フットハットがゆく【171】「後悔高し」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【171】「後悔高し」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2008年12月16日号の掲載記事です。

後悔高し

あっというまに2008年も終わろうとしている。

『いつの日か
いつの日にかと
一生が過ぎゆく』

これは、今年の初めに近くのお寺の掲示板に貼ってあった言葉で、僕はそれを写メに撮って時々待受画像にしていた。
そして自分に、「いつの日にか、ではダメだ。今やらなきゃダメだ」と言い聞かせてきたが、でも今年もまた結局、いつの日にか、のオンパレードで終わりそうだ。
創作…金にならず。
生活…安定せず。
ダイエット…成功せず。
恋愛…成就せず。
後悔が高波のように押し寄せてくる。自己嫌悪の津波に押しつぶされそうだ。

でも、某、紅白の司会者が何かの番組でいっていた。
「頑張っても成功は保証されない。でも成長は保証される」。
うん、僕も結果は出なかった一年だったけど、色々トライしたのは事実だから、それなりに得るものはあった。
人間、ちょっとした言葉で救われることは多い。
結果的に一歩も前進できなかったとしても、そこにとどまった分、見える景色も違ってきたはずだ。

こちらは某人気ボクシング漫画の中のセリフ。
「努力した者が必ず成功するとは限らない。しかし成功した者は必ず努力している」。
そうだ。きっとそうだ。やはり成功するためには努力が必要だ。
『努力』という言葉を使うとクールさに欠けるし、必死な姿を他人に見られるのが嫌な人も多いので、「努力は嫌いです」などという人もいるが、その人が成功者の場合、影で絶対に努力しているのである。

僕の好きな作家の一人、某釣り好きの芥川賞作家は、色紙などによくこの言葉を書いていたそうである。
『明日、世界が滅びるとしても
今日、あなたはリンゴの木を植える』
意味はいろいろとらえようがあると思うが、要するに、
「死ぬまでは必死に生きるべし」
ということだと僕は理解している。
リンゴの木を植える、ということはその成果は何年も先にならなければ分からないわけである。
だから「たとえ明日の命が知れぬとしても、生きている限り、未来を信じて努力すべし」という意味なのだと思う。

なんだか今回はお堅い内容になってしまったが、最後に紹介したいのは某筋肉系お笑い芸人の言葉である。
「僕は健康が大好きです。健康のためなら死んでもいいです!」
これは芸人のギャグなのであるが、僕は禅問答にも通ずるかなり含蓄のある言葉としてとらえている。

来年は死ぬ気で努力しよう…。
いや、明日からやらねば。いやいや、今からやれよ。
「いつの日にか」を卒業するために…。

次回、1月1日号は紙面構成の都合でお休みします。ご了承ください。

開高健(かいこうたけし)1930~1989 芥川賞作家。『オーパ!』などのエッセイで釣り好きとしても有名。

開高健(かいこうたけし)1930~1989 芥川賞作家。『オーパ!』などのエッセイで釣り好きとしても有名。

 

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