フットハットがゆく【186】「不安ブル2」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【186】「不安ブル2」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2009年8月16日号の掲載記事です。

不安ブル2

夏といえばやっぱり虫ですね。
前回に引き続き、図鑑を見て面白いと思った虫の生態を紹介します。

律儀な父子家庭『コオイムシ』

…卵は生みっぱなしの昆虫が多い中、母親が卵を守るハサミムシを前回に紹介しました。
ハサミムシのオスはまったく子育てには関わらないのですが、今回は逆のパターンを紹介します。
コオイムシです。この虫は水棲でタガメに似た形をしています。
メスは交尾後、なんとオスの背中に卵を生みつけます。
孵化するまで、オスは背中に卵を背負ったまま過ごし、外敵から守ります。
そこから「子負い虫」と名付けられました。
この、子連れ狼的な虫が背負う卵は50個から100個、しかし、必ずしも1匹のメスのものではないといいます。
数人の奥さんの子を一手に引き受ける律儀な父さんの背中を見て、子たちは育つわけですね。がんばれパパさん!

ウンチに化ける『ムシクソハムシ』…

ものすごい名前でしょう? 漢字をあてると『虫糞葉虫』ですね。
葉を食すハムシで、一応甲虫(カブトムシやクワガタの仲間)なのですが、なんと色といい形といい大きさといい、虫の糞にそっくりなんです。
葉っぱの上に落ちている黒く小さな粒、虫の糞…という擬態を使って、外敵から身を守っているわけです。
それでもいよいよ危険が近付くと、足を縮めて本当の糞のようになって葉っぱから落っこちてしまうそうです。
誰も彼を捕まえることはできません。
ちなみに幼虫の頃は、虫糞の形をしていないのでどうするかというと、自分の糞をかぶるそうです。
そこまで虫糞にこだわるとは、いやはや脱帽です。

昆虫リンドバーグ『ウスバキトンボ』…

羽が薄く黄色のトンボ。
お盆の時期に多く見られるので、「盆トンボ」「精霊トンボ」などとも呼ばれます。
ご先祖様の使いなので殺してはいけない…という迷信もあります。
このトンボは非常に寒さに弱く、冬になれば成虫はもちろん、水中のヤゴや卵も死滅します。
冬に絶滅したはずなのに、次のお盆が来ると日本全国に現れます…まさにあの世から飛んで来たトンボなのでしょうか?
いえ、実はこのウスバキトンボはナチュラル・ボーン・フライヤーともいえる飛行の達人なのです。
他のトンボと違い体の構造が非常に軽く出来ており、あまり羽ばたかずグライダーのように飛びます。
よって、長時間飛行が可能で、捕食も交尾も産卵も飛びながら行ない、生まれてから死ぬまでほとんど飛んだままです。
最初に発生するのは沖縄以南といわれています。その後、海をわたり北上。
1ヵ月で卵が成虫になるため、温かくなった本土でどんどん世代交代をくり返し、北海道にまで達するわけです。
「翼よ、あれが宗谷岬の灯だ!」とウスバキトンボがいうかどうかわかりませんが、日本大縦断を果たしたあと、やがて来る冬には全滅します。
虚しくも壮大な人生というかトン生というか…。

※リンドバーグ…大西洋単独無着陸飛行に成功した飛行家。「翼よ、あれがパリの灯だ!」のセリフが有名。
※宗谷岬…日本最北端の地とされる。

 

 

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