フットハットがゆく【129】「池のメダカ」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2007年3月16日号の掲載記事です。
池のメダカ
以前、メダカのことを少し書いたので、その続き…。
僕はメダカを飼い始めてまだ4ヵ月ほどであるが、実は今日本では、密かにメダカブームが来つつあるらしい。
グッピーやネオンテトラといったキレイな熱帯魚に比べると、メダカは非常に地味である。
しかし、その地味さがやはり日本人本来の好みらしい。
盆栽の横に置いた鉢には、やはりグッピーよりメダカということらしい。
花火でいうところの線香花火に似たシンプルな美しさがメダカにはあるし、金魚などに比べ体がとても小さいので水槽が広く見えるという利点もある。
とにかく、今メダカを飼っていることはとてもナウい!ことなのだ…。
さて、僕が飼っているメダカは、最も一般的な緋メダカという種類で、野生メダカの改良品種である。
よって、熱帯魚店などでは大量に飼育され、他の肉食魚の餌として売られていることが多い。
だいたい1匹20円弱で、数十匹単位で売られる。
自然界では天敵に食われ、品種改良されて人工の世界に来ても他の熱帯魚の餌にされるという、なんとも可哀想な魚だ。
生態系ピラミッドの底辺にいて、大量にいてなんぼの小魚だが、実際に水槽に数匹だけを飼育していると、それぞれに個性が発見できて面白い。
求愛活動の末、卵を産んだりするのを見ると感動ものである。
やはり個々が個々の意識を持ち、頑張って生きているんだなぁ…としみじみ思ってしまう。
今僕が飼っているメダカ(現在10匹)を、もし仮に僕が食べてしまったとしても、僕が1日に必要とする栄養源は補給できないだろう。
そんな限りなくちっぽけな存在でも、一生懸命生きている姿はやはり美しく感じる。
例えばシラスを食べる時でも、「あぁ、うちのメダカと同じように、この子たちもどこかで一生懸命生きていたんだな…」と思うと、感謝の気持ちでいっぱいになる。
一方、観賞用にどんどん品種改良されたメダカもいる。
ウロコがキラキラ輝く種類や、だるま形のものや黒いものなど。
目が青くキリリとした顔つきのメダカもおり、その名もズバリ『男前メダカ』として1匹数千円で販売されている。
さらにその中でも『超男前メダカ』という種類がおり、なんと1匹10万円で売られている。
20円からずいぶん出世したものだ。
人一倍小さな体だが逆にそれを生かして、極貧生活から売れっ子芸人としてのし上がった『池乃めだか』氏に匹敵する出世メダカが『超男前メダカ』である。
余談だが、野生のメダカは近年、『絶滅危惧種』に指定されている。
メダカが減ったからといって、ヒメダカを含め、品種改良されたメダカを自然界に放してはいけない。
生き残っている野生メダカの生態に悪影響が出るからだ。野生メダカを絶滅に追いやっているのはいわずと知れた人類の自然破壊である。
自然種の存在を守るためには自然を守るしかない。
人間がメダカのような小さな生命を守れるかどうかで、地球の未来が決まる。
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