山の一家*葉根舎「葉根たより」【72】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2022年12月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
錦に彩る山々、キラキラと暖かな陽射しをうけて舞う葉っぱたち。
その美しさに目を離せず、ただただ眺めていたい気持ちになります。
「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」「山茶始開(つばきはじめてひらく)」「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」もみじや蔦が色づき山粧い、サザンカ咲き始め、冷たい風が木々の枯れ葉を落とす頃。
立冬を迎え、紅葉がまたひとつ進み、山の者たちも、私たちも来たる冬へ向けて整える時期に本格的に入りました。
<次の季節へ>
稲刈りを終えた田んぼ、周りを草刈りして田に草を入れたり、溝を掃除し、来年に向けて整えておきます。
畑では、人参や大根がすくすくと育っています。
秋は大根の葉っぱが瑞々しく美味しく、立冬を迎える頃から太ってきて、コトコトかまどに土鍋をかけて炊く煮物が美味しい季節となります。
今年は、約七千年前に栽培されだした古代小麦のスペルト小麦を友人に分けて頂き播きました。
播いた翌日からカラスがやってきて、芽が出るかハラハラしましたが、小さな可愛らしい芽が出て一安心。
でもこの後は野ウサギもきっとやって来るので気を抜けません。
こうした生き物に狙われなければどんなに楽だろうかと思います。
今年の大豆は野ウサギで全滅。
かろうじて種にする大豆だけは確保。
お味噌にする大豆は友人に少し分けて頂き、販売用は作れませんが、自家用だけはなんとか作ることができます。
その友人は里芋ができなかったので、物々交換となりました。
助け合える友がいることへ感謝です。
<植物の時間>
こうして日々大地と対話する暮らしなので、植物の営みに関する本が大好きです。
大地の中では根と共生する菌類を介し、情報伝達、栄養の分け与えなどをする植物たち。
空気中では、虫がやって来たらその信号を含んだ物質を発し、そのことを周りの植物へ知らせ、香りでその虫が好物である虫を呼ぶとか。
日光を確保し生き抜いていくことにも必死ですが、豊かな環境がないと生きていけないことも忘れずに生きている植物たち。
人間の暮らしは随分便利になったにも関わらず、情報に追われ、目先のことしか考えなくなり、長い営みを続けていくことから遠ざかってしまいました。
植物たちが育む時間を感じることで、見つめ直せることがあることを感じます。
そのような時間を含んだ絵画空間にしたいと思い描いています。
<山の男>
夫げんも、大地や山との対話を大切に過ごしています。
秋に入ると始まる山仕事。
冬至までに木を倒すと、春に勢いよく蘖が生え、山が再生するので暦を基準にしています。
その中でよりよいタイミングを考え、山の様子を観察しながら山の再生について向き合う日々。
昔、炭焼きや植林で一度手を入れた森は、責任を持って人が手入れを続けないとバランスのとれた状態を保てないように感じます。
人々の暮らしに欠かせない水や薪を与えてくれる山々、感謝を持って恩返しをしていきたいです。
<からだのーと>
12月22日は北半球で一番昼短く、夜長くなる冬至。
節目の中でも最も大切にされてきた、太陽に感謝する日です。
この日にローマで太陽を祭るお祝いをしていたことが、クリスマスの起源であるという説もあります。
この日に向けて心身、身の回りを整えていくと、スムーズに年末年始の準備にも入れるように感じます。
寒さも増してゆく時期、根菜類で身体を温めつつ、春菊など季節の青菜などデトックスもしていきましょう。
食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富で免疫力もつけてくれます。
さて、この葉根たよりは今回で最後とすることにさせて頂きました。
山の暮らし、展覧会情報の発信は、ホームページやインスタグラム、フェイスブックでもしております。
SNSが苦手な方もいらっしゃると思いますが、よかったら山の風景と共に楽しんで頂けましたら幸いです。
これまでご覧頂き、誠にありがとうございました。
これからも皆様の健やかな毎日をお祈りしながら、少しでも世界がよき方向へと紡がれてゆくような山の暮らし、絵画制作に励んでいきたいと思います。
(2022年11月11日記)
■山の葉根
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
MK新聞について
「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。
ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。
MK新聞への「あ~す農場」の連載記事
1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)