山の一家*葉根舎「葉根たより」【40】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【40】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2020年4月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

大地が暖まり、土の中の虫たちが穴を開いて顔を出す啓蟄。長男つくしも虫のように、時間をかけてゆっくりもぞもぞ、啓蟄に生まれました。
例年はまだ雪が積もっている頃ですが、今年は暖かいのでつくしを産んだ埼玉の気候のようで、その時のことを深く思い出します。
「桃始笑(ももはじめてさく)」「雀始巣(すずめはじめてすくう)」
桃の花の蕾が開きかけ、雀が巣作りを始める頃。命が動き出す季節ですね。私の大好きなおおいぬのふぐり、はこべ、姫踊子草も早くも満開。今年も足下に広がる星空が美しいです。

 

<光の笑顔>

みなさん、ウィルスの影響による社会状況の変化に大変な思いはされていないでしょうか。わが家の子供たちも小中高がお休みになりました。山で暮らしていると社会の変化を直接感じにくいので、早く春がきたように春休みも早くやってきたような気分でいます。
子供たちは兄弟仲良く遊んだり、お手伝いをしたり、時々三男が泣く声が山に響きますが、一人で泣いてスッキリするか、次男が機嫌をうまくとりおさまるので、私が出ることはなく、泣き声も末っ子は可愛いなあ、と呑気にしています。ご飯とおやつ作りの量は増えますが、家の周りで採れた安心な食材でたっぷり作ることができるので、本当にありがたい。
今回の問題で流通にも問題が出てくると思いますが、暮らしの中で使用しているものを改めて見直す機会にもなると思います。遠くから運んでくるものは最小限にし、長く大切に使う道を選んでいきたい。他にも様々なことを見直す機会、困難に直面する分、良い変化が訪れますように。
さて、子供たちのお手伝いといえば、洗濯、風呂焚き、かまどに火をつけたりなど毎日の家事は学校があってもすることですが、お休みの分、たくさんしてもらえて助かります。そして、田畑の準備や薪運びなどの外仕事も。
最近は、田畑の柵直しをしました。暖冬と言っても、50㎝ほどの雪が3回降ったので柵があちこち倒れ、鹿が出入りするようになっていたので、早めに直して鹿が入る癖をなくすようにします。
それから、空いている土地にリンゴの苗木を植えるために草刈り。四年間放棄されていたので、ススキの根っこ取りなど大仕事。帰ってきた子供たちは、疲れ切ってお腹がペコペコでした。無農薬リンゴが取れる日が楽しみです。
お手伝いで身体を動かしたり、マイペースに遊んだり、気が向いたら宿題をしたり、穏やかな時間が流れていきます。同じ日本でも、環境は様々な子供たちがいると思います。夫婦でお勤めをされているご家庭はうまく乗り切れているのでしょうか。毎日少しでも、どの家庭にも笑顔の明かりが灯ることを祈っています。

 

<大地の食事>

うちの食事は、田畑でげんが育ててくれた自然栽培の農薬肥料不使用のお米とお野菜が中心です。かまどで土鍋でお米を炊き、炊いている間にお野菜を切り、お米が炊けたらその火の続きでお味噌汁、煮物や炒め物をします。ガスコンロと違い、火を消したりつけたりできないので、段取りを考え、火の無駄が出ないように料理をします。
ある野菜も種類が限られているので、いろんな切り方をして料理にバリエーションが出るように。たまにお肉やお魚を料理すると、切る手間がなくボリュームが出るので、なんて楽なんだろう! と驚きます。
野菜の陰陽のバランスを考え、野菜の感触を大切に、その力を損なわないように切り、土鍋や鉄鍋に一種類ずつ入れては少しのお塩をし、陽性になるように丁寧に料理を作ります。その分、品数は少なく質素な食事です。部付き米ご飯とお味噌汁とお漬物、そこに煮物や炒め物などのメインのおかずが一品。現代食はおかずが多すぎて食べ過ぎの病が多いので(癌という字は品が山盛りという字です)、私はお米を食べ進めるためのおかずという感覚で作っています。
お米は本当に力いっぱいの植物ですから、しっかりお米を食べることで子供たちは元気に育っています。
そんな大地に根差した食をいただいていると、心も安定してきます。みんなが命の力がたくさん詰まった食事をして、いつでも落ち着いた身体と心であれたらと思います。

 

<からだのーと>

四月十七日から五月四日(立春前日)までは春の土用。自律神経のトラブルが増えるので、よもぎやふきなどの野草をいただき、少食にし血液浄化を促し、心を安定させます。土用は胃と膵臓が弱りやすくなるので、甘いものを控え、よく噛み、ご飯の甘みを楽しみましょう。春は排毒の季節なので、冬に溜まったものをしっかり出せるよう、野草などを取り入れた食事を心がけたい時季です。

 

<展示のおしらせ>

四月十一・十二日は、わち山野草の森での野外展「森の展示室」へ出品します。四月十一日は山の暮らしと制作のトークもします。季節を楽しみに、ぜひお越しください。
四月二十二日から五月二日は東京都銀座のステップスギャラリーの小品展、Art Cocktailへ出品します。こんな今だからこそ、作品からも山の穏やかな暮らしの空気をお届けしたいです。

(2020年3月10日記)

 

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

 

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「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

 

葉根たよりのバックナンバー

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