フットハットがゆく【112】「好きだっち!」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【112】「好きだっち!」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2006年7月1日号の掲載記事です。

好きだっち!

FIFAワールドカップ、日本は残念でした!
でも逆に純粋に決勝トーナメントを楽しめるというもの。
日本の試合となるとどうしても必要以上に興奮してしまっていけない…。

今回は僕が実際に見たいろいろな国のサッカー事情を書いてみる。
まずはブラジル。僕は小学生の頃(1977~80年)、父親の仕事の都合でブラジルのサンパウロに住んでいた。
ブラジル人は本当にサッカー好きである。
ワールドカップで母国が敗戦したら、悲観して自殺してしまう人がいるくらいである。
W杯に限らず、応援しているチームが勝利したら、マンションの窓から旗を掲げ、優勝したわけでもないのに紙吹雪を撒きまくる。
試合会場でそれをやるならまだしも、普通のビル街でそれをする。本当に陽気な民族だ。

陽気なイメージとは裏腹に、ブラジルにはファベーラと呼ばれる貧民街が多数存在する。
ファベーラの子供たちは靴が買えず、はだしでサッカーをする。ファベーラ近くに住む僕の友人(日本人)がいっていたが、はだしでサッカーをするとどんどんと足の皮が剥けて、最初は痛いが次第に皮膚が分厚くなり、しまいにはガラスを踏んでも大丈夫なくらいの足裏になるらしい。
そんな彼らが貧困から抜け出す数少ない手段がサッカーといえる。
セレソン(ブラジル代表)にもファベーラ出身のスーパースター選手がいるが、彼らは世界中の貧しい人たちのヒーローなのである。

中学の時(1983~84年)はサッカーの母国、イギリスのロンドンに住んでいた。
プレミアリーグという世界有数のサッカーリーグのある国。
その熱狂ぶりたるや、阪神ファンの比ではない。
上流階級の人々はどちらかというとラグビーやクリケットという球技を好み、サッカーサポーターはフーリガンにも代表されるように、少々過激な人々が多い。
そのため、試合会場は喧嘩沙汰を避けるためアルコールの販売は禁止。
それでも会場は危ないので、子供はもっぱらTV観戦専門…それを考えると、日本のJリーグはほんとに平和…
逆にいうとファンやマスコミの厳しさに欠け、選手のプロ根性が向上しないともいえる。

大学の頃(1990年)ネパールに貧乏旅行に行った。
当時のネパールはTVの普及率がとても低く、1台のテレビに近所の人々30人ほど集まってひしめき合って見る…という感じだった。
ネパールのサッカーというと、アジアでもかなり下の方になるレベルなのだが、その頃ちょうどW杯のイタリア大会があって、男の子たちは「スキラッチ! スキラッチ!」といって大興奮していた。
スキラッチというのはその大会で活躍したイタリアの選手である。
サッカーのさの字のイメージもない小さな国でも、サッカーに熱狂していたのである。

いろんな国にいろんな国のサッカー事情があるが、結局みんなサッカーが好きだっち!
(それぞれの話は、それぞれの当時の話なので、今もそうなのかは知りません…)

サルバトーレ・スキラッチ (1964~) 90年W杯でイタリア代表として活躍。Jリーグジュビロ磐田にも所属。

サルバトーレ・スキラッチ (1964~) 90年W杯でイタリア代表として活躍。Jリーグジュビロ磐田にも所属。

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