フットハットがゆく【218】「おでき」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2012年1月1日号の掲載記事です。
おでき
新年あけましておめでとうございます。本年も、フッと思ったこと、ハッと気付いたことを気ままに書きたいと思います。
よろしくお願いいたします。
さて…。僕が自転車に乗っておりますと、それをたまたま見かけた知人から、「乗り方が微妙に変…」と指摘を受けました。
変だというのは自分でもわかっていて、でも、仕方なくのことなのです。
右の臀部のみサドルに引っ掛けるようにして乗ります。
なぜなら僕の左の臀部には大きなおできがあって、かつ、ぢなので、左と真ん中に体重をかけることは禁物だったのです。
おできは約10年ほど僕のお尻にぶら下がっていました。
最初気づいた時は1ミリほどの粒でしたが、徐々に徐々に年月をかけて大きくなり、最近は梅干し大になって、みの虫のようにぶら下がって存在しておりました。
体重さえかけなければ別段痛くもないので、そのまま放りっぱなしにしておりました。
邪魔だし手術して切り取ろうかな?と思うこともありましたが、10年もぶら下がっておりますと愛着がわくというか、よく、米粒の中には神様がいる、といいますが、僕のおできの中にも神様がいて、切るとバチが当たるんじゃぁなかろうか? などと考えたりもしまして結局切らずにおりました。
しかし最近どうにもそのおできが痛みを発してきまして、自転車どころか、普通に椅子に座るのも支障が出るようになって来ました。
そういった座り方の不自然さを母親に指摘されまして、「おできが痛いのか?」といわれました。
誰にも秘密のつもりだったので驚きましたが、母親は僕のおできを実際に生で見たそうです。
これは去年の夏に僕が肺気胸の手術をした時に、全身麻酔だったため立会人が必要とされ、それに母親がなったわけですが、手術室から出て来ておむつをする時に、尻のおできが見えてその大きさに驚いた、ということでした。
僕の方は麻酔が効いていますから、まさか母親に尻を見られたことはつゆ知らず、というか40歳を越して母親におむつ姿を見られるというのも恥ずかしい限りですが…とにかく、痛かったので手術することにしました。
京都で一番大きな大学病院に行きまして、ちくちくと局所麻酔をした後、10年の歳月も空しく非常にあっさりと切り落とされました。
お医者の顔を覚える間もないほどの時間でした。
が、助手の方は非常に美人で、その人に尻を見られて恥ずかしかったです。
いつか見返してやる!と思いつつ、控え室で待っていますと、手術を終えたお医者と美人助手が、ちょうどお昼時だったもので、どやどやと、さぁ何食べよう? あれ食べよう! と、昼食に出かけて行きました。
人のお尻のおできを切った直後にすぐ食事が出来るとは、さすがプロは違うな! と感心したのでした。
そして心配された神様存在説インおでき、ですが、今のところバチが当たる気配がないので、やはりおられなかったようです。
ということで、軽くなった身で2012年も駆け抜けたいと思います。
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