山の一家*葉根舎「葉根たより」【71】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2022年11月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
今年もひらりとやって来てくれました。渡りの蝶、アサギマダラ。
草刈りできておらず、ミゾソバ、ヨメナ、そして藤袴が咲き乱れる庭に舞う様子は楽園のようです。
「水始涸(みずはじめてかかる)」「蟋蟀在(きりぎりすとに)戸(あり)」田の水を落とし、稲穂の刈り入れ始まり、キリギリスが戸口で鳴く頃。昔の人はツヅレサセコオロギをキリギリスと呼んでいたそうです。
<いろいろなお客様>
トンボ舞い、虫の音響き渡る中、稲刈りが始まりました。
九月下旬からひと月ほどかけ、それぞれの品種のタイミングで葉根ヒカリ、イセヒカリ、餅米、黒米を刈ります。
野兎にかじられながらも収穫ができることへ感謝。
新米の輝きはやっととれた喜びを、お米が体現してくれているかのように感じます。
新生姜、サツマイモ、マコモタケ、里芋の収穫も始まり、大根、人参播いたり、白菜の定植も。
十年ほど前、草抑えのためにたくさん草を刈って敷き、白菜の定植をしたらその枯れ草にコオロギが集まり、苗を半分くらい食べられてしまいました。
それからはしっかり苗を大きくしてから定植するようにし、多少かじられても負けないよう気をつけています。
先日、居間でコオロギ一匹。
春はムカデ、夏は毎夜網戸にヤモリ、夏の終わりからはいつの間にか家の側に巣を作っていた黄ミカンバチがよく家に入って来ていて、「うちはお客さんが多いねえ。」と末っ子かや。
かわいい子、危険な子、いろいろなお客様たち。
かやはうっかり黄ミカンバチに手を刺され、手の大きさが三倍に。
腫れただけで特に他に症状はなく、雪の下の葉などで手当てし、一週間後にはすっかり治っていました。
蜂の危険さを身をもって感じたようで、少し用心深くなりました。
<すべては山から>
山の男げんは、自然栽培の田畑、自然養蜂、薪窯自家製天然酵母パン焼きの他に、もう一つ大好きな仕事があります。
秋から春にかけての山仕事。仲間と山に入り、間伐し、風通しをよくし、ホダ木、薪を頂く。
冬至までに伐ると、ひこばえが勢いよく生えてきて、山を若返られてくれます。
暮らしや田んぼの水を山から頂き、毎日の火も山から薪を頂く日々。
山の状態が良いものでなければ、私たちの毎日もこのままではなくなってゆきます。
獣が食べ物を求めて山から出てきたり、土砂崩れが増えたりと、すでにバランスが良い状態でないことも肌で感じています。
森林の状態に合わせてする仕事は、土の様子を見ながらする田畑ともつながるのでしょう。
危険も伴う仕事なので、毎回怪我がなかったことに安堵しながらも、大切な仕事を楽しそうにしてくれることに感謝しています。
私はげんが山や田畑でしていることを、絵でしたい、そう想い描く日々です。
<からだのーと>
寒くなると、腎臓と膀胱が弱りやすくなり、足腰や耳、骨のトラブルにつながります。
身体を冷やす果物や生野菜、甘いものなどの嗜好品、動物性食品、アルコールを控え、ゴボウ、レンコン、人参などの根菜類をじっくり炊いたり、海藻、昆布の佃煮、小豆昆布などを頂きましょう。
遠くで作られたものではなく、近くで採れた旬のものを頂くと良いということですね。
<展示案内>
十一月九日から十五日、あべのハルカス近鉄本店十一階アートギャラリーにて、絵画の展覧会を致します。
「ハタノワタル・大森梨紗子二人展ー紡いできたものー」二人に共通するのは日本の片隅にある山間の小さな集落での暮らし。
そこで紡がれてきた営みを続けてゆくということ。そんな中で生まれた絵画の展覧会をぜひご覧下さい。
(十月十二日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事
1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)