フットハットがゆく【297】「城の青い紙」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2018年8月1日号の掲載記事です。
城の青い紙
6月、7月はサッカーのロシアW杯で盛り上がりましたね。
日本の試合以外にも、毎日のように試合をチェックしたので完全に寝不足月間でした(笑)。
今大会でも、日本のサポーターが試合後の会場のゴミ拾いをして、海外のメディアからも賞賛されました。
もともとこの、サポーターが客席のゴミを拾うという行為はどこから始まったかというと、Jリーグのとある球団の経営難から、客席の清掃員も雇えない状況に陥ったところ、それを知ったサポーターが球団の負担にならないよう、試合後清掃して帰った、というところが始まりのようです。
思い出しますと、1998年に日本がW杯に初出場した第一試合、日本vsアルゼンチンの試合を、僕はフランスのトゥールーズまで観戦に行きました。
試合が始まる前に、女の子のサポーターが来て、「すみません、城彰二のファンなのですが、選手紹介の時に一緒に紙吹雪を撒いてもらえませんか?」と、葉書大の青い紙の束を渡されました。
城彰二は当時の日本のエースです。ハンコで一枚一枚『城彰二』と押してありました。
その客席あたりの大勢の人が、いろんな日本選手名のハンコが押された紙吹雪を預かり、その選手紹介の時に空中に舞い上げたのでした。手にしているときは葉書大で紙吹雪としては大きすぎるのでは? と思いましたが、舞い上げてみると、客席が青に彩られ、本当に綺麗で華やかでした。
試合に勝った場合に撒いてほしい、という紙吹雪も預かっていましたが、それは撒けませんでした。
で、サポーターたちは試合終了後、自分たちで撒いた紙吹雪は、自分たちで回収して帰ろうということで、全部拾って、会場をキレイにして帰ったのでした。
紙吹雪には選手名も押してあるので、ゴミとして残して汚名とならないようにとの配慮もあったかもしれません。
とにかくその1998年のフランス大会、日本初出場の時から、日本のサポーターのゴミ拾いは話題となりました。
ちなみに僕は城彰二の紙吹雪を一枚記念に持ち帰って、しばらく部屋に飾っていました。
4年おきのW杯のたびに、あの青い紙を思い出します。
紙吹雪といえば、ブラジル人が紙吹雪好きです。
僕は小学生の頃にブラジルのサンパウロに住んでいました。
W杯でブラジルが勝とうものなら、高層マンションの窓という窓から紙吹雪が撒かれ、街じゅうがきらびやかになりました。
僕も子供心にその紙吹雪撒きが面白くて、サッカーとは関係なしに、一緒に撒いていました。
その時の紙吹雪は、1センチ大の色様々な紙切れで、スーパーでも紙吹雪の大袋が売っていたりもしましたが、自分で包装紙や折り紙を切って作ったりしました。
大量に撒かれてゴミとなった紙々は、街の清掃員が掃除します。
紙吹雪に限らず、ブラジルの人はポイポイと道にゴミを捨てます。
街からゴミが消えると清掃員の仕事がなくなって困るから、捨てた方がいいのだ、という発想の国でした。
本当にお国によって文化の違いはあるものです。
30年以上前のブラジルの話ですから、今はどうか知りませんが…。
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