フットハットがゆく【318】「猿の惑星」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2020年5月1日号の掲載記事です。
猿の惑星
田舎暮らし初心者にもついに春が来て、いろいろと動き出す季節です。
自家菜園の第一歩として、ジャガイモを植えました。芽が出るのを待っているところです。
芽が出ると、シカ、イノシシ、サルが来て畑を荒らすそうなので、防御柵を設置せねばならず、その準備にもかかっています。
サルに関しては、その何十匹という集団がどこにいるのかという情報が、メールで知らされるサービスに登録しました。
現時点では、自宅から5キロほどの山に集団の一つが迫っています。
ご近所さんから聞いた話では、サルはジャガイモをたいして食わないのに全部引っこ抜いてしまうそうです。なんということでしょう。
食べないのなら引っこ抜きなさるな! と思うのですが、それはサルの習性のようです。
秋になればカキの木にも集まり、一口かじっては捨て、また新しいカキをもいで、一口かじっては捨て、なんというもったいないことをなさるのですか?と思います。
植物側にしてみれば、サルの物を散らかす習性により、種子やタネイモが拡散されて、より広い範囲に生息地を広げられる、というありがたいことかもしれません。
自然界では自由にそうなさればよろしいが、人間が大事に育てて食べるのを楽しみにしていたものまでくちゃくちゃにされれば、これは黙って見ざるというわけにも行きません。
といっても、シカやイノシシを防ぐための鉄柵など、サルにとってはジャングルジムのようなもの、平気で乗り越えて来ます。
とにかく僕は田舎暮らし一年生なので、すべての経験はゼロで、伝聞による話ばかりを紹介していますが、じゃあ実際サルが来たらどうするのだ?と言いますと、爆竹やロケット花火で脅かす、パチンコやエアガンで痛がらせるなど、人間を怖いと思わせることが大事だそうです。
少しでもナメられると、逆に威嚇して来たり襲って来たりして、人間よりサルが上位に来るという猿の惑星状態に…。
犬を飼う、という初歩的な対策もありますが、ちゃんとサルを追い払うよう訓練されたモンキードッグなる犬でなければならないそうです。
繋がれてただ吠えるだけの犬は、賢いサルから「危険ではない」と判断され、犬猿の仲といえども無視されるそうです。
サルが意外と怖がるのがヘビで、マムシなどの毒蛇がいそうな草むらには近付かないそうです。
じゃあマムシをいっぱい飼育して、畑や柿の木の周りに大量に放しておけばいいじゃないか?…とは、絶対思わないですよね、誰も。
ちなみにサルが好きなものは甘くて栄養があって楽に食べられる作物、カキ、スイカ、カボチャ、さつまいも、モモ、クリ、トウモロコシなどです。
逆に嫌いで食べないのは、トウガラシ、シソ、ゴボウ、ショウガ、ワラビなど辛味やアクの強いもの。
まるで子どものような味覚ですね、と言わざるをえません。
実際にサルが民家まで来て農作物を食べるようになるのは6月ごろだそうです。
まだ見ぬ野生のニホンザル軍団、早く会いたいような気持ちと、来るな来るなという気持ちが、混ざる!
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