明月院ブルーで大人気!日本で最初の「あじさい寺」である鎌倉の明月院

京都や奈良に並ぶ古都である鎌倉は、春と秋の観光シーズンだけでなく梅雨の時期も人気です。
梅雨シーズンになると色とりどりのあじさいが鎌倉の街を彩り、古都の風情がいっそう引き立ちます。中でも全国的にも有名なのが「明月院ブルー」と呼ばれる明月院のあじさいです
鎌倉が誇るあじさい名所の「明月院」をご紹介します。
明月院ブルーのヒメアジサイ
鎌倉でも随一のあじさいスポットである明月院の名は全国にとどろいています。
境内の約2,500株のあじさいはヒメアジサイ(姫紫陽花)といいます。
ヤマアジサイ系のエゾアジサイとホンアジサイの交雑種とされます。
花はホンアジサイと同じく手鞠型をしています。葉はヤマアジサイと同じく光沢がなく色が薄めで、全体的にホンアジサイよりも小ぶりです。
花だけでは素人が識別するのはなかなか難しいでしょうが、葉の光沢は明らかに異なるので識別可能かもしれません。

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
アジサイの小型の品種をヒメアジサイということもあるので、区別する場合には発見者の牧野富太郎にちなんで牧野ヒメアジサイという場合もあります。
今では牧野ヒメアジサイ系の園芸品種も多数作出されています。
アジサイよりも寒さに弱いということもあってか、京都では見かけることは少なめですが、京都府立植物園や宇治市植物公園ではヒメアジサイを見ることができます。

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
明月院のあじさいは鮮やかな青色が特徴で、開花期には境内全体が青に染まります。この青は「明月院ブルー」として知られます。
いつから明月院ブルーと言われるようになったかはさだかではありませんが、最近というわけではないようです。

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
境内にぎっしり植えられたあじさいにより、あじさいのトンネルのようになります。
有名スポットだけあって、あじさいシーズンにはとにかく人、人、人なのでご注意ください。

鎌倉・明月院の悟りの窓とあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
明月院の見どころのひとつは本堂の「悟りの窓」です。
禅宗寺院特有の丸い窓は宇宙を示しています。
悟りの窓の前には明月院ブルーのあじさいが行けられていました。

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
日本で最初の「あじさい寺」
今は日本全国に「あじさい寺」と言われるお寺があり、あじさいは桜と紅葉に次ぐくらいの人気です。
しかし、今のようにあじさいが大人気となったのは意外と古いことではありません。
戦後しばらくくらいまでは、あじさいは単体で楽しむものであり、群生した花を楽しむという習慣はありませんでした。

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
今は数ある「あじさい寺」のなかでも、最初に人気になったのは鎌倉の明月院です。
早くも1960年代には明月院のあじさいの美しさが人気となりました。少なくとも1965年には「あじさい寺」と呼ばれていました。
それからしばらくは「あじさい寺」の用例は明月院に限られ、「あじさい寺=明月院」でした。
もともと観光寺院ではなく施設が整っていない明月院にあじさいシーズンになると多くの観光客が殺到したことから、1970年代にはすでに「あじさい公害」という言葉が出現したほどでした。

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
明月院にあじさいが植えられ始めたのは1951年ごろと、長い明月院の歴史の中では比較的最近のことです。たまたまヒメアジサイを譲り受けたのを垣根の代わりとして境内に植えたのが始まりです。
それから10年あまりで人気に火がついたことになります。明月谷の湿った立地にある明月院の気候や土壌があじさいの中でも特に乾燥に弱いヒメアジサイにぴったりだったのでしょう。
もともと垣根の代わりとして植えたのであって観光資源ではありませんでしたが、偶然が明月院ブルーを生んだのです。あまりの混雑ぶりに当時の住職も困惑するほどだったといいます。
参考:大澤啓志・荒井恵璃子「我が国におけるアジサイの植栽に対する嗜好の時代変遷」

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
明月院について
明月院は、平治の乱で戦死した山内首藤俊通の菩提を弔うために平治元年(1159年)に創建されました。康暦2年(1380年)に関東十刹の禅興寺が中興された際にその塔頭寺院となりました。明治の廃仏毀釈により禅興寺は廃寺となりましたが、塔頭の明月院のみ残りました。
明月院は歴史ある古刹とはいえ、ビッグネームがずらりと並ぶ古都鎌倉にあっては地味な存在でした。それが梅雨の時期はあじさいで鎌倉一の人気スポットへと変貌します。

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー
拝観情報
拝観時間 | 9:00~16:00閉門 |
拝観料 | 高校生以上 500円 小中学生 300円 本堂後庭園は別途500円 |
住所 | 鎌倉市山ノ内189 |
アクセス | JR「北鎌倉」より徒歩10分 |

鎌倉・明月院のあじさい 2025年6月8日 撮影:MKタクシー