンシップを中心に~」

8月2日(水) 岡澤慶澄師(長野県 長谷寺住職)
「泣きむし菩薩のおはなし」

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会場は講堂

暁天講座の受付 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

暁天講座の受付 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

暁天講座が開催されるのは、講堂です。1995年に再建された講堂は冷房も完備されており、暑い夏でも涼しくお話しを聞くことができます。
暁天講座の受付は通常の拝観受付前で行われます。
本日は猛暑予報ということもあってか、比較的席には余裕がありました。

配布資料一式 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

配布資料一式 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

配布された資料は以下のとおりです。

  • 中村好明氏のプロフィール
  • 井上真美氏の講演資料
  • 智積院の行事案内
  • お勤め文
  • うちわ
  • ペットボトルの飲料水

配布された講演資料と投影されたスライドを用いながらの講演でした。

お勤め

お勤め

暁天講座は、お勤めの唱和から始まります。

講堂内の阿弥陀如来の方を向いて開経分(かいきょうのもん)、御宝号(ごほうごう)、普回向(ふえこう)をお唱えします。

 

講師プロフィール概要

1963年佐賀県生まれ。
(株)ドン・キホーテで訪日客受入環境整備などに携わり、2017年より日本インバウンド連合会理事長に就任。
経営コンサルタント、セミナー講師等として活躍中。

 

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中村好明氏「オーバーツーリズム時代の京都のおもてなしを考える~ツーリズムシップとシチズンシップを中心に~」

智積院との縁

今は東京在住ですが、出身は佐賀県の白石町というところです。
実家から車で5分ほどのところが、先ほどのお勤めでも名前が出てきた興教大師覚鑁(かくばん)さんの出生地です。出生地には誕生院というお寺があります。
その興教大師さんが開いた智積院で講演する機会を得たことを光栄に思います。

近くには誕生院だけでなく、日本三大稲荷として知られる祐徳稲荷神社があります。
お正月になると、各地からたくさんの参拝客が集まり大賑わいとなります。
子どものころは、大渋滞が10kmも続き交通が麻痺するなど今でいうオーバーツーリズムが発生していましたが、そのことに文句を言う人はいませんでした。
その後道路や駐車場の整備によってオーバーツーリズムも解消され、適切な対策を打てばオーバーツーリズムは解決できるということを実体験しました。

 

インバウンドが日本を救う

日本経済は世界経済の成長からとりのこされています。円安が進行し、貿易赤字も拡大しています。
唯一プラスとなっているのはサービス収支で、その中心は旅行収支です。
これからの日本に唯一富をもたらすのは、インバウンドです。これからの日本を作っていくにはインバウンドは欠かせません。
直近の四半期でも2.1兆円の富をもたらしており、今や観光産業は自動車産業に次ぐ柱となっています。

今では当たり前に使うようになった「インバウンド」という言葉ですが、私が使い始めた2008年当時はほとんど通じませんでした。
京都商工会議所で講演したときも、ポカンとした顔をされました。

今、日本の人口は毎年佐賀県の人口と同じだけ減少しています。
このままでは衰退していく一方です。日本を救うのはインバウンドです。

 

フード・ダイバーシティーへの対応は必須

最近、台湾に行って実感しましたが、今や日本は台湾よりも遅れた国です。
一人当たりGDPが台湾に追い越されただけでなく、町全体が遅れています。
日本に対して遅れた国という実感を持ったことに自分でもびっくりしました。

台湾人の1/4は敬虔な仏教徒で、食事は精進料理しか食べないという方です。
台湾語で精進料理を意味する「素食」はどこでも食べることができます。
それ以外にも、台湾ではベジタリアン、ビーガン、ハラールなど食のタブーに対応した様々な食事をすることができます。

一方で、日本では食のタブーへの理解が遅れています。特に地方では職人気質の料理人が頑固なことが多いです。
世界では日本食が大人気と言われますが、実は日本食はフードダイバーシティが遅れており、多くの人に敬遠されているのも事実です。
外国人は多彩なご当地料理を食べたいと考えていますが、それができないのです。

 

ツーリストシップとシチズンシップ

オーバーツーリズム問題では、観光客のマナー問題ばかりが取り上げられます。
観光客のマナーも問題ではありますが、同時に住民が観光客を受け入れるシチズンシップも重要です。
上から目線だけでは問題は解決できません。

PIE(印欧語)では、もともとゲストとホストは同じ単語でした。いずれも「見知らぬ人」を意味します。
アフリカで生まれ、グレートジャーニーで世界中へと散らばっていった人類はみな旅人なのです。
日本人も、氷河時代にスンダランドから移動してきた旅人です。

東京の浅草は世界中からたくさんの観光客が集まりますが、オーバーツーリズム問題は発生していません。ゴミが散乱するなどのマナー違反も発生していません。
観光客への啓発活動はもちろんですが、住民たちによる活動の成果でもあります。
たとえば、テイクアウト商品を販売する店にはゴミ箱の設置を義務付けたり、マナーの悪い店には住民が是正を働きかけています。
上から目線ではなく、フラット目線でともに街づくりをすることで解決できるのです。
大切なのは仏教でいう慈悲の心です。自国の文化を一方的に押し付けるのではなく、互いに受け入れあうことが大事です。

 

狭義と広義の「観光」と「インバウンド」

今の日本で「観光」というと、レジャーや物見遊山といったニュアンスがあります。
しかし、もともとは幕末期にトラベル、ツーリズムの訳語として易経から採られた言葉です。
そこには「日本の徳を世界に示す」という意味合いが込められていました。
狭義のレジャーではなく、広義の旅(たび)という意味で使われるべきです。

世界の旅行で最も大きな市場は、レジャーではなくVFR(Visiting friends and relatives)です。
「友人親族訪問」と訳されます。レジャーではなく、「会いに行く」という広義の観光です。

「インバウンド」も本来は単に訪日観光客という意味ではありません。
日本に来る人、モノ、金、情報のベクトルの全てがインバウンドです。
観光だけでなく、MICEも就労も国際結婚も投資も海外から日本へと来る全てがインバウンドです。
今や日本は広義のインバウンドでできているのです。

 

全ての人に旅を

世界では、アクセシブル・ツーリズムという考え方が広がっています。
障害の有無、年齢、価値観などに関係なく、全ての人が旅を楽しめるという考えです。”Tourism for all“とも言われます。

日本では、まだまだ障害者が住みやすい社会にはなっていません。
アメリカでは5万人収容の競技場には1,000席に車椅子専用席がありますが、東京ドームにはたった12席しかありません。日本には400万人もの車椅子利用者がいるにも関わらず。

子どものころから、健常者と障害者は別々の学校に通うなど、日本では健常者と障害者は別の社会ができてしまっています。
単に設備の問題だけではなく、心のバリアフリーこそが求められています。

 

名勝庭園

暁天講座終了後は、名勝庭園の無料公開が行われます。
2023年は開館したばかりの宝物館の無料公開もありましたが、2024年は名勝庭園のみです。

早朝の名勝庭園 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

早朝の名勝庭園 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

智積院の名勝庭園は東向きに作られているため、朝はちょうど庭園側から光が差し込みます。
暁天講座のときにしか見られない名勝庭園の姿です。

蓮が咲く智積院境内 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

蓮が咲く智積院境内 2024年8月1日 撮影:MKタクシー

智積院境内では、キキョウが終わりつつありましたが、蓮はまだ咲いていました。
朝の光を浴びて輝いています。

 

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おわりに

京都のいくつかのお寺で行われている暁天講座の中でも、智積院はおすすめのひとつです。
2018年以来、7年連続での訪問となりました。

早朝アクセスについて

魅力的な智積院の暁天講座ですが、6:30開始という早朝開催のために、交通手段に難儀します。
智積院は比較的アクセスが良好な方ではありますが、遠方の方は時間通り訪れるのは困難でしょう。

しかし、24時間営業のMKタクシーなら朝6時だろうと朝5時であろうとアクセス可能です。
MKタクシーなら迎車料金も不要です。

MKタクシーのご予約は075-778-4141まで

便利な配車アプリも是非ご利用ください! → MKスマホ配車

京都観光には観光貸切タクシーもおすすめです。

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まとめ

 

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