フットハットがゆく【103】「諸辺アート」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【103】「諸辺アート」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2006年2月16日号の掲載記事です。

諸辺アート

前回、「ドイツワールドカップのチケットを取る!」と僕は豪語していたが、ものの見事にすべての抽選に外れてしまった。
チケットを取るのはかなりの倍率と踏んで、三重、四重のルートから購入を試みていたが、全部外れてしまい、がっかり。
めちゃめちゃ落ち込んで、自暴自棄のやけのやん八になっていたのだが、まぁそれはおいておいて…。

さて、トリノオリンピックの開幕が2日後と迫った日に、僕はこの原稿を書いているのだが、この号が出る頃、いったいどのような展開になっているのだろうか?
人それぞれ、観戦ポイントは違うと思うが、僕は一応、映像(ビデオ、テレビ)の仕事をしているので、今回は映像感覚的な面から書いてみたい。

僕がテレビスポーツ観戦をしていて思うのは、「勝つ選手は格好よくテレビに映る」である。
格好よくテレビに映るためにはまず顔つきをはじめとした、選手自身に格好よさがないといけない。
それは容姿的なことではなく、アスリートとしての格好よさのことである。
しかしどんなに本人が格好よくても、テレビにはタイミングというものがあるから、必ずうまく写してくれるとは限らない。

例えばレーススタート前の選手紹介のシーン…
テレビ的には個々の選手がドアップで抜かれるシーンである。
いざ自分の紹介の番になると、他の選手がカメラの前にかぶってしまっていまいち顔がよく見えなかった…。
こういう選手は運がないと見てよい。したがってレースでも勝てない。
勝つ選手は、なんか偶然サングラスの縁がキラリと光る瞬間が撮られたり、うまく逆光になり後光が射したような映像が映ったりなど、とにかく勝負が始まる前から映像的に格好よく映る。

野球なども分かりやすい。
投球の前にバッターとピッチャーが交互に映る。いったいどちらがテレビに格好よく映ったか?
あくまで見る人の主観的なものだが、慣れてくるとこれで勝負の行方をある程度占える。
イチローのように、どう見てもバッターボックスの中で格好いい選手でさえ、テレビとのタイミングが悪ければ、ごく普通に映ってしまうことがある。
そのような場合は、凡打となってしまうのだ。

ちなみに、撮る方は撮る方で、常に「いい絵を撮りたい!」と思っている。
偶然撮れる場合もあるが、やはりカメラマンの技術と信念がものをいう。
必死に勝利を目指す人々と、必死にいい映像を撮ろうとする人々、そのコラボが奇跡的にうまくいった時、そこに芸術的な映像と勝利が生まれる。
選手にまつわるいろいろなエピソードなどに感動することもあったりするが、言葉巧みに作られたストーリーやドキュメントは、なんかマスコミに踊らされているようであまり好きではない。
言葉は嘘をつけるが、アートは嘘をつかない。
ということで、映像諸辺に絡んだアート的なものを求めて僕はテレビ観戦をする。
どうかトリノでも日本選手たちの輝くアートが生まれますように!

ジョン・ベアード 1888~1946 イギリスの電気技師。1920年代にテレビの開発に成功。

ジョン・ベアード 1888~1946 イギリスの電気技師。1920年代にテレビの開発に成功。

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