山の一家*葉根舎「葉根たより」【35】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【35】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2019年11月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

鳥たちの唄はどこへいったのだろうと思うほど、山は虫の音が響き渡っています。色づき落ちる葉も少しずつ、山々が渋い緑になり、秋の陽に照らされ落ち着いた表情を見せています。
「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」「菊花開(きくのはなひらく)」
蟋蟀が戸口あたりで鳴き、菊の花が咲き始める頃。嫁菜、菊芋の花、ハキダメ菊、藤袴、曼殊沙華…秋の花々はどこか線が細く、はかなげで美しく感じます。

 

<山からの贈り物>

山や大地からたくさんのめぐみが届く秋。あけび、栗、生姜、里芋、そして稲刈り。前半は九月下旬に刈り、後半は十月中旬、黒米は十月下旬。毎年種をとり、苗から大切に山の中でゆっくり育てた稲の実りは、なんとも言えない充実感に満ちたものがあります。夫のげんは、毎年少し手の入れ方を工夫し、収量を見て、また来年に向けて改善策を考えているようです。
畑には、九月下旬に水菜と蕪、春菊、小松菜、遅めの大根を蒔きました。早く蒔くと虫に食べられてしまうので、少し気温が下がってから蒔きます。間引き菜が瑞々しくておいしいです。
そして、この時期は何といっても真菰茸(まこもだけ)。「万葉集」にも出てくる真菰は、古代から病気を癒したり、邪気を払う霊草として大切にされ、縄文中期の遺跡からも発見されています。現代でも出雲大社の神事などで用いられているそうです。
血液の浄化、細胞の活性化をし、食物繊維豊富で、癖がなく甘みがあっておいしい真菰茸。我が家では、寒さに向けての身体つくりに欠かせません。

 

<目に見えるエネルギー>

来る冬への備え。やはり秋が中心にはなりますが、薪の準備は前回の冬から始まります。冬至までに木を倒し、玉切りし、春が終わるまでに薪割りをし、夏に乾かす。理想を言えば、前々回の冬から準備し、2年かけてしっかり乾かしたいのですが、かまど、五右衛門風呂、薪ストーブ、パン焼きなど、ガスを使わないわが家は、年中薪のおかげで暮らしているので、なかなか準備が追いつきません。
げんは村の区長も務め、村のためにも駆け回っているため、今年はなんと今頃来年一月の薪を割っています。短期間でも乾くよう、乾燥が弱くても火がつくよう、四等分のところ八~十等分に割っています。こんな時、子供たちの協力が本当にありがたいです。
そして、エネルギーが物質として目に見えると、感謝が自然にわいてきます。

 

<穏やかな子供たち>

農業高校に通う長男つくしは、宿題で時々家の手伝いがあります。なんと嬉しい宿題(笑)
薪割りよりも薪運びが好きだったつくしですが、大きくなりました。広がる薪の海の中、淡々と割ってくれています。毎日、山から自転車で高校へ通う日々、体力がついてきたようです。
気が利く優しい次男すぎなは、私の留守中、転んで大泣きする三男かやを背負い、わが家で作っているビワエキスとミツロウクリームでちゃんと手当てをしてくれ、かやの傷はすぐに良くなりました。
そんな末っ子かやも、十月で九歳。家では末っ子らしく一番にぎやかですが、穏やかでおとなしいわが子たち、学校はにぎやか過ぎて、ちょっと疲れるそうです。

 

<からだのーと>

十月二十一日から十一月七日(立冬の前日)は秋の土用。呼吸器や皮膚の疾患が増えるので、甘いもの、冷たいもの、乳製品、油物はなるべく控え、素食、少食にしましょう。土用の期間は、よく噛むことが大切です。

 

<展示の案内>

十一月一日から十六日まで、兵庫県朝来市和田山町のUSAGIYAというカフェで、山の暮らしを綴った「めぐり草子」の原画展を行います。
十一月三十日から十二月八日までは、大阪・北浜にあるギャラリー風で個展をします。
お時間がありましたら、ぜひお越しください。
空気が澄んでゆく秋、夜空に浮かぶ月が美しいですね。台風などの自然災害が年々厳しくなりますが、どこの地域も穏やかによい秋を過ごせますように。

(2019年10月10日記)

 

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

 

葉根たよりのバックナンバー

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