フットハットがゆく【128】「意図、意志、解さんと」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【128】「意図、意志、解さんと」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2007年3月1日号の掲載記事です。

意図、意志、解さんと

最近は『言いまつがい』というものがはやっている。
『まちがい』ではなく『まつがい』というところがみそ。
コピーライター糸井重里さんのホームページから始まり、本も出版されているし、テレビ番組にもコーナーがあったりする。
『言いまつがい』とは、うっかり言い間違えてしまうことで、例えば、「ご注文、くりかえさせていただきます」と言おうとして、「ご注文、くつがえさせていただきます」と言ってしまった。
とか、「ダメでもともとなんだから…」と言おうとして「もともとダメなんだから…」と言ってしまった、など。
ということで僕もブームにのって、自分の過去のまつがいを書いてみる。

英語の言いまつがい…

家が銀閣寺に近いもんで、シーズンには観光客に道をたずねられたりする。
とある外国人観光客に「ギンカクジ、ドコデスカ?」と聞かれた僕、慣れない英語で「ゴー、ストレート、ディス、ドーロ!」と言いまつがえた。
「ロード」と言いたかったけど、道路って言ってしまった。

DVDの聞きまつがい…

正月に帰省した際、DVDを見ようということになり、母と二人でレンタル屋に行った。
母が棚を探しながら「モーガン・フリーマンないの?」と僕に聞くので、「それやったら、『セブン』か『ショーシャンクの空に』がおすすめやな」と言ったら、母「は? 邦画の古いのんやで!」…。
邦画の古いのんとモーガン・フリーマンの聞きまつがい。

漢字の書きまつがい…

中学生の頃、仲のいい男子友達はお互いおちょくり合うもの。
休み時間に友人の山田(仮名)の名前を黒板に大きく書き、続いて「へんたい」と書いた。
授業が始まり、先生が教壇に。
黒板に漢字で「やまだへんたい」と書いてあるので、山田が赤っ恥をかくはずであったが、先生が冷静に、解説を始めた。
「へんたいの『たい』の字は『体』ではなく『態』です。しかもこの人は『体』と書こうとして『休』と書いています」…そう、僕は『山田変態』と書こうとして、『山田変休』と書いてしまったのだ。
「へんきゅう」って…『変熊』って書く人は時々いるけど、とにかくバカ丸出しのまつがいで赤っ恥をかいたのは僕だった。

ワープロ変換まつがい…

これほど世の中に多いまつがいもないだろう。
「足他の県ですが、御語録寺に半球百科典の書面厳寒に酒烏合という古都で養老四苦尾根害島須。」…これだけまとめてまつがうのはまずないが、後でメールを読み返すと、とんでもない変換ミスをしていたということは、誰にでも覚えがある駄労。

意図的まつがい…

先日飲み会で、向かいに座った若い女の子が「結婚するなら長男より次男がいい」と言い出した。
僕は長男だがすかさず「僕、じなんです!」と言った。
でも嘘は言っていない。
だって僕、痔なんですもん。
これは意図的なまつがいである。

まぁ、世の中にはほんとうにいろんなまつがいが存在しているので、他人の意図、意志を解すのはあぁ対辺だ。

糸井重里 1948〜 日本を代表するコピーライターであり、マルチクリエイター。

糸井重里 1948〜 日本を代表するコピーライターであり、マルチクリエイター。

 

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