フットハットがゆく【154】「加味、自由っす!」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2008年4月1日号の掲載記事です。
加味、自由っす!
前回の愛すべきおバカキャラネタが意外と好評だったので、今回はその第二弾。
僕の高校時代、体育会系クラブの同窓生たちの話。
野球部のAくんは海外旅行に行ったことがなかった。
知人が4泊6日でハワイ旅行に行ったという話をしていたら、Aくんは、「なんで、4泊して6日なん?」という根本的な質問をしてきた。
「日付変更線を越える場合や、飛行機に長時間乗る場合はそういう計算になる」という僕の説明がいまいち理解できなかった彼は、「じゃぁ8泊したら12日になるん?」と真面目な顔でいってきた。
いやいや、その倍の仕方はおかしいでしょ!
サッカー部のHくんは、英語が大の苦手であった。
授業で英文の朗読中、『child』を「チルド」と読み、先生から「それは『チャイルド』と読みます…」と指摘された。
数行進むと『children』という単語が出てきたのでHくんは自信を持って「チャイルドレン!」と読んだ。
先生は冷静に「それは『チルドレン』です」といった。
Hくんは「英語ってなんて難しいんだ…」と頭を抱えていた。
まぁ気持ちは分かるけど…。
ちなみに彼は、『knife』(ナイフ)を『クニフェ』と読んだり、『hope』(ホープ)を『ホペ』と読んだり、英語の授業中はとにかく皆の人気者であった。
これは僕と同じラグビー部のOくんが小学生だった頃の話。
おバカな小学生というのはとにかく目立ちたがり屋が多い。
夏の水泳の授業の後、教室で着替え中、Oくんは机の上で裸踊りをして、皆の大爆笑を買った。
調子に乗った彼は偶然教室に飛び込んできたカナブンを捕まえ、「ようし、このカナブンを鼻に入れてやる!」と自分の鼻につっこんだ。
もちろんまわりは爆笑!しかしカナブンはそこが人間の鼻だとは思わず、何とか逃げようと、奥へ奥へともぐり込んだ。
驚いたOくんはカナブンを取り出そうとしたが時すでに遅し、すっぽりと鼻の奥におさまり、さらに奥にもぐろうともがいている。
「ギャ~! カナブンに脳みそ食われる!」と、Oくんは突如絶叫した。
チャイムが鳴り、隣りの教室で着替えていた女子児童や先生も教室に入ってきたが、彼はフリチンのまま鼻にカナブンを入れて泣き叫んでいた。
先生はむりやり鼻をかませ、ついにカナブンはバラバラ死骸となって鼻血とともに排出された。
Oくんはなんとか脳みそを食われずにすんだようだった。
その証拠に彼は後に、東京の超有名私立大に受かり、さらに超有名広告代理店に就職したのである…。
体育会系の人間にはなぜか、愛すべきおバカが多いような気がする。
おバカタレントとして人気急上昇中の上地雄輔は、元横浜高校野球部のレギュラー捕手で、あの松坂大輔とバッテリーを組んだこともある。
「羞恥心」を「さじしん」と読んだり、そのおバカさ加減は全国区だが、本人は、自分がバカっぽいのも「頭の回転が速すぎるから」の一言で済ませているそうだ。
せちがらい昨今とはいえ、その自由気ままな発想が加味されて、思わず笑いを生むところが、おバカキャラが愛される理由でもあるのだろう。
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