エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【357】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【357】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2018年1月1日号の掲載記事です。

 

 

本だけ眺めて暮らしたい

いつごろからか、「…てあげる」という言いまわしをよく耳にするようになった。
「魚はまず頭を切り落としてあげて、皮の側から焦げ目がつくまでしっかりと焼いてあげて下さい」という具合。
奇妙な言葉遣いだと、ことさらにここで批判しようというのではない(実際、奇妙だが)。
ただ、このような新奇なもの言いを(もしかしたら、過去にも用例があるのかもしれないが、そういう問題ではなく、最近の流り言葉として)いちはやく身につける人はどういう意識なのだろうと興味深い。

他者が話すのを聴いて「あっ、この言い方、いいな(あるいは、ユニークだな)」と、意図的、積極的に取り入れているのか、自分が日常どんな言葉を遣っているかなど何の意識もなくて、単に言葉が〈感染〉しやすい人なのか。
他者と言っても、テレビの影響力が非情に大きいと思われるが、おもしろいのは、「…てあげる」や「…になります」など、言葉によってそれぞれ出現率が高い番組が異なること。

例えば、NHK総合の『あさイチ』は「…てあげる」が頻発する。
ゲストの「料理研究家」や「家事研究家」と称する人たちが視聴者に「スゴ技」などを「伝授」するシチュエーションなんかで、「ベーコンで巻いてあげて」とか「たっぷり洗剤をつけてあげて」などと言うわけだ。
以前この番組にレギュラー出演していた宮下純一さんは、動詞ごとに「…てあげる」をつけるので、いったい一分間に何回「…てあげる」を言うのか! というほどだった。
「…になります」は、企業の担当者がVTR取材の対応をするテレビ東京のニュース番組『ワールドビジネスサテライト』を筆頭に、もうどこでも耳にするようになったが、圧倒的に多い番組のひとつは、これもNHKのテレビ番組『ブラタモリ』だろう。

タモリを案内する地方自治体の観光振興担当の役人なんかが、タモリやNHKのスタッフさまご一行という超VIPを前に、かしこまって「…になります」を連発するのだ。
「水路の痕跡になります」とか「古地図になります」とか。
タモリがメインの別の番組では、彼が京都のある人気施設を訪問した際、案内した職員が「…になるものでございます」と言った。
「…になります」を連発する人は、どこか卑屈に見えてくる。

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

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