山の一家*葉根舎「葉根たより」【15】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【15】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2018年3月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

まだまだ寒い毎日ですが、大寒・冬土用を越え、節分・立春を迎えましたね。
こちらは、雪が降ったり止んだりの銀世界ですが、「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」春風に氷が解け始め、「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」暖かな雨に土が潤い活気づく、という暦を見ると、見えないところにはもう春がやってきている想像がふくらみ、ウキウキしてきます。
梅の木を見上げれば、蕾がいつの間にかまあるくなっています。蕾がほころべば、私たちの顔もほころぶ。草木と人の深いつながりが、今もこうしてちゃんとあることに胸がいっぱいになります。

<めざめの春>

冬至と春分の中間にある立春は、二十四節気のはじまりの日。
季節と共に変化する私たちの身体は、ゆるみ、ひらき、冬に溜まったものを出し始める時。
水もゆるみ、雪の間から芽をのぞかせるいのちの躍動高まる野草。
これを頂くことで、身体はどんどんめざめてゆきます。

冬は家事と制作の毎日で、外で身体を動かすことが少ないので、朝夕の短いヨーガの時間は身体と対話し、変化を感じる大切な時間です。
夫のげんさんは、冬でも山仕事、雪かき、大工仕事(今はギャラリーを作っています。)と外で身体を動かしているので、いつも身体全体で季節を感じとり、敏感な身体になっているのだろうな、と尊敬してしまいます。

<雪の世界>

私が暮らす山では、この冬の雪は例年よりも少なく、晴れ間が多い日々でした。
けれど冷え込みは厳しく、水道が凍ることが多かったです。

子供たちはそのおかげで、雪の上をたっぷり歩き、遊べました。気温が低いと雪が凍り、その上を歩けるのです。
雪で田畑の凹凸がなくなるので、普段歩けないところをどこまでも犬のせりと一緒に走り回り、汗をかいて帰ってきます。

学校ではインフルエンザが流行り、三男かやのクラスは一週間ほど学級閉鎖。
でも、うちの子たちはかかりそうもなく、前回の冬は長男つくしがなりかけましたが、一晩で治ってしまいました。
やはり日頃の食事、大地の恵みたっぷりの素食のおかげだと思います。栄養をしっかりとることより、余計なものをしっかり出す力。
今の時代にはこれが大切だと思い、心がけてお料理をする毎日です。

<夫婦旅行>

実はこの冬に、やっと新婚旅行(!?)へ行ってきました。
埼玉から近くへ越してきた両親へ子供たちを預けて、初めての夫婦二人旅。
といっても、比叡山と美術館の京都一泊の小さなものですが、私たちにとってはとても贅沢なこと。
自分で宿をとるのも初めてでした。
結婚して初めの十年は、ポッキーをひとつ買うこともためらう暮らしだったので、不思議なほどの大出世です! (笑)

比叡山は丁度雪が降り、人がまばら、静かでとても神秘的でした。
まるであの世を垣間見たかのよう。美術館は心を込めて作られた、世界中の古き美しいものが集まっていて、まるで世界旅行をしたかのよう。
小さな旅が、時間と世界を旅する大きな旅行になりました。

<強くしなやかに>

では、今年の家族旅行はどうしようか、なんて妄想をしていたら、飛び込んできたニュース。
一月六日に中国沖で、海洋タンカーと貨物船が衝突。
大量の重油が漏れ、日本海を直撃すると… その量は過去最悪。

いつも物々交換をしてくれる日本海の漁師さん、満潮の海水を丁寧に薪と天日の力だけで素晴らしいお塩にしてくれる、五島列島の友人たちのことが真っ先にうかびました。
彼らの暮らしはどうなるのでしょう。

日本はこの大きなニュースを報道もせず、対応もしていません。
奄美大島にはもう黒い重油の塊が漂流してきています。
石油を使うということはこういうこと。
思い知らされたような気がします。
まるで、早く日本人よ、目覚めなさい、と言われているかのようです。
これから重油回収のボランティアやカンパが必要になってくると思います。
海が大好きな子供たち、今年の家族旅行のテーマになりそうです。
日頃頂いている草木の力をもとに、自然災害も人災にも、強くしなやかに向き合っていきたいです。
暮らしと制作、行い、すべてで。

その草木の力をテーマにした絵の個展を、京都で三月十六日―二十一日に開催します。
京都市営地下鉄、松ヶ崎駅近くの「space妙」にて。
四月十四・十五日には「わち山野草の森」で開かれる「はるいろさくらまつり・森の展示室」という野外展に参加。
四月十八日―二十八日は東京・銀座のステップスギャラリーの小品展へ参加します。
皆さまにお会いできることを楽しみにしています。
京都は桜が咲き始めるころでしょうか。
よい季節、ぜひぜひお出かけください!

(2018年2月8日記)

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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