オカメ桜とは?早咲き&イギリス生まれの美しい桜の魅力を徹底解説

目次
春にいち早く開花するオカメ桜(おかめ桜)。早咲き&濃いピンク色の可憐な花が特徴で全国的にも人気が高まっています。
オカメ桜は実はイギリスで生まれた珍しい経歴を持つ桜です。
人気のオカメ桜の特徴や見頃について詳しく解説します!

長徳寺のおかめ桜 見頃 2024年3月8日 撮影:MKタクシー
オカメ桜(おかめ桜)とは?特徴や魅力を解説

長徳寺のおかめ桜 五分咲き 2019年3月12日(平年3月18日相当) 撮影:MKタクシー
オカメ桜(おかめ桜)の基本情報|どんな桜?
河津桜に次ぐ早咲きの桜|見頃と開花時期
オカメ桜は、ソメイヨシノよりも早い3月中旬ごろに咲く早咲きの桜の品種です。
京都では、以下の順番に桜が開花します。
- 河津桜(カワヅザクラ) 2月下旬~3月中旬
- オカメ桜(おかめ桜) 3月中旬~下旬
- ソメイヨシノ 3月末~4月上旬
このように、まだ寒い時期から咲く数少ない桜のひとつです。まだ冬の名残がある時期に花が楽しめるのが魅力です。

長徳寺のおかめ桜 2024年3月8日 撮影:MKタクシー
鮮やかな濃いピンク色の花|ソメイヨシノとの違い
オカメ桜は桜の代表であるソメイヨシノとは色も形も異なります。
鮮やかな濃いピンク色
ソメイヨシノが白に近い薄いピンク色であるのに対し、オカメ桜の花は濃いピンク色をしています。
満開となると木全体がピンクに染まり、遠くからでもよく見られます。

長徳寺のおかめ桜 2024年3月8日 撮影:MKタクシー
小ぶりで可憐な花
オカメ桜の花の直径は1.5cmほどと、ソメイヨシノの4cmよりも小ぶりです。数ある桜の品種のなかでも、かなり小ぶりな品種です。
繊細な花びらが風に揺れる姿は可憐で魅力的です。
やや下向きに半開して咲く花
オカメ桜の花はやや下向きに咲きます。花もソメイヨシノのように全開せず、半開した釣鐘型が特徴的です。
やや下向きに咲くことで、まるで鈴が並んでいるかのように見えます。

長徳寺のおかめ桜 見頃 2021年3月7日 撮影:MKタクシー
樹形の特徴|広卵状でコンパクトなサイズ
おかめ桜の樹形は広卵状をしており、あまり大きく成長しないのも特徴です。
そのため、個人宅のお庭に植える桜としても人気が出つつあります。
オカメ桜は樹高が低くてコンパクトな樹形のため、個人宅の庭木人気もあります。 早咲きの桜を自宅で楽しみたい人にとって、最適な品種のひとつです。

長徳寺のおかめ桜 見頃 2020年3月3日(平年3月20日相当) 撮影:MKタクシー
「オカメ」?「オカメ桜」?「おかめ桜」?表記の違い
「おかめ桜」とも呼ばれるが、正式名称は「オカメ」
一般に「おかめ桜」または「オカメ桜」と呼称されますが、正式な品種の和名は「オカメ」です。
あまりソメイヨシノ桜(染井吉野桜)とは言わないように、品種名を○○桜という呼び方をすることはあまりありません。
しかし、オカメは不思議と「桜」をつけて「おかめざくら」と呼ぶのがしっくりきます。

長徳寺のおかめ桜 見頃 2022年3月21日 撮影:MKタクシー
カタカナ表記の理由とは?
表記もひらかなの「おかめ桜」とカタカナの「オカメ桜」のパターンがあります。
多くの桜の品種は、漢字表記またはひらがな表記の和名を付けられていますが、例外的にオカメは和名もカタカナです。
後述のとおり、日本で生まれた品種ではないことが、カタカナ表記の理由です。

長徳寺のおかめ桜とメジロ 見頃 2022年3月21日 撮影:MKタクシー
品種がオカメではない「おかめ桜」も
「おかめ桜」は品種名でなく桜の固有名詞として使われる場合もあります。
桜の品種名としては、「オカメ」あるいは「オカメ桜」と書く方が正確ですし、誤解される可能性は少ないです。
しかし、「おかめ桜」の方が字面として自然なため、正確さが要求されない場面では「おかめ桜」と表記されることの方が多いです。
本稿では、区別が必要な場合をのぞき、原則として「おかめ桜」と表記します。
おかめ桜(オカメ桜)ではない千本釈迦堂の「阿亀桜」
「阿亀桜」の由来と伝説|千本釈迦堂
京都では、千本釈迦堂にも同じ読みの「阿亀桜(おかめざくら)」があります。
千本釈迦堂の阿亀桜は、「おかめ伝説」で知られる阿亀(おかめ)さんに由来する固有名詞です。
阿亀さんは、知恵で夫の危機を救い、夫の名誉を守るために自害しました。
この伝説が事実なのか、あるいは阿亀さんが実在したのかは不明です。

千本釈迦堂のおかめ像 2020年3月21日 撮影:MKタクシー
今も千本釈迦堂にあるおかめ塚はいわゆるおかめ顔をしています。
伝説自体には桜は出てこないので、後世に千本釈迦堂境内の名桜におかめにちなんだ名前を付けたのでしょう。
阿亀桜の歴史は案外浅いかもしれません。

千本釈迦堂の阿亀桜 2020年3月22日 撮影:MKタクシー
阿亀桜の特徴|エドヒガンの枝垂桜
千本釈迦堂の阿亀桜は、桜の種類としては、エドヒガン(江戸彼岸)の枝垂桜です。
阿亀桜もおかめ桜(オカメ桜)ほどではありませんが、ソメイヨシノよりもやや早く開花します。
京都市中心部最古の本堂の前で、美しい樹形の花を咲かせます。

千本釈迦堂の阿亀桜 2021年3月20日 撮影:MKタクシー
単に「おかめざくら」と言った場合、千本釈迦堂と長徳寺のどちらをさすのかわかりにくい場合が多いです。
少し前までは、京都で「おかめざくら」と言ったら千本釈迦堂の阿亀桜を指す方が多かった気がします。
しかし最近は、おかめざくらと言えば、長徳寺に代表される品種としてのおかめ桜(オカメ桜)を指すことの方が多くなっています。

長徳寺のおかめ桜とスズメ 散りはじめ 2019年3月24日(平年3月27日相当) 撮影:MKタクシー
オカメ桜はイギリス生まれ!その誕生秘話
1947年にイギリスで誕生|なぜ日本でなくイギリス?
おかめ桜は、桜の園芸品種のひとつです。
桜は日本原産の花ですが、おかめ桜が誕生したのは、日本から遠く離れた地です。
おかめ桜は、1947年にイギリスで誕生しました。今から70数年前に生まれた比較的新しい桜の園芸品種です。
著名な桜研究家であったイングラム氏によって作出され、日本に里帰りしてきました。
イングラム氏は、おかめ桜の他にも秋咲きの桜であるアーコレードも作るなど、今の日本の桜にも大きく影響を与えています。

長徳寺のおかめ桜とメジロ 見頃 2021年3月3日 撮影:MKタクシー
おかめ桜を作出したイングラム氏の功績
日本の桜に魅せされた桜研究者の軌跡
おかめ桜(オカメ桜)を作出したのは、前述のとおりイギリスのイングラム氏です。
日本の桜の歴史に名を残す、イギリスの桜研究者コリングウッド・イングラム(Collingwood “Cherry” Ingram)。

イングラムが作出したアーコレード 京都府立植物園 2019年10月6日 撮影:MKタクシー
1880年に生まれたイングラムは、1902年に21歳で日本を初めて訪れたました。
日本の文化と芸術に魅了され、中でも日本の桜に強い関心を持ちました。
1926年に再び日本を訪れたイングラムは、桜=ソメイヨシノ一色に塗りつぶされた状況に驚きました。
絶滅の危機に瀕していた日本の多彩な桜の品種を収集し、イギリスで保存することを決意しました。
日本全国を回って桜を保存する啓蒙活動を行うとともに、珍しい桜の品種収集を行いました。

三好学「桜」 出典:国立国会図書館デジタルコレクション
「桜博士」とも言われた日本の桜研究の第一人者であった三好学(1862~1939)の著書においてもイングラムが全国の桜を巡り、日本の桜が危機にあることを嘆いていたことが記されています。

イングラムが作出したアーコレード 宇治市植物公園 2019年3月30日 撮影:MKタクシー
日本の桜を救ったイングラム氏の貢献
イングラムが集めた多彩な品種により、イギリスのイングラム邸は桜園と言われるようになりました。
イングラムは、桜の収集だけではなく、人工交配によって新しい品種の作出にも乗り出しました。
アーコレードのほかにも、カンヒザクラ(寒緋桜)とマメザクラ(豆桜)の交配種であるオカメ桜や、オオシマザクラ(大島桜)とマメザクラ(豆桜)の交配種の海猫(ウミネコ)などが、日本でも近年人気が高まっています。

イングラムが再発見した太白(タイハク) 京都府立植物園 2019年4月13日 撮影:MKタクシー
古い書籍に記録はあるものの、実物がないため日本では既に絶滅した品種とされていた太白(タイハク)が、イングラムのコレクションから再発見され、日本へと里帰りしました。
今では太白はサトザクラの代表品種のひとつとして、京都に限らず全国いろいろなところで見ることができます。
ソメイヨシノ(染井吉野)一色に塗り替えられ、消えていこうとする日本の多彩な桜を救った恩人として日本でも広く敬愛されています。

イングラムが再発見した太白(タイハク) 京都府立植物園 2019年4月13日 撮影:MKタクシー
世界的な桜研究者として”チェリー”イングラム(Collingwood “Cherry” Ingram)と敬称されるようになりました。
イングラムは、1981年に満100歳の長寿を全うして亡くなりました。
今もイギリスのイングラム邸では、多彩な日本の桜を見ることができます。
オカメ桜を見るときには、日本の桜を救ったイングラムにも思いを馳せてみましょう。
参考文献:阿部菜穂子「チェリー・イングラム:日本の桜を救ったイギリス人」

イングラムが作出したウミネコ 京都府立植物園 2017年4月15日 撮影:MKタクシー
「おかめ」は美人の代名詞?
江戸時代は美人の象徴だった「おかめ」
おかめ桜という名前は、「おかめのような桜」という意味ですが、由来は日本の美人をイメージしているそうです。
たしかに、「おかめ」は古くからは福を呼ぶ顔であり、美人の代名詞として使われてきました。
しかし、江戸時代ごろからは逆に不美人の代名詞としても使われるようになり、近代以降は通常は不美人を意味します。

長徳寺のおかめ桜とメジロ 見頃 2020年3月12日 撮影:MKタクシー
イングラム氏の真意は?
少なくともイングラム氏がおかめ桜と命名した1947年には、「おかめのような・・・」というのは、女性に対する褒め言葉ではなかったはずです。
そのあたりの用法の違いも、おかめ桜が正式にはオカメとカタカナ表記される理由なのかもしれません。

長徳寺のおかめ桜 見頃 2021年3月7日 撮影:MKタクシー
オカメ桜の両親|カンヒザクラ(寒緋桜)とマメザクラ(豆桜)
おかめ桜(オカメ桜)は、桜の自生種であるカンヒザクラとマメザクラの種間雑種です。
両親であるカンヒザクラとマメザクラを簡単に紹介します。
どちらも京都では比較的珍しい桜です。
カンヒザクラ(寒緋桜)の特徴と魅力
台湾や中国南部に自生する桜

カンヒザクラ(長徳寺) 2019年3月24日(平年3月27日相当) 撮影:MKタクシー
カンヒザクラ(寒緋桜)は、台湾南部から中国南部にかえて自生するサクラの野生種です。
日本でも、石垣島などで自生している群落がありますが、人間が持ち込んだものが逸出して野生化したものと考えられています。
早咲きで濃紅色の花が特徴
日本でよく見る桜の中でも一目で識別できる特徴があります。早咲き、花が下向きに開花する、花が濃紅色など。
一見しただけでは、桜とは気づかないかもしれません。

カンヒザクラ(京都府立植物園) 2021年3月17日 撮影:MKタクシー
カンヒザクラを親とする桜の品種
カンヒザクラは、いろいろな早咲きの桜の園芸品種の片親となっています。
オオシマザクラ(大島桜)との交雑種であるカワヅザクラ(河津桜)のほか、マメザクラ(豆桜)との交雑種であるオカメ桜、ヤマザクラ(山桜)との交雑種であるカンザクラ(寒桜)、シナノミザクラ(支那実桜)との交雑種である啓翁桜(けいおうざくら)、天城吉野(あまぎよしの)との交雑種である陽光などが知られます。
ソメイヨシノが開花しない沖縄では、カンヒザクラが桜前線の基準木になっています。

カンヒザクラとヒヨドリ(京都府立植物園) 2019年3月16日 撮影:MKタクシー
カンヒザクラとヒカンザクラの違い
かつては、緋色をした寒桜という意味でヒカンザクラ(緋寒桜)と呼ぶのが一般的でした。
気象庁では今もヒカンザクラと呼んでいます。
しかし、エドヒガン(江戸彼岸)の別名であるヒガンザクラ(彼岸桜)との混同しやすいため、一般的にはカンヒザクラ(寒緋桜)と呼ばれるようになりました。
今はもうカンヒザクラが正式名称と言ってよいでしょう。

カンヒザクラ(二条公園) 2019年3月16日 撮影:MKタクシー
おかめ桜の特徴である濃紅色の花色と、早い開花期、花が下向きに開く点は、カンヒザクラから引き継いだものです。
観賞価値という意味では他の桜と比べるとやや劣るカンヒザクラを美しく品種改良したのがオカメ桜であると言っても、そう間違いではありません。

カンヒザクラ(宇治神社前) 2018年3月25日 撮影:MKタクシー
カンヒザクラは本来は沖縄以南に分布する亜熱帯性の桜ですが、京都でもきちんと手入れをすれば育ちます。
探せば個人宅を含めて結構いろんなところでカンヒザクラが植えられています。
今のところ、京都では名前が付けられるような立派なカンヒザクラはありません。

カンヒザクラ(車折神社) 2018年3月17日 撮影:MKタクシー
マメザクラ(豆桜)の特徴と魅力
富士山周辺に自生する小型の桜

マメザクラ(京都府立植物園) 2019年3月24日 撮影:MKタクシー
マメザクラは富士、箱根などを中心とした本州中部に分布するサクラです。
富士山の周囲でよく見られることから、フジザクラ(富士桜)とも呼ばれます。
花の大きさも、樹の高さも桜の仲間としては小さめなのが名前の由来です。

マメザクラ(車折神社) 2018年3月17日 撮影:MKタクシー
京都を含めて本州西部では、萼筒(がくとう)が非常に長い変種であるキンキマメザクラ(近畿豆桜)が分布します。京都周辺の山野でも自生しています。
カンヒザクラの親はキンキマメザクラではなく、マメザクラとされています。

ふじ桜(百万遍知恩寺) 2020年3月3日 撮影:MKタクシー
京都では、百万遍知恩寺のふじ桜が有名です。
ふじ桜という固有名詞が与えられているわけではなく、マメザクラの別名であるフジザクラに由来します。
他にも京都でマメザクラと思われる桜を見かけることはありますが、著名な桜はありません。

マメザクラとメジロ(車折神社) 2018年3月11日 撮影:MKタクシー
マメザクラを親とする桜の園芸品種
秋咲きの桜である、十月桜(ジュウガツザクラ)や冬桜(フユザクラ)の片親となっていますが、マメザクラを片親とする桜の園芸品種はそれほど多くはありません。
それなりに有名なのはウミネコ(海猫)くらいです。ウミネコもオカメ桜と同じくイングラム氏によって生み出された桜です。

ウミネコ(京都府立植物園) 2019年4月7日 撮影:MKタクシー
おわりに
ソメイヨシノに先駆けて3月半ばに開花し、毎年話題になるのがおかめ桜です。
京都では、出町柳の長徳寺が有名です。
あまり見かけない品種の桜ですが、最近では個人のお庭なんかでも見かけることもあります。
今後も、京都にはおかめ桜の名所が誕生していくのではないでしょうか。
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