フットハットがゆく【253】「ガラシャ」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【253】「ガラシャ」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2014年12月1日号の掲載記事です。

 

ガラシャ

先日仕事で、京都の『長岡京ガラシャ祭』を撮りに行きまして、そのイベント中のステージで踊るキッズダンサーたちをテレビカメラに収めました。
ガラシャ祭は前から行ってみたかったのですが、今回初めて見ることが出来ました(スケジュールの都合で少ししかおれませんでしたが…)。
地域の活性化のために様々な団体が出演してイベント会場を盛り上げますが、メインは細川ガラシャの輿(こし)入れ行列です。

さて、イベントに出演したキッズダンサーたちに、細川ガラシャを知っているか聞いてみたところ、20人ほどいたメンバーが全員、知らず…でした。小学5年生の男の子に至っては…
「ガラシャって何ですか?」
「何じゃない、人や」
「何人ですか?」
「日本人!」
「男ですか? 女ですか?」
「女の人!」

簡単に説明…ガラシャは明智光秀の娘で、たいそうな美人だったそう。
16歳で細川家に嫁いで今の長岡京に住む。
ガラシャというのはキリスト教の名前。
父光秀が織田信長に謀反を起こした本能寺の変から、激動の運命を辿ることになった…。

「ふ〜ん?(あまりわかってない様子)」
「そのガラシャの輿入れの行列が、このお祭りのときにあるわけ」
「へ〜、ガラシャってまだ生きてるんや…」
「400年以上前に死んでるわ!」

てな具合でしたね。
ガラシャってそんなに無名だったのかと思って、インストラクターの先生や保護者さんなどにも聞いてみましたが、聞いたことはあるけどよくは知らない…という感じでした。
そういえば、僕自身細川ガラシャという人物を知ったのは20歳過ぎの頃だったのを覚えています。

その頃、テレビ番組のADをしていまして、イスラエルに取材に行ったことがありました。
そこで知り合った日本人ガイドさんと気が合いまして、僕が大阪の高槻出身であるとか、歴史小説が好きだ、とかいう話になりました。
そこで仕事が休みになったある日、ガイドさんが「ぜひ塩見さんに見せたいものがある」といって、とある教会に連れて行かれ、じゃ〜んと言って見せられたのが、壁一杯のモザイク画でした。
着物姿の女性の画。

「細川ガラシャですよ、塩見さん。どうです感動でしょう? イスラエルの教会に、日本の女性がこんなに大きく飾られているんですよ!」
「は〜」

なんとそのとき僕は、細川ガラシャを知らなかったのです。
歴史小説は好きでしたが、それは宮本武蔵や坂本龍馬とか勇ましい侍や武将が好きだったのであって、ガラシャって何人? って感じでした。
まぁあとから考えれば、ガイドさんにとって高槻といえば高山右近…右近とくればキリシタン…キリシタンとくれば高槻のおとなり、長岡の細川ガラシャ…歴史好きならそれくらい知っているだろうし、地元のヒロインがイスラエルで崇められているなんて感動でしょう? という意味であったのです。
ちなみに、そのイスラエルでは、有名な日本人女性は? と言われれば、細川ガラシャらしいです。
地元京都の若い人に聞いてもほとんど知らない人が、逆に海外で有名。う〜ん、世の中の人も人なれ。

 

 

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