フットハットがゆく【263】「職業病」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【263】「職業病」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2015年10月1日号の掲載記事です。

 

職業病

先月の号で、僕がディレクターをしているストリートダンスの番組『B-TRIBE TV(ビートライブ ティービー)』の放送日が、木曜から火曜に変わりました、とお伝えしたばかりなのに、また10月から放送日が変わることになりました。
10月9日より毎週金曜日、23:30~ KBS京都放送 5ch、となります。
何度も告知してすみません。
3ヵ月で放送日が2回も変わり、ポスターやフライヤーの作り直し、WEBサイトなどの修正など大変ですが、10月で300回目の放送を迎え、とにかく5年半、毎週休まず継続できているということはよいことだと思いますし、いろんな人に感謝です!

さて、継続というと、僕もかれこれ20年以上、テレビやビデオ制作など映像の世界に携わって来ましたが、最近、職業病というか、まともに見られるテレビ番組が少なくなってきました。それは、スタッフの苦労が見えてしまうからです。
例えば旅番組があったとして、タレントさんが道の向こうから歩いてきて、カメラの前を通り過ぎ、向こう側へ去っていくカットがありました。
よくあります、こういうカット。
これ、カメラマンの立場からすると、去っていったタレントさんを追いかけて、追い抜き、また前から狙わないといけない、そのカメラと三脚を担いで被写体を追い抜き、追い去り、追いかけ回すしんどさを考えると、もうまともに見られないのです。
自分がヒマラヤの山道で追いかけたあの時、ヨルダンの砂漠で追いかけたあのシーン、そんなこんなを思い出すと、画面を見ているだけで息切れしてきます。
昔あった探検番組で、タレントさんがジャングルの奥地に出かけ、前人未踏の謎の洞窟に、ついに人類が初めての一歩を踏み入れました!…という映像を、洞窟の内側から撮っていて、視聴者から、カメラマンが先に入ってるじゃん、未踏じゃないじゃん、と突っ込まれた例もありました。
そんなのを見ても、スタッフの苦労が眼に浮かんで涙が出てきます。

編集や構成の苦労も見えます。
例えばインタビューの編集でも、編集しやすいしゃべり方をする人と、そうでない人がいて、20秒くらいのインタビューに5カットくらい切られていたりしたら、編集の人、相当苦労したろうなと思って同情の涙が出ます。
1つの質問に答えるにしても、要点がなかなか出てこなかったり、主語がなかったり、てにをはを間違えていたり、そもそもしゃべっている情報が間違っていたり、え〜とかあ〜とか言う時間ばかり長くて内容がほとんどないとか。
番組には制作費があり全国ネットの1時間番組などは制作費が1本2,000万円くらいしたりして、それで換算すると1秒5千円の制作費。え〜、と、あ〜で1万円飛んでいく。
制作費、制作時間、放送時間、その他諸々のしがらみと戦いながら編集している人のことを思うと泣けてきます。

夜中に晩酌しながらテレビ番組を見て、番組の内容など覚えておらず、スタッフの苦労に共感してボロボロ泣きながら見ているって、やっぱり職業病ですよね…。

 

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