フットハットがゆく【283】「スケボー」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【283】「スケボー」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2017年6月1日号の掲載記事です。

 

スケボー

つい先日、仕事現場の近くにスケボーで遊んでいる少年たちがいました。
そういえば僕も昔スケボーを持っていて、よく遊んでいました。小学生の頃ですからかれこれ、40年近く前です。
近所の年上の友達がスケボーを買ってもらい、マンションの屋上広場で乗り回していたので、僕も欲しくなって親に買ってもらいました。
しかし明らかに友達のものとは違う感じのスケボーでした。
普通のスケボーというのは、板が薄くて広く、タイヤの位置も広くて低く、上に乗った時に安定します。
タイヤとボードをつなぐ柄の部分に硬いゴムが仕込んであって、ボードのどちらかに体重をかけると、ゴムの弾力でタイヤが曲がり、方向が変わるという格好いい乗り物です。
ところが僕のスケボーは、板もまあまあ分厚くて、車高も高く、柄の部分が鉄でできていたので、ボードのどちらかに体重をかけてもタイヤは曲がらず、というか板の位置が高いので、そのままボテっと倒れるという。要するに、不安定な上、真っ直ぐにしか進めないスケボーだったのです。
そして普通のスケボーというのは、タイヤの軸とタイヤの間に、ベアリングという小さな鉄球がたくさん入っているのです。
これによりタイヤの軸の摩擦を減らし、回転をよくする、つまり、ボードの上で一回地面を蹴れば、スーッと滑るように前に進むのです。
時々地面を蹴ってスイスイ進んでいく、という格好いい乗り物です。
ところが僕のスケボーは、このベアリングの構造がなく、軸とタイヤが直接つながっているような高摩擦なものだったので、蹴っても、蹴っても少ししか前に進まず、前に進むためにはずっと蹴っておらねばならず、しかもガリガリと摩擦音がすごかったです。
そして普通のスケボーというのは、板に素敵な若者風のデザインが描かれていて、立てかけてあるだけでも絵になるという格好いい乗り物です。
ところが僕のスケボーは、先ほど言ったような分厚く狭い板に、田舎の民芸品のような模様がペンキで描いてあって、その上からテカテカにニスがベタベタに塗ってあるという、立てかけておいても猫が爪とぎにも使わないような代物でした。

 

さて、そんなスケボーでも子供だから元気に乗って遊んでいました。
そしていざ、友達と屋上広場でのレース開始! 弧を描くようにスイスイ走る相手と、真っ直ぐにしか進めず突き当たったら手で方向転換して、結果的に四角に走る僕と、勝負はいつも決まっていました。
まぁそんなことを思い出しながら、仕事現場近くのスケボー少年を見ていました。
もちろん彼らは、格好いい方のスケボーです。
そこでフッと思うのですが、僕は人生において、それをもしスケボーに例えるとしたら、どういうスケボーだったのでしょうか…。
一蹴りで進む距離は短く、真っ直ぐにしか進まず、摩擦ばかり多くて、変な体重のかけ方をするとバタリと倒れる。
そして見た目は…、民芸品の方ですかね。まぁ今更格好いい方のスケボーにはなれませんが、猫の爪とぎにはならないように頑張ります!(笑)

 

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