フットハットがゆく【223】「人間バンジーが最高」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【223】「人間バンジーが最高」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2012年6月1日号の掲載記事です。

人間バンジーが最高

高級クラブでのライブの撮影予定があり、会社で撮影機材を何度もチェックして、今日は忘れ物がない!と自信を持って出発しましたところ、現場近くまで来て、クロックスをはいていることに気づきました。
クロックスはゴム製のぞうりで、その日は大物アーチストにインタビューの予定もありましたから、さすがにクロックスはまずい、でも会社に戻っている時間がなかったので、近くの大型日用品店に駆け込み、靴がないか探したところ、安全靴しかありませんでした。
安全靴というのは、工事現場や工場などではく靴で、つま先と靴底に鉄板が入っておりまして、落下物や何かに挟まれても大丈夫、釘や突起物を踏んでも大丈夫というまさに安全な靴です。
でも、鉄板が入っているだけに、重くて、はき心地はよくないです。
でもまぁクロックスよりはましだと思い、真っ黒な安全靴を購入、それでクラブに向かいました。

その日僕が安全靴だったことは誰にも気づかれないまま、撮影も無事終わりまして、期せずしてせっかく鉄板靴をはいていたことだし、クラブに遊びに来ていたハイヒールの美女に踏まれるとかしても良かったのにな…と思いました。
ハイヒールで踏まれますと、普通は骨折しそうなほど痛いのですが、安全靴はびくともしないので、あぁ、何かの因果でこの靴をはく運命にあったのだ!と実感できたかもです。
それを同僚に話しますと、「そういうのを『人間バンジーが最高…』的な言葉でありましたよね?」といいました。
「ん?…(僕、しばし考えて…)あぁ、『人間万事塞翁が馬』ね。」
昔、中国で、塞翁さんの馬が逃げたけど良い馬を連れて帰って来た。その馬に乗って落馬し骨折したけどおかげで徴兵を免れた。
という、禍福というのは予測できない…という言葉です。

自分のうっかりで買わなくていい安全靴を買うはめになったけど、おかげでケガせずにすんだ…塞翁が馬的なエピソードに繋がれば良かったのですが、結局何もなく、買い損、はき損で終わろうとした翌日、友人に誘われてタケノコ掘りにいくことになりました。
人生初のタケノコ掘りですが、よく、竹林で切り株を踏んで大けが、という話を聞きます。
ということでやぁやぁ、安全な靴の出番です。
あぁ買って良かったな!と自分にいい聞かせつつ、泥んこになってタケノコを掘り、でも結局、固いものはいっさい踏まず…。
くやしいので、友人の息子(4歳)に、「この靴はなぁ、鉄板が入っていて象に踏まれても痛くないねん。試しに踏んでみ!」と踏ませたところ、4歳児が踏んだところで別に安全靴でなくても痛くも痒くもないわけで、「で?」という顔をされてその話題はすぐに終わってしまいました。

塞翁が馬を期待して何も起こらず…。
人生ってそんなもんでしょうね。
でもまぁおかげでエッセイ1本書けたのでよしとします。

 

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