山の一家*葉根舎「葉根たより」【70】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【70】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2022年10月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

 

葉根たより

ぶどうのような甘い香りを漂わせる葛の花が終わりを告げようとする頃、ススキはいつの間にか穂をのばし、輝き始めていました。
野分に大きく揺れ動きながらも、しなやかに受け流す姿には時折ハッとします。

「玄鳥去」「雷乃収声」燕が子育てを終え南へ帰ってゆき、春分から夏の間鳴り響いた雷は潜める頃。
流れ満ち、実りゆく季節を感じます。

<流れる水のように>

野から聴こえてくる唄も、すっかり涼やかな音色になりました。
私たちは次の季節へ向けて種まきです。
人参、白菜、大根、可愛らしい芽が育ってきています。

里芋や生姜も大きくなってきて、10月に入れば掘り始めます。
ほくほくの里芋や南瓜、薩摩芋に爽やかな新生姜が夏の疲れを癒し、冬へ向かう身体へ整えてくれることでしょう。
冬の訪れの前に、身体を浄化してくれるのはマコモタケ。
もう少ししたら収穫でしょうか。
癖がなく、程よい甘みがとても美味しいけれど、保存できないので、貴重な美味しさです。

稲刈りは9月下旬から。
黄金色の波と、落ち着いた深い色合いへ変化してゆく山々との響きあいの美しいこと。
野分にも倒れず、ススキのようにしなやかにかわしてくれました。
が、少し傾いた加減で、野兎に食べられてしまった場所がよく見えるようになってしまい、二畳ほどの穴があちらこちらに・・・。

獣とお天気に揺られる私たち、草木のようにしなやかでありたい。
いつもそう思います。人間関係にもまれてもそうですよね。
目を逸らすのではなく、見つめ、受け入れ、流してゆく。
川が大きな海へと繋がっているように。

<健やかな土壌>

子供たちの夏休み、「どこか出かけたいところある?」と聞くと、みんな「別にない。」といつも答えます。
どうやらみんな家にいることに満足していて、特に出かける欲求がないようなのです。
私も家にいることは大好きですが、美術館など行きたいところもたくさんあります。
子供たちも大きくなってきて、家族で出かけることも少なくなっていくでしょうから、今のうちにたまには小さな旅行でもと。
そして、子供たちがこれからの進路を考えていくヒントになるようなことろへ行けたらと思いました。

みんなの希望はないので、行く場所、予定を考えるのはいつも私です。
選べることが嬉しいやら、一人で考えるのは少し寂しいやらですが、今回は奈良の大峰山で行者さんしている友人に大切な岩屋をご案内頂くことを中心に、奈良で染め織りをしている友人作家、ご夫婦で小さな喫茶とお宿をしている知り合いの友人、竹細工の展示などに決めました。

旅行中、子供たちは素直に出逢うものたちを受け取っているようで、とても穏やかな時を過ごせました。
この時間が子供たちの心の栄養に少しでもなっていたら嬉しい。
どこで何をしても、結局は自分が何を感じ考えるかです。
自然から学び、健やかな感性で育つ土壌作りを少しでも手伝えたらと思います。

<からだのーと>

旧暦の重陽の節句、今年は10月4日になります。
別名「菊の節句」菊は「仙境に咲く霊薬」として、邪気を払い長寿の効能があると信じられていました。
菊の香りを移した「菊酒」を飲み、古からの営みを感じ、無病息災を願ってみてはいかがでしょうか。

そして、10月20日から11月6日は秋土用。呼吸器や皮膚の疾患が増えるので、嗜好品を控え、素食少食で過ごし、寒さに対応できる身体へ整えていきましょう。

<展示案内>

秋土用を終えると、大切な展示が始まります。

11月9日から15日。あべのハルカス近鉄本店アートギャラリーにて「紡いできたもの」京都府綾部市で和紙職人をしながらアートワークを制作するハタノワタルさんとの二人展になります。二人の共通するのは日本の片隅にある山間の小さな集落での暮らし。そこで紡がれてきた営みを続けていくということ。そんな中で生まれた絵画の展覧会をぜひご覧下さい。

(9月11日記)

葉根舎

haneya8011@gmail.com

HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

葉根たよりのバックナンバー

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