フットハットがゆく【122】「まず、生かすよう」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2006年12月1日号の掲載記事です。
まず、生かすよう
秋に飲み食い過ぎてまた少し肥えてしまった。
そんな僕が最近始めたダイエットはずばり、『お掃除ダイエット』である。
やり方は簡単、1日1時間くらい、家の掃除をする!…である。
僕は一軒家に一人で住んでいるので、掃除もかなり気合いが入る。
もともと僕は大の掃除嫌いで、放っておけばダニがわこうが、ハエが発生しようが、家中ちらかし放題。
まさにゴミ溜めの中で生活しているような感じであった。
そんな僕の言い分は、「僕はいい作品を作るためにエネルギーを使いたいのであって、掃除などに時間と体力を使うのは嫌だ…どうせ掃除してもまたすぐに汚くなるし…」。
母は僕に、「そんなに家を汚くしていては病気になる。早くお嫁さんをもらってくれ!」と何度も言った。
妹は「お嫁さんは家政婦じゃないんだから、掃除のために結婚するなんてバカげている」と言った。
まぁ掃除議論はともかく、僕も大概いい歳(37歳)なんで、なんとかいい人を見つけたいと、好きになった人に積極的にアタックするも、その都度ふられる始末。
あぁ、なんて僕は運が悪いんだ…。
さらに、最近はもっとツキがなく、車のバッテリーはパーにするわ、虫歯になるわ、コンタクトは落とすわ、イライラして5年ぶりくらいにパチンコしてみたら、それも負けるし…。
仕事のストレスも手伝い、ほとんどうつ状態になってしまった…。
いっそパ~ッとお金を使って遊んでみたり、滋養をとるために高価なサプリメントを買ってみたり、なんとかそんなんで運気が変わらないかともがいてみたが、全く効果無く、酒の量だけが増えていく…。
そこでふっと思い出したのが、「ハインリッヒの法則」である。
アメリカの損保会社の調査部だったハインリッヒの論文が元というその法則とは…『1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異状が存在する』というもの。僕の身の回りに起る小さな不幸は、つもりつもってやがては重大な事故に…ガーン。
そんな時、偶然テレビで松居一代さんの番組を見た。松居さんはお掃除の達人として今とても話題になっており、いろいろな番組で引っ張りだこ。
そんな松居さんの口癖は『汚い家には幸せは来ない!』。
そして、「世の中に偶然ということはなく、すべては何かの因果で繋がっている必然である」ともおっしゃっていた。
僕は「これだ!」と思った。自分の運の悪さは自分自身の根本的なところに原因があると思った。
速攻彼女の著書『松居一代の超おそうじ術』を取り寄せ、それから、毎日、できれば1時間、できなくてもほんのちょっとでも家の掃除をするようにしている。
これが、ハインリッヒでいうところの「300の異常」を少しずつ埋める作業の一部であると僕は信じている。
実際、掃除して汗をかくと気持ちいいしダイエット効果ももちろんある。
家も心もキレイになるし、一石三鳥。
幸せになりたければまわりに何かを求めるより、自分をまず、生かすようにするのがいい。
自分の家を自分で掃除する…それが僕にとって幸福への第一歩である。つづく…
松居一代 1957〜 滋賀県出身のタレント。俳優船越英一郎が夫。田舎暮らし公開中! YouTube『塩見多一郎』で検索!
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