フットハットがゆく【205】「捨て文」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2010年12月1日号の掲載記事です。
捨て文
2010年もはや最終月の12月。早いものですね。
僕自身の今年1年を振り返ると、ディレクターとしてテレビ番組のレギュラーを持ったのがやはり大きいですね。
というか全てです。
このエッセイでも何度か紹介して来ましたが、KBS京都テレビの「B-TRIBE TV(ダンスTV)」というストリートダンスの番組です。
毎週木曜24時放送の30分番組で、1年間で50回放送にまで至っています。
元旦に休みを取ってからは無休。
週平均80~90時間労働。忙しい時には週120時間くらい働いたこともありました。
某欧州の先進国では基本の労働時間が週35時間と聞いて、うらやましくもあり、でも好きでやっていることだから、とても充実した1年だと感じています。
番組を作っていて一番嬉しいのはやはり、「毎週欠かさず見ています」という言葉ですね。
お客様は神様です、という言葉がありますが僕にとっては「視聴者様は神様です」…です。
テレビ制作の事務所は、ストリートダンス・スクールの中にあるのですが、そこの生徒さん、小学3年生の女の子に「毎週夜まで起きて見ている」と言われました。
とても嬉しかったですが、さすがに小学生ですから、深夜0時の放送まで起きているのはどうかと思い、「ありがとう。でもビデオに録って、早よ寝なあかんで」と言いました。
すると、「楽しみで寝られへん…」といわれ、まぁ即座に上を向いて、目が充血したのを見られないようにしました。
週120時間働いたとしても、そういう時に報われます。
通常、テレビ番組といいますと、1回の放送に何百万、何千万の制作費が動きます。
プロのタレントさんに、演出、カメラ、照明、編集、音声などの各分野のプロスタッフが何十人と寄って集って1つの番組を作り上げるのが普通です。
…が、うちの番組の場合、片手で数えられるスタッフが1人何役もこなし、あとは、ボランティアキャストやボランティアスタッフの協力を得て成り立っています。
テレビに出られる、テレビ制作に関われる、ということはある意味ステータスかもしれませんが、それでも繰り返しノーギャラで手助けしてくれる人々には感謝感謝です。
ある意味神様です。
あとやはり、スポンサー様は神様ですね。
全国ネットの番組に比べると、ローカル局で制作費も極端に少ないとはいえ、やはり0円では番組を作ることも放送枠を買うことも不可能ですから、スポンサーさんの支援は絶大です。
最後にもう1人神様を紹介します。
限られた機材、スタッフ、キャストで番組を毎週続けるのに不可欠なのが『アイデア』であり、どんな苦境でも、僕の頭にふわっと降りてきてくれるアイデアの神様…彼がいなければ僕はとっくに他の仕事に鞍替えしていたと思います。
映像の神様、スティーブン・スピルバーグに憧れてこの世界に入り、いま多くの神様に囲まれて生きている自分は幸せ者といえると思います。
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