絶景!城南宮の「しだれ梅」は早春の京都随一の超おすすめスポット
目次
京都の数ある梅の名所でも、特に驚くほど美しいと評価が高いのが城南宮神苑のしだれ梅です。
しだれ梅が咲き乱れる城南宮の神苑は、まるで別世界にいるかのような美しさです。
たおやかにしだれた枝振りの城南宮のしだれ梅は、通常の梅と異なる雅さがあります。
城南宮で見たことがないような美しい梅の世界へといざなわれることでしょう。
2024年の城南宮は例年より13日も早く、2月17日(土)に見頃となりました。
例年は3月に入ってから見頃を迎えますが、2024年は3月だと遅い可能性があるのでご注意ください。
城南宮神苑のしだれ梅
梅の概念が変わる!しだれ梅が咲き乱れる神苑
梅にもいろいろな品種がありますが、北野天満宮をはじめとする京都の梅スポットとはかなり違った梅を楽しめるおすすめスポットが城南宮です。
城南宮神苑の梅の主役は「しだれ梅」。しだれ桜と同じく、しだれた樹形が特徴の梅の品種群です。
城南宮の神苑では、例年2月半ばから「春の山」でしだれ梅が咲き始めます。
城南宮神苑のしだれ梅が見頃を迎えるのは、梅シーズンでも後半です。
例年2月末ごろになると、城南宮神苑のしだれ梅が順次見頃を迎え始めます。
しだれ梅の見頃にあわせて、城南宮では毎年2月下旬ごろから3月中旬ごろに、「しだれ梅と椿まつり」が行われます。
「しだれ梅と椿まつり」というだけあって、150本あるしだれ梅だけでなく、椿も城南宮の主役です。
散った椿としだれ梅の景色が城南宮のおすすめ定番構図のひとつです。
城南宮の「しだれ梅と椿まつり」期間中には、毎日「梅が枝神楽(うめがえかぐら)」が行われたり、植木市の出店が行われたりします。
梅が枝神楽とは、梅の枝を持ち、冠に梅の花を挿した巫女さんが舞うお神楽です。
城南宮の拝殿付近にある神楽殿で行われます。梅が枝神楽は平日10時、土日祝は10時に加えて15時に披露されます。
2024年のしだれ梅と椿まつりは、2月18日(日)~3月22日(金)の開催です。
開催日は曜日に関係なく毎年固定です。2024年は開催前日の2月17日(土)に見頃となりました。
桜でもとりわけしだれ桜が美しいように、梅でもしだれ梅の美しさは別格です。
しだれ梅を主とした城南宮神苑「春の山」の150本のしだれ梅は「これが梅?」という固定観念を打ち破るものです。ここでしか見られない景色を堪能しましょう。
城南宮の150本というと、京都でもベスト10に入るかどうかという本数です。
もっと本数が多い梅スポットは京都にも多数あります。しかし、城南宮が北野天満宮と並ぶ人気の梅スポットです。
限定の切り絵御朱印も
「しだれ梅と椿まつり」期間中には、限定御朱印も授与されます。
上の写真の右側の白い御朱印が、限定御朱印です。
しだれ梅と椿、太陽・月・星の三光の門があしらわれています。初穂料300円で授与されます。
左の2つの御朱印は、2023年限定の珍しい切り絵の御朱印です。
中央の切り絵御朱印は城南流鏑馬を描かれていおり、初穂料1,000円で授与されます。城南宮は、流鏑馬発祥の地でもあります。
2024年は城南流鏑馬の切り絵御朱印をいただくことができます。
2023年には、JR東海の「花咲く京都」キャンペーンの一環として御朱印が授与されました。
花咲く京都キャンペーンの切り絵御朱印は、城南宮の社殿やしだれ梅の姿がとても精巧な切り絵であらわされています。
しだれ梅の見頃は見頃は例年2月下旬~3月中旬
城南宮神苑のしだれ梅の見頃は、観測記録が公開されています。
年 | 見頃期間 | 見頃日数 |
2011年 | 3月3日 ~19日 | 17日間 |
2012年 | 3月10日~22日 | 13日間 |
2013年 | 3月8日 ~17日 | 12日間 |
2014年 | 3月10日~20日 | 11日間 |
2015年 | 3月8日 ~18日 | 11日間 |
2016年 | 2月23日~3月8日 | 15日間 |
2017年 | 3月1日 ~15日 | 15日間 |
2018年 | 3月6日 ~15日 | 10日間 |
2019年 | 2月28日~3月10日 | 11日間 |
2020年 | 2月16日~3月1日 | 15日間 |
2021年 | 2月21日~3月5日 | 13日間 |
2022年 | 3月7日~15日 | 9日間 |
2023年 | 3月2日~10日 | 9日間 |
2024年 | 2月17日~ | |
平均 | 3月2日~14日 | 13日間 |
城南宮のしだれ梅の開花日は年によって変動が大きいです。
見頃の期間も、9~17日間と大きな差があります。
城南宮のしだれ梅開花は、ソメイヨシノ以上に変動が大きく予想が難しいです。
2024年の城南宮のしだれ梅の開花は平年よりかなり早く進み、近年では2020年に次ぎ、2011年以降の平均より13日も早い2月17日(土)に見頃を迎えました。
見頃の期間は平均13日なので、2024年の城南宮しだれ梅は2月いっぱいで見頃期間は終わる可能性もあります。
城南宮のしだれ梅の見どころは、満開の時期だけではありません。
散り始めのころの散った梅が作るじゅうたんも大いに魅力です。
城南宮のしだれ梅はまだもう少し楽しめます。
城南宮公式ホームページ:しだれ梅と椿 今日のいちまい | 城南宮
城南宮のしだれ梅ピーク時は大混雑します。
2022年は、3月12日(土)13日(日)が満開のピークでした。
しだれ梅の満開時は、まず城南宮の駐車場に入るまでは大変です。駐車場待ちの車列が城南宮境内から国道1号線まであふれます。
城南宮のすぐ近くには名神高速の京都南ICもあり、京都でも屈指の交通量が多い道路ですが、1車線が城南宮の駐車場待ちに埋まります。
待ち時間だけでなく、安全面への配慮からもマイカーで城南宮を訪れるのはできるだけ避けるようにしましょう。
地下鉄・近鉄竹田駅から城南宮までは徒歩15分ほどです。歩くのはしんどいという方は、ぜひタクシーで城南宮までお越しください。
無事城南宮に到着すると、次は大混雑の城南宮神苑への拝観受付に並びます。
しだれ桜のピーク時には、城南鳥居を越えて絵馬舎や唐渡天満宮のあたりまで行列が伸びます。
危険防止のために、受付の速度を調整することで城南宮神苑への入場制限が行われます。ただし、案外回転は早く見た目ほどは並びません。
城南宮の神苑に入ると、いきなりしだれ梅が乱れ咲く春の山です。
混雑するので譲り合ってしだれ梅を楽しみましょう。
城南宮のメインである春の山を抜けると、神苑の残りの部分はゆっくりと進むことができます。
城南宮のしだれ梅について
「城南宮のしだれ梅」とまとめて呼ばれますが、多数の梅の品種が植えられています。城南宮に特有な品種の梅というわけではありません。
特に梅に詳しくはなくても、ピンクや白など花の色が明らかに違うので、誰でも分かります。
実はしだれ梅という品種の梅はありません。桜はシダレザクラという品種があるのとは異なります。
しだれ梅とは、枝が枝垂れる「しだれ性」の梅の品種の総称です。
梅の品種は野梅系(やばいけい)、緋梅系(ひばいけい)、豊後系(ぶんごけい)などの3系9性に分類されますが、しだれ梅のグループがあるわけではありません。
様々な品種の梅が突然変異によってしだれ性を獲得し、しだれ梅となります。3系9性のそれぞれにしだれ性の品種があります。
なお、しだれ性は自然界では強度や光合成効率で不利なため、自然淘汰されます。
人間が関わるからこそ、しだれ梅は生きることができます。
城南宮神苑では、品種名が記載されていないため、正確には何という品種のしだれ梅なのかはさだかではありません。
城南宮のホームページでも、しだれ梅は白とピンクとの区分しか書かれていませんが、呉服枝垂(くれはしだれ)と緑萼枝垂(りょくがくしだれ)がメインとされています。
ピンクのしだれ梅は呉服枝垂(くれはしだれ)がメインですが、藤牡丹枝垂なども含まれているのではないかと思われます。
呉服枝垂は八重のしだれ梅で、ピンクの花弁で縁がやや白くなっているのが特徴です。よく観察すると、縁が白っぽいのもわかるでしょう。
白のしだれ梅は緑萼枝垂がメインですが、白滝枝垂や、月影枝垂、満月枝垂なども含まれているかもしれません。
緑萼枝垂は、八重咲きの「緑萼」の枝垂性の品種です。その名のとおり萼が薄緑色をしており、花弁もやや緑が買っています。
城南宮神苑では紅梅のしだれ梅はあまり見かけませんが、紅枝垂、緋の司枝垂(ひのつかさしだれ)、千鳥枝垂など紅梅のしだれ梅の品種もあります。
史上初のしだれ梅ライトアップ開催(2024年は開催なし)
2020年にテレビ中継でしだれ梅ライトアップ
城南宮では、2023年に史上初のしだれ梅ライトアップが開催されました。
過去には、2020年2月20日に読売テレビの「かんさい情報ネットten」の旬感中継で一夜限定のしだれ梅ライトアップが行わたことがあるくらいです。
2020年の写真は、城南宮しだれ梅のライトアップがテレビ中継されたときに偶然居合わせて、境内自由エリアから見たものです。
とても美しく幻想的な光景でした。2023年のしだれ梅ライトアップとは全く同じというわけではないでしょうが、どのような光景が見られるのでしょうか。
中継終了後には、城南宮の関係者らがレアなしだれ梅のライトアップを楽しんでらっしゃるのが見えました。うらやましいですね。
JR東海の貸切特別拝観
関係者向けのライトアップ試験点灯内覧会
2023年の城南宮しだれ梅ライトアップは、JR東海の貸切特別拝観です。
城南宮の特別拝観が始まる2日前にライトアップの試験点灯が行われ、関係者向けの内覧会も行われました。
ライトアップ設備の設営中はしだれ梅の開花が遅くやきもきしましたが、城南宮のライトアップ内覧会当日は三分から五分程度まで開花が進みました。
夜間の城南宮本殿参拝
城南宮ライトアップの特別拝観受付は、城南宮拝殿の正面にある城南鳥居前です。
通常は、夜間は城南鳥居より内側には入ることができません。
ライトアップが行われる2023年3月1日(水)~5日(日)は、城南宮の本殿や拝殿周辺も夜間ライトアップされました。
しだれ梅が開花期間中の昼間は、城南宮神苑受付前には大行列ができてにぎわいます。
特別拝観時は、いつもとは違う静かな夜に、城南宮をお参りすることができます。
しだれ梅のライトアップだけでなく、城南宮夜間参拝も特別拝観の5日間だけでした。
かわいい手提げ行灯の貸し出し
城南宮の神苑内に入ると、すぐに手提げ提灯の貸し出しがあります。
ピンク、オレンジ、紫、黄色、緑の提灯からお気に入りの手提げ提灯を借りましょう。
しだれ梅が咲く春の山は明るいので提灯は必要ありませんが、本殿裏はやや暗いので足元を照らすのに提灯はぴったりです。
カップルなら色違いの手提げ提灯を持って並んで城南宮境内を歩いたら楽しいですよ。
灯りはもちろんロウソクではなく、電球です。傾けたり少々ぶつけたりしても大丈夫です。
ただし、手提げ提灯なので片手がふさがってしまいます。
しだれ梅ライトアップをしっかり撮影したいという方は、手提げ提灯はちょっと邪魔になってしまいます。
よく考えてしだれ梅ライトアップを満喫しましょう。
春の山のしだれ梅ライトアップ
城南宮神苑に入ると、すぐに春の山です。しだれ梅が咲き乱れる神苑のメインです。
昼のしだれ梅も驚くほど美しいですが、ライトアップされたしだれ梅はまた格別です。
北野天満宮でも梅苑のライトアップはありますが、しだれ梅の本数はわずかです。
梅のライトアップ自体が珍しいですが、しだれ梅がメインのライトアップはもちろん城南宮が京都でも唯一です。
関西一円まで広げても、城南宮以外では三重県の「鈴鹿の森庭園」くらいです。
ほとんどの方は、城南宮がしだれ梅メインのライトアップは初経験だったでしょう。
桜も枝垂桜とソメイヨシノではライトアップでも雰囲気は異なるように、梅もしだれ梅だと全然違います。
ありきたりな言葉ではありますが、城南宮神苑は「幻想的」な光景が広がります。
流れるような美しいカーブを描く枝がいろんな角度からライトアップで照らし出されます。
城南宮と言えば、この構図。散椿ごしのしだれ梅の光景です。
昼の華やかなしだれ梅も良いですが、夜は白とピンクのしだれ梅がライトでほんのりと照らし出されて幽玄さを感じます。
日中以上に真っ赤な散椿の色が映えます。
この散椿としだれ梅のアングルは大人気で、昼の拝観時は順番待ちの大行列ができます。
2023年の城南宮の貸切特別拝観は、事前予約の定員制(各回350名)で開催されました。
ライトアップでしだれ梅の花やつぼみのひとつひとつが闇に浮かび上がります。
2023年は城南宮初のライトアップということで、ライトの配置も試行錯誤しながらだったとのことです
しだれ梅のライトアップ自体が珍しいので、普通の梅や枝垂桜のライトアップとは違ったノウハウが必要となるでしょう。。
2024年は開催がなく、2025年以降も不明でしょう。
頭上から降り注ぐしだれ梅の向こう側には、暗い夜空が広がります。
城南宮特別拝観の内覧会当日は快晴だったので、しだれ梅の向こう側では星が輝いています。日中とは全く異なる景色です。
ライトアップは平安の庭まで
城南宮の夜間特別拝観で公開されるのは、広大な城南宮神苑のうちの一部だけです。
春の山から城南宮本殿の裏側を通り、平安の庭の入り口部分で終了です。
ちょうど城南宮本殿をぐるりと回るコースになります。
平安の庭は、池泉がライトアップされている姿だけ見ることができます。
離宮茶屋も夜間開店
2023年の城南宮夜間特別拝観は、しだれ梅のライトアップ鑑賞と本殿の夜間参拝で終わりではありません。
城南宮の本殿周辺はライトアップはされていますが、社務所や授与所は全てしまっています。
しかし、城南鳥居の向かい側にある売店の離宮茶屋は、城南宮夜間特別拝観にあわせて19:00から20:30まで開店しています。
しだれ梅期間中限定品をはじめ、城南宮の多彩な品々が並んでいます。
2023年3月4日・5日はしだれ梅が満開に
2月27日(月)の城南宮特別拝観内覧会の時点では、しだれ梅はまだ三分~五分咲き程度でした。
しかし、最高気温の高い日が続いた影響で、特別公開初日の3月1日(水)には城南宮のしだれ梅は見頃を迎えました。
夜間特別拝観開始後さらにしだれ梅の開花が進み、後半の3月4日(土)、5日(日)はしだれ梅が満開を迎えました。
城南宮のしだれ梅は、桜以上に開花期間が前後します。毎年ちょうど見頃になるとは限りません。やっぱり2023年はチャンスです。
JR東海ツアーズの対象旅行利用者や、EXサービス会員だという方は、ぜひ城南宮のしだれ梅のライトアップを楽しんでください。
JR東海の梅の名所「城南宮」夜間貸切拝観
公開期間 | 2023年3月1日(水)~5日(日) |
拝観時間 | 18:30~20:30(最終受付 20:00) |
城南宮の夜間貸切拝観では、駐車場は利用できません。
必ずタクシーや公共交通機関で城南宮へお越しください。
神苑以外の城南宮の梅
城南宮では、数は多くはありませんが神苑内以外でも梅が見られます。
境内摂社の唐渡天満宮(からわたりてんまんぐう)の周囲では、梅が10本ほどまとまって植えられています。
天満宮といえば梅ですね。唐渡天満宮の梅はしだれ梅ではありません。
祭神の菅原道真公が中国(唐)の宋に渡って禅を学んだという伝説に基づく社名です。史実では、道真公は中国へは渡っていません。
唐渡天満宮付近は城南宮神苑とは異なり拝観料も不要ですので、早朝などでも梅を楽しむことができます。
城南宮のしだれ梅とメジロ
梅と言えば付きものなのがメジロ(目白)です。
目の周りの白と、うぐいす色をした羽がなんともきれいな小鳥です。
メジロは見た目だけでなく、飛び方や鳴き声もかわいい人気者です。
城南宮神苑でもしだれ梅とメジロの光景を見ることができます。
お天気が良ければ、確実にどこかにメジロがいます。
一本の木にたくさんのメジロが群がっていることもあります。
メジロはあちこちを鳴きながら飛びまわっているので、見つけるのはそう難しくはありません。
ぱっと見てメジロがどこにいるかわからないときに見つけるポイントは、しだれ梅の枝の揺れです。
メジロがしだれ梅の蜜を吸うとき、少し枝が揺れます。
風がない日だったら、よく見ていれば揺れがわかるでしょう。普通の梅よりもしだれ梅の方が顕著に揺れます。
もちろん、しだれ梅に集まる鳥はメジロだけではありません。
いろんな鳥が集まってくるのも、鳥が花粉を媒介する鳥媒花である梅の魅力です。
桜でもある程度は鳥を見られますが、虫媒花のため梅ほどではありません。
紅葉に鳥が集まることは普通はありません。
しだれ梅に並ぶ主役の「椿」
早春の城南宮はしだれ梅があまりにも有名ですが、「しだれ梅と椿まつり」という通り、しだれ梅だけではなく椿の主役です。
春の山でしだれ梅の間に落ちている散椿は、「城南椿」という城南宮の椿です。
城南椿が見られるのは、城南宮神苑の中でも春の山の東側です。
城南宮神苑の順路で言うと、しだれ梅が集中するコーナーの入口付近と出口付近に4本あります。
城南椿は藪椿の一品種で、小ぶりで真紅の花が魅力の椿です。
城南宮の名前を冠するだけあって、城南宮でも最も人気の椿です。
春の山では3本の大きな城南椿があり、しだれ梅の間にぽとりぽとりと花を落としています。
椿は、散るときに花ごとポトリと落ちるのが特徴です。
落ちてすぐは、咲いていたときと同じような美しい姿を残しています。
城南宮の神苑では、しだれ梅の合間で美しい城南椿のが散っています。
散った椿は次第に退色してしおれていきますが、城南宮神苑では毎日手入れをしており、しおれた椿は取り除かれます。
しだれ梅開花期間中は、城南宮でいつでも美しい散った椿を楽しめます。
城南宮神苑でもたくさんの椿が見られるのは、春の山から本殿裏付近です。
特に春の山から平安の庭へと続く城南宮の本殿裏への苑路には、美しい椿がたくさん咲きます。
城南宮神苑全体では、120品種もの椿が植えられています。
赤やピンク、白はもちろん、珍しい黄色の椿もあります。
それぞれの椿には、品種の名称も書いてあり、椿の勉強にもなります。
一重に八重にいろんな花があり、とても楽しめます。
平安の庭の東側には、城南宮境内でも最も古い樹齢300年の藪椿があります。
高さは10メートルにもなる大きな椿の木です。
城南宮は戦後にしだれ梅の名所として知られるようになりましたが、そのはるか昔から椿の名所だったのです。
広大な城南宮神苑ですが、早春の主役であるしだれ梅が楽しめるのは、最初の春の山だけです。
春の山はせいぜい2割くらいで、まだ神苑は8割くらい残っています。
しだれ梅と異なり、椿は春の山、本殿裏、平安の庭とあちこちで楽しめます。
しだれ梅をじゅうぶんに満喫したあとは、椿もじっくり楽しんでください。
派手さではしだれ梅に及ばないかもしれませんが、椿も見ごたえじゅうぶん!
早春の城南宮神苑では椿もお忘れなく。
城南宮について
城南宮とは
平安京の南を守る古社
城南宮は、平安京の南を守る神社として、古くから朝廷に重んじられてきた神社です。
城南宮のある鳥羽の地は、鴨川と桂川の合流地点にあります。淀川を通じて瀬戸内海とつながっており、平安京の外港として発展しました。
風光明媚な地としても知られ、平安貴族らの別荘地としてもにぎわいました。
平安時代の後期の院政期には、城南宮の周囲には鳥羽離宮という院御所が形成され、政治の中心地となりました。
今も城南宮の錦林には、鳥羽天皇陵、白河天皇陵、近衛天皇陵など院政期の陵墓があります。
2度の天下分け目の決戦の舞台に
鎌倉時代には、後鳥羽上皇が城南宮の神事である流鏑馬(やぶさめ)にことよせて鎌倉幕府打倒の兵を集めて挙兵したのが承久の乱です。
2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では承久の乱は描かれましたが、城南宮はナレーションでしか登場しませんでした。
幕末には、戊辰戦争の天下分け目の決戦である鳥羽・伏見の戦いの戦場にもなりました。
南から京都へ向けて進撃してくる旧幕府軍を、城南宮から小枝橋にかけて展開する新政府軍が迎え撃ったことから、戦端が開かれました。
鳥羽・伏見の戦いのうち、鳥羽の戦いです。
兵力でも装備でも劣る新政府軍が旧幕府軍を押し返しました。
伏見の戦いでも敗れた旧幕府軍は淀で体制を立て直しかけますが、新政府軍が掲げた錦の御旗や、淀藩をはじめ裏切りが続出したことにより、大坂城へと敗走しました。
時代の転換点の始まりが、城南宮だったのです。
今も城南宮のすぐ西は国道1号線で、すぐ近くは名神高速道路の京都南インターがあります。
城南宮は今も昔と変わらず交通の要衝に位置しています。
真幡寸神社とも呼ばれる
城南宮は、1876年に正式名称を「真幡寸(まはたき)神社」と改めました。
真幡木神社は、竹田付近にあった式内社です。平安時代以前から記録に残る古社です。
城南宮の前身であったという説と、京都の南を守る城南宮に対して、竹田の産土神であり別の神社であるという説があります。
明治時代に真幡寸神社が公式に採用され、古名に復して正式名称は真幡木神社とされました。
今も大鳥居をはじめ各所で真幡木神社という名称が残されています。
ただし、明治以降も地図では「城南宮」と表記されており、一般には一貫して城南宮と呼称されていたことが見て取れます。
例えば今の竹田駅も、1928年の開通当時は奈良電気鉄道「城南宮前駅」と言いました。
城南宮前駅は、1940年に奈良電竹田駅、1963年に竹田駅となりました。
なお、1987年に移転するまでの竹田駅は、新城南宮道付近にありました。
真幡寸神社への改称の背景には、近代社格制度のもと、「宮」という名称の使用が制限されたことも関係するかもしれません。
戦後近代社格制度が解体されると、城南宮という名称が既に定着していたことと、おそらく前述のとおり真幡木神社の由来には諸説あったこともあり、1968年に再び城南宮に改称しました。
城南宮への改称と同時の1968年に、城南宮境内に摂社として真幡木神社の社殿が建てられました。
「真幡木神社」の碑は1937年の銘があるので、城南宮本体が真幡木神社だった時代に奉納されたものです。
交通安全の神様
古くから、城南宮は方除(ほうよけ)の神様として信仰を集めてきました。
しかし、今では直接的に方除のお世話になることはありませんが、方角の神様という意味から転じた旅行安全・交通安全の神として城南宮は信仰を集めています。
特に交通安全の神様としては、京都でも北の狸谷不動尊、南の城南宮という二大巨頭のひとつです。
城南宮の厄除けステッカーをつけた自動車はかなりよく見かけます。
京都五社めぐりのひとつでもあります。
2月11には七草粥
城南宮神苑のしだれ梅がようやく咲き始める2月11日の建国記念の日には、七草粥がふるまわれます。
七草粥は通常は1月7日ですが、城南宮では旧暦の1月7日に近い2月11日に行われる伝統行事です。
せり、なずな、すずな(かぶ)、すずしろ(だいこん)、ほとけのざ、ごぎょう(ははこぐさ)、はこべらを食べて一年の無病息災を祈ります。
2023年は感染防止対策として、人数を制限した当日券と事前申込券で七草粥がふるまわれました。
中には小さなお餅も入っていて、とってもおいしいです。
しだれ梅鑑賞には早すぎますが、ぜひ一度食べてみて欲しいおいしいお粥です。
拝観情報
拝観時間 | 9:00~16:30(受付は16:00まで) |
拝観料 | 大人 800円 小学生 500円 |
TEL | 075-623-0846 |
住所 | 京都市伏見区中島鳥羽離宮町7 |
アクセス | 近鉄・地下鉄「竹田」より徒歩15分 |
神苑拝観料は2021年10月1日に改定されました。
公式ホームページ:城南宮 | 京都の南、方除け ・厄除けの祈祷、車のお祓いの神社。巫女が神楽を舞い、庭園は花と紅葉の名所です
昭和を代表する作庭家が精魂込めて作った6つの庭
城南宮の神苑は「楽水苑(らくすいえん)」ともいわれ、「昭和の小堀遠州」こと中根金作による作庭です。
中根金作の代表作である島根県の足立美術館の庭園は、米国の日本庭園専門雑誌で毎年トップに選出されていることでも知られます。その中根金作がライフワークとして作り上げたのが城南宮の神苑です。
石の配置を1mm単位で調整するなど、中根金作が精魂込めて作庭されました。
城南宮神苑は源氏物語の庭、春の山、平安の庭、室町の庭、桃山の庭、城南離宮の庭の6つの庭園からできています。
一度に作庭されたのではなく、中根金作が何度かにわけて順次作庭したものです。
これらの6つの庭園を回ることで、日本の庭園史を体感できるようになってます。
お寺にある庭園は、ただ眺めて楽しむことだけを目的とした庭園ではありません。仏道修行のための庭園であることが多いです。
特に禅寺の枯山水庭園は、座禅を行うことを目的に作られた庭園です。
一方の城南宮など神社の庭園である神苑は、神社によって様々な目的を持って作られています。
城南宮神苑の場合は、参拝者の憩いの場となるような庭園を造ってほしいと中根金作に依頼しました。
城南宮の依頼どおり、あまり難しいことを考えることなく、素直に楽しめる庭園になっています。
最初に作庭されたのが、城南宮神苑でも南側にある「室町の庭」と「桃山の庭」です。
「室町の庭」は池泉回遊式庭園です。池の中には蓬莱島(ほうらいじま)が浮かび、あちこちに石組みは配されています。
「桃山の庭」は芝生と蘇鉄をメインとしたやや珍しいタイプの枯山水庭園です。
芝生は海を、芝生の中に配された石組みは小島を、奥の刈込は山並みを表しています。
続いて、「平安の庭」、「城南離宮の庭」「春の山」が作られました。
「平安の庭」は池泉回遊式庭園です。流れ落ちる滝と、ゆったりと流れる遣り水が目からも耳からも楽しませてくれます。
1970年から毎年4月29日と11月3日に曲水の宴も行われています。遣り水を流れてくる酒盃が目の前を通り過ぎるまでに和歌を詠むという平安貴族の遊びです。
「城南離宮の庭」は、白河法皇の時代の鳥羽離宮の様子を再現した庭園です。
城南宮に6つある庭園の中でも、最も小規模です。
しだれ梅の咲き乱れる「春の山」は、平安時代後期の鳥羽離宮の築山の遺構を活用したものです。
梅の中でも遅咲きのしだれ梅は、ソメイヨシノがとちょうど入れ替わりに見頃を終えます。
城南宮で梅といえば神苑のしだれ梅ですが、城南宮はしだれ梅ばかりではありません。
神苑南部の室町の庭や桃山の庭にも、紅梅や白梅が咲きます。
特に室町の庭では、お茶席の楽水軒の前に美しい梅が咲きます。
楽水軒では、巫女さん出してくれたお抹茶とお菓子をいただきながら、ゆっくりお庭を眺めることができます(要志納金300円)。
ただし、2021年は新型コロナウイルスの影響により、閉じられていました。
城南宮神苑のもうひとつの注目ポイントは、庭園と庭園をつなぐ苑路です。
源氏物語に登場する植物が100種以上植えられており、四季折々の景色で楽しませてくれます。
中根金作の作庭した主な庭園は、以下のとおりです。
京都の庭園
城南宮 神苑「楽水苑」
妙心寺 退蔵院「余香苑」
妙心寺 大心院「阿吽庭」
大徳寺 興臨院 方丈庭園
金戒光明寺「紫雲の庭」
二条城「清流園」
将軍塚青龍殿庭園
三室戸寺「与楽園」
その他の庭園
足立美術館庭園
大阪万国博覧会「日本庭園」
足立美術館を筆頭に、いずれも錚々たる庭園が並びます。
城南宮神苑と同様に、池泉庭園と枯山水庭園の両方が並びます。
まさに「昭和の小堀遠州」です。
中根金作(1917年~1995年)は、今も京都に残る名庭を残した人物としては、7代目小川治兵衛(1860年~1933年)、重森三玲(1896年~1975年)と並ぶ存在です。
現役の作庭でこの3人に並ぶかもしれないのは、「平成の小堀遠州」とも称される北山安夫(1949年~)でしょう。
ほぼ30年おきに偉大な作庭家が輩出されていることに、今更ながら驚きを覚えます。
中根金作の代表作はいくつもありますが、様々なタイプの庭園を同時に楽しめるという意味では、城南宮神苑こそがベストといっても過言ではないでしょう。
城南宮神苑をはじめとする中根金作の庭園は、小堀遠州の庭園がそうであるように、これから数百年の時を越えて愛され続けるのではないでしょうか。
おわりに
梅というカテゴリーに限らず、3月上旬の京都で最もおすすめの観光スポットは城南宮です。
桜シーズン本番が始まる前の京都を訪れた際には、ぜひ訪れてください。
予想より桜の開花が遅いときなど、城南宮ではしだれ梅がピークを迎えているかもしれません。
MKタクシーの観光タクシーであれば、その年の開花状況に応じてベストの観光スポットへとご案内できます。
梅も桜も開花は年によって半年くらい変動します。
少ないチャンスにしか京都に来られないという方は、ぜひMKの観光タクシーをご利用ください。
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