フットハットがゆく【233】「プロ」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【233】「プロ」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2013年4月1日号の掲載記事です。

プロ

プロの定義は色々ありますが、僕がこれまで見た人の中で、プロだなぁ…と感じた方々を紹介します。

辰吉丈一郎1…ボクシングの元世界チャンピオン。
辰吉さん現役王者の頃、試合を京都から横浜まで観に行きました。
辰吉さんがリングに上がり、ガウンを脱ぐ瞬間は興奮のるつぼ。
ボクサーというのは減量がありますから、脂肪をそぎ落とし、筋肉だけの体を作り上げる、いわば芸術に近い体型となるわけです。
ガウンを脱いだ瞬間、僕は後ろ側の席にいたので、その鍛え上げられた背筋を間近に見ました。
普通、筋肉というと、胸筋や腹筋に目が行きますが、辰吉さんは肩幅が広く逆三角形で、見事な背筋をしているのです。
そして、これは金を出して生で見る価値がある!と思いました。
結果的には負傷判定でしたので、試合としてはいまいちだったかもしれません。
でも、あの背筋を見ただけで、チケット代、新幹線代の元を充分に取った気分で帰りました。

ドゥンガ…ブラジル代表主将としてワールドカップも制した元サッカー選手。
猛将、闘将、として知られ、ピッチでは常に鬼の形相でプレーし、敵味方から恐れられました。
そんなドゥンガさんがJリーグのジュビロ磐田に在籍した折、オフに家族で京都観光に来られました。
そしてタクシードライバーをしていた僕の車に偶然乗ってこられて、1日観光することになったのです。
その時のドゥンガさんはもの静かで、奥さんと2人のお子様にもとてもやさしく、靴を脱いで拝観するお寺では、家族の靴をそろえてあげたり、子どもの靴ひもを結んであげたり、ピッチで味方に怒声を飛ばして命令する姿とはずいぶん違いました。
観光地では、彼に気づいた人にサイン入りの絵はがきをプレゼントして、気軽に写真にも応じていました。
ピッチではサッカーの鬼、プライベートでは家族とファンにやさしい物静かな男性…。このギャップに、速攻惚れました。

諸星和己…元ジャニーズ 光GENJIのメンバー。
諸星さんとはニューヨークで偶然一緒にMLBを観に行く機会がありました。
観に行った数人で、ビールカップで乾杯する写真を撮りました。
皆はカップのラベル向きが適当なのに対し、諸星さんのビールラベルだけは、びしっとカメラの方を向いていて、まるでビールの宣伝ポスターのように写っていました。
たかが素人の撮る写真にも、このプロ根性…すごいです。
そのとき見た試合は、NYヤンキース対シアトル・マリナーズ。
まだイチローや松井が渡米する前で、佐々木主浩選手がマリナーズのクローザーとして登板していました。
試合後、諸星さんは、「佐々木選手は知り合いだから、握手させてあげる」といって、紹介してもらい、実際にあの伝家の宝刀フォークボールを投げる手で握手してもらいました。
たかだか知り合いの知り合い程度の僕に対して、これほどしてくれる諸星さんに対し、本当に人を喜ばせることが好きな人なんだな…と思いました。
何百万人を相手に一世を風靡したアイドルですが…1対1の状況でもエンターテイナーなのだと感じました。

 

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  1. 正確な表記は吉の字は士ではなく土、丈の右上に点[]

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