エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【395】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【395】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2021年3月1日号の掲載記事です。

 

 

本だけ眺めて暮らしたい

インターネットには無料で読める本――小説やエッセイ、評論などが無数に公開されている。
なかでも「青空文庫」は、特に有名。著作権の切れた文芸作品などを有志がボランティアでデジタルテキスト化し、それらを誰もが無償でダウンロードできるという仕組みで、スマートフォンやタブレットの対応アプリ(無料あり)を利用すれば簡便に電子書籍として読書が楽しめる。
夏目漱石や谷崎潤一郎、太宰治、宮沢賢治、江戸川乱歩、夢野久作、チェーホフ、カフカ、与謝野晶子訳「源氏物語」など、さながら文学全集のようなラインナップ。
こういった名作、古典が好みなら、無料の青空文庫だけでも死ぬまで? 読むものに不自由することはない。
青空文庫を利用するためだけにタブレットを購入しても、それだけの価値は十分にあると言えるのではないだろうか。

また、新刊でも、例えばミャンマーの僧侶ウ・ジョーティカの法話を書籍化した『ゆるす』(おすすめです)は、2015年に新潮社から四六判ハードカバーで単行本が刊行されたのだが、実は、翻訳者は関係サイトでテキストデータ全文を無料で公開している。
つまりこの新刊本は、紙の書籍で読むなら1,300円必要だが、インターネット経由の電子版なら無料というわけだ。
それなのに紙の本をなぜ出版するの? 買う人がいるの? と思うかもしれないが、ネットはその本(の無料データ)の存在を知っていて直接アクセスあるいは検索でヒットしなければ、リンクという偶然以外にたどり着くことは難しい。
スマホが普及した今でも、有料でも、逆に書店に並ぶからこそ届く(目にとまる)場合がまだまだ多い。いや、それ以前に、電子書籍を日常的に利用しない人がほとんどなのだろう。

ところで、私が愛読している音楽雑誌エリスも登録すれば電子版(epub形式)は無料。一方で、1,760円(最新三十一号)払えば紙の本を購入することもできる。
編集長・萩原健太、亀渕昭信、北中正和、ピーター・バラカンなど、この分野で望める最高の執筆陣で、年三回発行。

もう一つだけ、とっておきの情報を。大同生命国際文化基金は、図書館に限って寄贈していた本「アジアの現代文芸」叢書を電子化(epub形式)、無料で提供している。
イランやタイ、トルコ、フィリピン、ベトナムなど十数か国、数十冊の貴重な翻訳本が読める。
私は自分の本当にお気に入りの店などはメディアの記事で絶対に紹介しない。そう、客が増えると困るから。でも、デジタルなら問題はない。

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

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